[ブエノスアイレス 2日 ロイター] - ブエノスアイレスで1日開催された首脳会談で、トランプ米大統領と習近平・中国国家主席は新たな関税を一時的に見送り、貿易戦争を悪化させないことで合意した。
米ホワイトハウスは声明を発表し、2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する関税は2019年に入っても10%に据え置き、25%への引き上げを「現時点で」見送る方針を明らかにした。
声明によると、中国は貿易不均衡解消に向け米国から「相当量の」農産物、エネルギー、工業製品などを輸入することで合意。農産物の購入は「直ちに」開始する。
技術移転の強要や知的財産権保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービスや農業分野について、構造改革協議を速やかに開始することでも合意した。
これらについて今後90日で合意できなければ、対中関税は25%に引き上げられる。
中国国営メディアは2日、米中首脳が「重要なコンセンサス」に達したことを伝えたが、90日の期限には言及しなかった。
トランプ大統領は大統領専用機で記者団に対し「素晴らしいディール(取引)だ」と評価し、「米国は関税を見送り、中国は市場を開放し、関税を取り除く」と述べた。また、中国は「非常に多くの農産物やその他の製品」を米国から買うと強調した。
王毅・国務委員兼外相は、会談は「友好的で率直な雰囲気」で行われたと発言。適切な時期にさらに意見交換することでも合意したと述べた。
王委員は「経済・貿易問題に関する話し合いは非常に前向きで建設的だった。両首脳は互いに一段の関税引き上げを停止することでコンセンサスに達した」と会談を評価。
さらに「中国は貿易不均衡を徐々に緩和するため、国内市場と国民の必要に応じ、米国の市場性製品を含め輸入を増やすことに前向きだ」と強調した。
両国が互いに市場開放を進めることでも合意したとし、中国が新たな改革を進めることで米国の懸念は次第に解消されるとの見通しを示した。あらゆる追加関税の完全停止に向け、両国が「交渉を加速させる」方針も明らかにした。
また、米中双方は今回の合意により「両国間の経済摩擦の激化を実質的に防いだ」と考えているとし、「米中の共通の利益は対立よりも大きい。協力の必要性は摩擦よりも大きい」と語った。
首脳会談は夕食会形式で2時間半に及んだ。中国の最大の目標は、現在10%の2000億ドルの中国製品に対する関税の25%への引き上げを阻止することだった。トランプ大統領はたびたび引き上げに言及し、交渉に進展がなければ2670億ドル分の輸入に対する追加関税の可能性も指摘していた。
またホワイトハウスによると、会談で習主席は、米半導体大手クアルコムQCOM.Oによるオランダの同業NXPセミコンダクターズNXPI.O買収の中国での承認について、再び申請されればオープンだと述べた。
クアルコムは440億ドル規模のNXP買収を巡り、期限までに中国当局の承認を得られず、7月に買収断念を発表していた。
両社のコメントは現時点で得られていない。
カーネギー清華センターのディレクター、ポール・ハンリ氏は米中の合意について「大きな進展ではないだろう。どちらかと言えば決裂を回避したという状況だ。最悪の結果ではないが、前途には困難な作業が待ち受けている」と述べ、「中国は切迫感を持って交渉に臨む必要がある」との見方を示した。
戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、スコット・ケネディ氏は、全体として米国にやや有利な結果だと分析した。
「中国はせいぜい一時的な追加関税の見送りを得ただけで、『通常通り』に戻るという合意は得られなかった」とし、「関係悪化のペースが変わっただけで、米中関係の方向性は変わっていない」と述べた。
90日の期限は3月第1週の中国共産党党大会の直前に当たる。コロンビア大学チャイナ・イニシアチブの共同ディレクター、Sun Zhe氏は、今回は中国がより大幅な譲歩をしたかもしれないが、今後数カ月では米国から多くを引き出すことを狙っている可能性があるとの見方を示した。
同氏は「中国側がより大きく譲歩した。非常に強い圧力をかけられたにもかかわらず中国は米中関係の崩壊を望んでいないということを、米国が理解することを期待しているだろう」と指摘。
「中国が多くを約束したのに対し、トランプ大統領は関税引き上げを見送ることしか約束しておらず、中国では今後米国にどのような譲歩ができるか憶測する向きも出ている」と述べた。
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