[ワシントン 12日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のライス報道官は12日、米中が相互に発動もしくは計画している関税措置によって2020年の世界の国内総生産(GDP)が0.8%押し下げられる可能性があり、その後も悪影響が拡大し得るとの見方を示した。
IMFが最新の世界経済見通しを来週発表することも明らかにしたが、詳細には触れなかった。
ライス報道官は定例記者会見で、世界経済はすでに課題に直面しているが、通商問題を巡る緊張の高まりによるマイナスの影響が出始めていると指摘。こうした影響の1つとして、製造業活動には2007─08年の世界的な金融危機以来の弱体化が見られるとした。
その上で、貿易面や地政学的な緊張が不透明感を生み、企業信頼感や投資、貿易を圧迫する中、世界の経済活動は引き続き抑制されているとの認識を示した。
IMFはこれまでも米中間やその他の国の間の通商問題で世界的な経済成長が脅かされているとの見解を示してきたが、ライス報道官は影響が顕在化しつつあると指摘。「通商問題を巡る緊張の高まりは単なる脅威ではなく、世界経済に対する実質的な圧力となっている」とし、「われわれの最新の予測によると、米中の関税措置により20年の世界GDPは0.8%押し下げられる可能性がある。押し下げはその後も続く」と述べた。IMFがこれまでに示した押し下げ幅は0.5%だった。
ムニューシン米財務長官はロイターに対し、IMFの予想は確認していないとした上で、米国ではそれほど大きな影響は見込まれないと述べた。
バンクレートの経済アナリスト、マーク・ハムリック氏はIMFの見解について、米中貿易戦争の終結に懐疑的な見方を反映していると指摘。「貿易摩擦は激化の一途をたどってきた。合意の見通しは立っていない」とし、企業部門の懸念の高まりが消費者心理にも波及しつつあるとの見方を示した。
同氏はまた、IMFの見解を受けて米国のリセッション(景気後退)入りを巡る懸念が高まる可能性があるとした。バンクレートのエコノミスト調査では、2020年11月の大統領選までに米国が景気後退入りする確率は41%と予想されているという。
ライス報道官は、IMFが世界的な景気後退を予想しているかとの質問に対し、現時点ではIMFの基調的なシナリオになっていないと回答。「様子を見たい」と述べ、最新の世界経済見通しでより明確になるとした。
IMFは今週、世界貿易の不透明感を測る新たな指数を公表した。加盟143カ国のカントリーリポートを基に1996年までさかのぼって算出したもので、IMFによると、米中貿易摩擦を受けて過去1年の間にそれまでの最高水準の10倍に急上昇した。
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