August 3, 2018 / 5:12 AM / 11 days ago

コラム:米の対中通商戦略、エスカレーションに潜むわな

[ロンドン 2日 ロイター] - 11月に中間選挙を控えた米国は、中国に対して通商問題で緊張を段階的に高めて交渉の場に引き出そうとする戦略を採用し、トランプ大統領は輸入中国製品に適用する関税率を大幅に上げる意向を示唆した。米国経済が堅調なうちに自ら有利な形で通商協議を再開させたい狙いがある。

 8月2日、11月に中間選挙を控えた米国は、中国に対して通商問題で緊張を段階的に高めて交渉の場に引き出そうとする戦略を採用し、トランプ大統領は輸入中国製品に適用する関税率を大幅に上げる意向を示唆した。北京で2018年6月撮影(2018年 ロイター)

報道によると、トランプ大統領は今後2000億ドル相当の中国製品にかける関税率を当初予定していた10%でなく、25%とする提案をまとめるよう側近に指示した。

これは中国製品に対する関税としては第3弾となる見込み。既に340億ドル相当の製品への関税は発動され、160億ドルを対象とする第2弾も近く実施されるとみられる。

トランプ政権が中国に用いているやり方は、北朝鮮やイラン、欧州連合(EU)、北米自由貿易協定(NAFTA)の他の加盟国との交渉方式と変わらない。また米国と旧ソ連の冷戦を研究した人々にとっては、現政権のこうした基本戦略は、いわゆる「エスカレーション理論」と相通じるのでなじみがある。

現段階で対立をあおり立てようとしているトランプ政権の決意は、米国が享受できる優位性と、それがいつまでも続かないのではないかという恐れに起因している公算が大きい。

<エスカレーションにおける優位>

今のところ貿易摩擦は米国よりも中国の経済と金融市場に大きな打撃を与えており、トランプ政権に優位に立っているとの自信を与えている。

S&P総合500種は年初来で5%余り、昨年来で25%上昇した半面、上海総合指数はそれぞれ13%と7%の下落を記録。ドルは年初来で対人民元で5%上がり、主要6通貨に対するドル指数の上昇率は約3%だ。

中国経済は減速の兆しを見せ、政府は外需の鈍化を穴埋めし、人々の心理を上向かせるために財政・金融両面で刺激策を打ち出しつつある。

対照的に米国は第2・四半期国内総生産(GDP)速報値が前期比年率4.1%と、約4年ぶりの高い伸びとなった。製造活動は幅広く拡大していることが示され、消費者信頼感は数十年来の高水準で推移している。

米中両国の経済状況の明暗がくっきりしていることで、トランプ政権はエスカレーション行動で優位な立場を築けていると信じるようになった。ホワイトハウスの戦略において、双方が対立を徐々に高めていく中で米国より中国が失うものの方が大きいとの見方に揺るぎはない。

これまで中国は米国の関税に同等の報復をしてきたが、自ら緊張を高めようとしていない点も恐らく、トランプ政権が自分たちの方が有利だとの意を強くしている理由だろう。

<有利は一時的か>

しかしたとえホワイトハウスが米国の優位に基づいて対立を激化する考えであっても、米国の強みは永遠ではなく、対立が長引くほど有利さが低下していくかもしれないと恐れているのではないか。

第2・四半期の米GDPの急成長は、減税による消費刺激効果と関税発動前の大豆などの駆け込み輸出でほとんど説明できる。

こうしたプラス要因がはく落していくとともに、第3・四半期と第4・四半期の成長率は減速しそうだ。比較対象となる前期の伸びの高さも次第に高いハードルとなりつつある。

景気拡大は循環的な性質があるし、拡大局面の中でさえ急成長の後には勢いが弱まる期間が生じるので、トランプ政権としても第2・四半期の高い成長率が持続すると当てにはできない。

企業からは既に鉄鋼・アルミニウム関税の影響などから投入コストの増加が幅広く報告されている。消費者物価も上昇し、実質ベースの賃金を目減りさせ始めた。

足元までトランプ政権は消費財に関税をかけ、小売りレベルで値上げが起きて政治問題化するのを避けようと努力してきた。

それでも実際に2000億ドル相当の中国製品に25%の関税を発動するようなら、消費財に影響が及ぶのは避けられない。そうなれば投資家や企業も、先行きに自信を持てるかどうかより深刻に問われるだろう。

<だれも得せず>

ホワイトハウスの戦略のある部分には、中国への圧力を素早く強化して米国が優位にあるうちに交渉を再開するよう迫り、米経済への打撃が大きくなり過ぎる前にエスカレーション行動を巻き戻すという要素があるように見える。

もしそうした作戦が図に当たり、トランプ政権が交渉の早期再開と早期の合意を獲得できれば、それが全面的な合意でなくても、中間選挙を見据えてトランプ氏の強硬な交渉姿勢が成果をもたらした、と政権側は活発に宣伝するだろう。

だからこそトランプ政権には、中間選挙までに中国から何らかの成果を得るために迅速なエスカレーション行動に出る強い動機がある。彼らとしては、素早い行動こそ政治的にも経済的にも利をもたらすのだ。

とはいえ中国がどう反応するかは依然読み切れず、これがエスカレーション戦略に危険な要素を加え、結果が裏目に出る恐れもある。

中国経済が短期的に大きな圧力を受けているのは確かだが、政策担当者は目先の犠牲を甘受した上で、マイナスの影響が米国に降りかかってくるまで我慢するのが得策だという結論を下すかもしれない。

結局のところ関税は消費者に課税することに等しく、高い関税が消費財の価格に転嫁されてその状況が長期化するようなら、経済的、政治的な逆風は相当大きくなってもおかしくない。

既に原油高と貿易摩擦によって生じた不確実性に起因する下押し圧力を受け、世界経済の拡大が鈍り始めているいくつかの兆しも出てきた。

米国が急速に対立をあおっても、中国が苦境を隠忍自重して米国と世界経済にしっぺがえしが及ぶのを見守る姿勢を打ち出した場合、米中両国とそれ以外の諸国がいずれもひどい被害を受けかねない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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