April 6, 2018 / 1:46 AM / 3 months ago

コラム:米中貿易戦争勃発リスクを過小評価する市場の危うさ 

[ロンドン 5日 ロイター] - トランプ政権の高官たちは一連のインタビューと報道陣への説明で、米国と中国が貿易戦争に突入するリスクを一蹴し、追加関税をちらつかせているのは交渉の第1歩にすぎないと主張している。

 4月5日、トランプ政権の高官たちは一連のインタビューと報道陣への説明で、米国と中国が貿易戦争に突入するリスクを一蹴し、追加関税をちらつかせているのは交渉の第1歩にすぎないと主張している。写真は4日、米カリフォルニア州ロングビーチの港に積まれたコンテナ(2018年 ロイター/Bob Riha Jr.)

米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長はフォックス・ビジネス・ネットワークのインタビューで「貿易戦争など起きてない。われわれがいるのは手続きの初期段階で、それは関税や関税に関するコメントが含まれ、次いで最終的な決定や交渉に至る。既に裏側のチャネルで協議が進んでいる」と語った。

さらにクドロー氏は対中追加関税の品目公表について「これらは単なる最初の提案だ。われわれが今後意見を求めるのに数カ月かかる。4、5カ月のうちに具体的な措置が講じられるとは考えにくい」と説明した。

似たような調子の発言は、ホワイトハウスの首席報道官や商務長官、タカ派的な通商政策アドバイザーなどからも出ている。

実際こうしたメッセージは効果を発揮したもようで、米国株は当初の値下がり分を取り戻しつつある。投資家が追加関税の脅しが現実化するリスクは小さいと受け止めたためだ。

しかし投資家やトレーダーは恐らく、この先の交渉の難しさや、米国と中国が偶発的な要素によってともに痛手を受ける対立関係に陥っていく危険性を、過小評価しているのではないか。

<お決まりの交渉戦略>

最大500億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課すと表明しているのは、トランプ政権の典型的な交渉のやり方といえる。

同政権は一般的に、まず攻撃的であからさまに議論を呼ぶような措置を発表して問題を争点化し、都合の良い形の枠組みを設定して自分たちの立場を強化した後で、事態決着に向けて水面下で細かい部分の協議していく。

その方法は既に、離脱をほのめかした北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉や韓国との自由貿易協定(FTA)協議、鉄鋼・アルミニウム関税導入などの際に用いられてきた。

貿易以外でもイランとの核合意見直し、北朝鮮の非核化、北大西洋条約機構(NATO)の負担公平化、メキシコとの国境の壁建設といった問題で同じ作戦が行使されている。

ただしその結果は今のところ全面的にうまくいっているわけではない。韓国とのFTA協議は部分的な修正を再び話し合っていると伝えられ、NATOの負担問題はある程度の進展が見られる。ところが他の交渉はまだ首尾よい解決には至っていない。

そしてトランプ政権は中国にも従来の方法を使おうとしたが、よりにもよってこれまでよりはるかに手ごわい交渉相手と、合意が難しい問題を選んでしまった。

中国との交渉が成功し、追加関税を課す事態が避けられる保証はどこにもない。話し合いによって関税を避けられても、最終的な問題解決に失敗する可能性は否定できない。

また交渉のプロセス自体が、両国の企業や両国のサプライチェーンに関係している第三者にとって、何カ月も相当大きな不確実性の基になりそうだ。

ほとんどの市場参加者は、交渉がどれほど困難で、物別れに終わったり、少なくとも何度も緊迫する局面が到来するリスクを、小さく考えすぎていると思われる。

トランプ政権の矛盾するメッセージが混乱をもたらしている面もある。複数の政府高官は、株価や企業の信頼感の下落をもたらすといけないので、追加関税を実際に課す公算は乏しいと投資家を説得しようとしている。

だが交渉において強い立場を維持しようとするなら、トランプ政権は中国やその他の国に追加関税の脅しは非常に本気なのだと受け止めてもらわなくてはならない。

<要求絞る必要>

米政府は対中制裁措置として追加関税品目を公表したが、これは米中両国が繰り広げる知的財政権や補助金、ダンピング(不当廉売)、国有企業、市場アクセス制限、全般的な貿易不均衡といった数々の論争のほんの一端の動きにすぎない。

米国の政策担当者はこれまで中国の経済モデルのあらゆる面に疑問を投げ掛けてきたが、そのモデルは中国の社会・政治システムに深く根ざしている。

一方でどの国も他国の基本的な社会・政治構造の変革を強制することなどできない以上、米国が中国の経済モデルを全面的に変えるのも不可能だ。

だから米国は要求を中国が引き受けられるような個別で現実的な取り組みに絞らなければならない。

米政府としては、いったん両国が合意した後はさらなる譲歩を引き出すために協議を蒸し返すつもりはないと請け合う必要もある。

<チキンレース>

重要なのは、両国ともに体面を保ち、中国が圧力に屈して一方的に譲歩したとの印象を避けることにある。

中国は既に対外圧力を受けている中では交渉に応じないし、譲歩もしないと繰り返している。

トランプ大統領と習近平国家主席はいずれも強い指導者というイメージを培ってきただけに、交渉で自分から後退はできないし、国民の前で弱腰を見せるわけにもいかない。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは4日、こうした状況を「米中が危険なチキンレースを始めた」と描写した。

両国の交渉はあっという間に半年ないしそれ以上が経過し、企業に先行き不透明感をもたらすとともに、投資決定を難しくさせてしまう恐れがある。

実際に追加関税が課されなくとも、企業は自分たちのサプライチェーンに関税がかかる事態に備え始めなければならなくなる。つまり追加関税をちらつかせるだけでも、投資や貿易の流れには重大な影響が及ぶ。

最も蓋然性が高いシナリオは、両国が合意に達する展開だ。とはいえ交渉決裂はそれなりに大きなリスクとして存在する。

今しばらくは市場が交渉成功を想定していくだろうが、投資家はそのうち決裂の可能性を深刻に考え、相場に織り込む必要が出てくるはずだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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