October 29, 2018 / 10:45 AM / 17 days ago

アングル:米中摩擦の影響に身構える企業、ゲームチェンジの兆し

[東京 29日 ロイター] - 2018年4─9月期の決算発表が本格化するなか、米中貿易摩擦の影響がじわりと広がっている。市場が警戒するほどの大きな影響はまだ出てないが、先行きの不透明感に身構える企業は、下期以降の予想を保守的なものに修正しつつある。世界のサプライチェーンが変わるとの見方もある。

 10月29日、2018年4─9月期の決算発表が本格化するなか、米中貿易摩擦の影響がじわりと広がっている。市場が警戒するほどの大きな影響はまだ出てないが、先行きの不透明感に身構える企業は、下期以降の予想を保守的なものに修正しつつある。11日の東京株式市場では、中国関連銘柄に幅広い売りが出た。東京証券取引所で11日撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

<中国リスク、一部で顕在化>

米中貿易摩擦の影響を懸念する声が高まったきっかけは10日に2018年3─8月期決算を発表した安川電機(6506.T)の業績予想の下方修正だった。「米中貿易摩擦の影響で(工場の)自動化投資が控えられている」。決算会見で村上周二専務はこう述べ、業績下振れの一因に米中貿易摩擦があることを明らかにした。

翌日の東京株式市場では、中国関連銘柄に幅広い売りが出た。日経平均株価は一時1000円を超す下げ幅を記録。前日の米国市場急落が背景にあるが、安川電機の下方修正をみた投資家が中国リスクに敏感に反応したことも売りに拍車をかけた。

ファナック(6954.T)は29日、2019年3月期業績予想を下方修正した。7月に上方修正した予想をわずか3カ月で一転、引き下げた。修正の理由について同社は「前年度に活発だったIT関係の需要が現時点で見込めないことに加え、貿易摩擦問題の動向などの不透明要因から予断を許さない状況が続く」と説明している。

<日立建機、コマツは上方修正>

ただ、現時点で、米中貿易摩擦の業績への影響は限定的だ。日立建機(6305.T)の桂山哲夫専務は25日の決算会見で、中国の販売状況について「特に売り上げが減っているということはない」と強調。逆に業績予想を上方修正した。23日に決算を発表した米キャタピラー(CAT.N)が米中貿易摩擦の影響による材料費の上昇に言及、株価が急落した後だけに、身構えていた市場は肩透かしを食らった格好となった。

29日に決算を発表したコマツ(6301.T)も2019年3月期業績予想を上方修正、売上高、利益ともに過去最高を更新する見通しだ。

<先行き懸念、下期以降の見通しに影響>

もっとも、各企業とも慎重姿勢は崩していない。キヤノン(7751.T)の田中稔三副社長兼最高財務責任者(CFO)は25日の会見で「直接的な影響はあまりない」としながらも、「米中貿易摩擦が世界経済に及ぼす影響はかなり大きいのではないか」と先行きに懸念を示した。

コマツの堀越健CFOも「先行きの不透明感は払拭できていない」と慎重な見方を示している。

同社は中国市場の需要見通しについて、期初に立てた前年比20─30%増から10─20%増に下方修正した。前期実績は前年比80%増だった。

三菱電機(6503.T)の皮籠石斉常務は29日の決算会見で、米中貿易摩擦が主力のFA(工場の自動化)システム事業に及ぼす影響について「7─9月のFA受注は前年の98%で数字の上ではまだそれほど大きな落ち込みには見えない」とする一方で、今後については「明確に経営数値に織り込めているわけではない」と述べ、不透明感が強いとの認識を示した。

日本ロボット工業会によると、2018年7─9月期の産業用ロボットの総出荷額は前年同期比5.0%減の1861億円と、2016年4─6月期以来、9四半期ぶりのマイナスとなった。中国向けが2割近く減少したことが響いた。このまま不透明感な状況が続けば、実体経済への影響は避けられない。

不透明感の強さは業績予想にもあらわれている。上期に過去最高の利益を計上した日立製作所(6501.T)は、業績予想の修正を見送った。西山光秋CFOは26日の決算会見で「オートモティブシステムと日立化成(4217.T)以外は堅調だが、(米中貿易摩擦の影響で)下期のマクロ環境が非常に見通しにくいので、年度見通しを据え置いた」と説明。「事業リスクとマクロ経済リスクとして、4─6月期と同じ200億円程度のリスクバッファーを織り込んだ」ことを明らかにした。

SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは「上期が上振れて、通期を上方修正というシナリオを想定していたが、思っていたほどでもない。米中貿易戦争の影響が一番大きいのではないか」との見方を示した。

<中国から生産移管>

米中貿易摩擦の決着が見えない中で、メーカー各社は米国向け輸出の生産拠点を中国から他地域に移し始めた。三菱電機が米国向けの放電加工機とレーザー加工機の生産を中国から名古屋に移管したほか、日本電産(6594.T)も一部生産を中国からメキシコに移管。パナソニック(6752.T)も車載関連機器の生産地を中国からタイやマレーシア、メキシコなどに移転することを検討している。

三菱電機の皮籠石常務は移管の影響について「金額的な影響がまったくないわけではないが、全体としては吸収できるくらいの小さな金額だ」と述べ、影響は限られるとの認識を示した。

ファーストリテイリング(9983.T)の柳井正会長兼社長は11日の決算会見で「われわれは世界中で作って世界中で売る。当初は多少影響があるかもしれないが、他の国・地域で生産することも可能で十分対応できる」と先行きに自信を示した。

米中貿易摩擦の影響を最小限に食い止めるべく、対応を進める日本企業。だが、日本電産の永守重信会長は、足もとの変化は米中貿易摩擦の影響だけではないと警鐘を鳴らしている。

「世界全体のサプライチェーンが変わってきている。すべて米中貿易戦争のせいにしているが、私はそう思わない。まったく違う構造になっており、それを見誤るとチャンスを失う」。

志田義寧 編集:北松克朗 石田仁志

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