October 15, 2018 / 9:25 AM / a month ago

コラム:「覇権」争う米中、貿易戦争は長期化か 世界経済の曇天続く

[東京 15日 ロイター] - 米中の「貿易戦争」が、長期化する兆しをみせている。米側が単なる貿易赤字の削減を求めているのではなく、中国の経済的、軍事的膨張を止めようとしており、米中両国による「覇権」争いの色彩を強めているからだ。すでに国際通貨基金(IMF)は、2019年の世界経済の成長率を引き下げており、この先も「曇天」が続きそうだ。両国経済への依存度が高い日本にとって、「火の粉」が降りかかる危険性もある。 

 10月15日、米中の「貿易戦争」が、長期化する兆しをみせている。写真左は習近平・中国国家主席、右はトランプ米大統領、北京で昨年11月撮影(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

<ボルトン補佐官のロジック>

ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は12日に放送されたラジオインタビューで、中国は貿易、国際問題、軍事、政治の分野で行動を是正する必要があると指摘し、トランプ政権が対中政策で一段と強硬姿勢を取る可能性を示唆した。

特に注目されるのは、中国の経済的な成長が軍事的な伸張とリンクしているとの見方を明確に示し、中国の経済的な対応について、米国が「違法」と見る範囲内の行為の撤回を求めていることだ。

ボルトン補佐官は、中国が貿易やビジネスの国際規範に違反して、経済力や軍事力を大幅に高めてきたとし「米国の技術を盗むことが許されない状況に置かれれば、中国の軍事力は著しく後退し、中国が引き起こしているとわれわれが考えている緊張の大部分は、緩和されるだろう」と言い切った。

<覇権国交代と経済力>

もはや、中国の対米黒字が減少しても、それだけで米中間の和解が進む可能性はかなり低下していると見ていいのではないか。

背景にあるのは、世界の様々なシンクタンクが、2030年代における米国と中国の国内総生産(GDP)逆転を予想していることだ。GDPで米国が中国の逆転を許せば、軍事力で対抗する経済的な土台を失い、覇権国から滑り落ちることになりかねないと認識しているのではないか。

実際、16世紀以降の西欧台頭後の世界に限っても、スペイン、オランダ、英国、米国と覇権国家の推移は、経済力の浮沈と若干のタイムラグを伴いながら連動している。

覇権を巡る綱引きが始まったとすれば、それが短期間で終結することはないだろう。カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、11月のアルゼンチン20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて、米中首脳会談が開催される可能性に言及した。だが、その会談で一気に米中が和解に向かい、大筋合意に達するのは難しいだろう。

<黒田総裁も保護主義台頭に警鐘>

米中の経済的な緊張が長期化すれば、世界経済への下押し圧力も継続することになる。国際通貨基金(IMF)は9日、2018年と19年の世界全体の成長率見通しをそれぞれ、7月時点の3.9%から3.7%に引き下げた。

IMFのラガルド専務理事は11日、貿易戦争や通貨戦争が世界の成長を阻害し、「罪のない非当事国」を傷付けかねないとした上で、各国が貿易摩擦を巡る緊張を緩和し、世界の貿易ルールを放棄するのではなく修正するよう訴えた。

また、日銀の黒田東彦総裁も14日、世界の政策担当者らが「自由貿易の重要性について認識を再確認して」対話を継続するよう求め、保護主義の一段の台頭は、貿易や企業信頼感、世界経済の成長に悪影響を及ぼすと警告した。

そのうえで「世界的な価値の連鎖を通じて世界経済は相互依存を強めており、保護主義的な動きにもっと注意を払うべきだ」と述べた。

<米中対立と日本経済>

こうした状況を踏まえると、米中の経済的な対立を起点にした世界経済の「変調」は、長期化すると見た方がいいだろう。

米株上昇に代表される「リスクオン」相場は、直近の下落で調整局面を迎えたが、それが短期で収束するのか、それともしばらく継続するのか、市場の見方は分かれている。

私は、これまで指摘したように、米中の緊張は長期化すると予想しており、「リスクオン」全開相場に戻ることは難しいと予想する。

また、日本の製造業が電機を中心に組み立てから部品供給へとシフトする中で、対中輸出の比率は高まっており、米国の関税引き上げは、日本企業の業績にも大きな影響を与えるだろう。

同時に、米関税引き上げの影響も加わった米物価上昇の影響で、米国の個人消費に陰りが出れば、日本からの対米輸出にもマイナスになる。

株式市場は、こうしたリスク要因を先行して織り込むことになるだろう。とすれば、足元の東京株式市場で多数派を形成している「業績好調で株高」というシナリオが、本当に現実となるのか、もう1回、慎重に見極める必要があると考える。

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