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焦点:米クリーンエネ業界で人手不足深刻、気候対策実現に支障も

[11日 ロイター] - 米クリーンエネルギー業界が人手確保に苦戦しており、このままではバイデン政権が打ち出した気候変動対策の実現も危ぶまれる状態だ。

 1月11日、米クリーンエネルギー業界が人手確保に苦戦しており、このままではバイデン政権が打ち出した気候変動対策の実現も危ぶまれる状態だ。写真はカリフォルニア州マデラで、太陽光パネルの設置の仕方を学ぶ受刑者。提供写真(2023年 ロイター/Carmela Arzola-Prudente/Madera County Jail)

昨年成立したインフレ抑制法には太陽光・風力発電や電気自動車(EV)普及促進のため総額3700億ドルの補助措置が盛り込まれ、今年初めから米国の消費者は自宅の暖房システムの性能向上、太陽光パネルの屋上設置などで税額控除制度を利用できるようになった。また非営利団体、ザ・ネイチャー・コンサーバンシーの委託を受けたBWリサーチの調査によると、これらの分野に関連する投資を通じて向こう10年間で毎年53万7000人近くの雇用が創出されると見込まれる。

しかし全米の失業率が3.5%と歴史的な低水準にある中で、企業からは必要な人材を手当てできないのではないかと懸念する声が聞かれる。幾つかの業界ではレイオフが発表され、採用が鈍る動きが見られるものの、クリーンエネルギー業界に関して言えば、労働需給は引き締まったままだ。

米国の業界団体、太陽エネルギー産業協会(SEIA)を率いるアビゲイル・ロス・ホッパー氏は「事業拡大には大きなリスクがあると感じる。一体どこを探せば、全ての人員が見つかるのだろうか」と疑問を投げかける。

労働力不足は特にEV、バッテリー生産、太陽光パネル、自宅の省エネ設備などの分野で影響が大きくなりそうで、一部の企業は働き手を発掘するため新たな手を打たざるを得なくなっている。

フォード・モーターの電動ピックアップトラック「F-150ライトニング」向けバッテリーをジョージア州で製造している韓国のSKイノベーションは、現在4000人の米国従業員を2025年までに2万人に増強する構えで、そのために賃金と諸手当を思い切って引き上げた。

SKイノベーションが求人広告で提示している時給は20-34ドルで、米労働省のデータに基づくジョージア州の中央値(18.43ドル)より高い。同社は生命保険料の全額会社負担と、退職者年金の企業拠出比率を全米平均の5.6%に対して最大6.5%にすることや、職場で無料の食事も出すことも請け合っている。

ある同社幹部は「ジョージアの人材プールはそれほど大きくはない。だがわれわれはより適切に働き手を集め、引き留められるように努力を続けている」と述べた。

<人手欲しさの買収>

住宅用太陽光パネル設置を手がけるサンパワーも積極的に通常の採用活動を展開しているが、ピーター・ファリシー最高経営責任者(CEO)は自ら「常軌を逸したアイデア」と呼ぶ方法、つまり人手を集めるためだけに企業買収をするといった手段までも視野に入れている。

サンパワーは昨年、パネルメーカーのファースト・ソーラーとの間で1日当たり現在の1件ではなく2件対応できるような、もっと簡単に設置が可能なパネルの開発を巡る協議も何度か行った。

競争相手のサンランはパネル設置に先立って屋根の状況を調べるドローン(無人機)を配備している。これは屋根の調査に必要な人員を減らす狙いがある。また優秀な現場作業員を本社のパーティーに招待して表彰する制度も導入している。業務部門担当バイスプレジデントのクリス・マクレラン氏は「従業員にとって仕事の体験がゲームのようになればなるほど、業界の面白みが増し、魅力が高まる」と語る。

洋上風力発電世界大手のデンマーク企業オーステッドは米東海岸の沖合に発電施設の建設を計画しているが、まずは英国とアジアのプロジェクトから人員を派遣して現場の研修に役立てようとしている。マッズ・ニッパーCEOはロイターに「われわれは、洋上風力の知識を共有するだけでなく、将来の研修担当者を訓練するようなエコシステムを生み出そうとしている」と述べた。

バイデン政権は、クリーンエネルギー関連の仕事は賃金が高く労働組合に加入できる仕事だと繰り返し約束している。

ただ現実には、これらの多くの仕事は賃金水準の点で化石燃料産業に見劣りしていることが2021年のBWリサーチの調査で判明した。クリーンエネルギー業界は、既存エネルギー産業との競争力を保つため経費圧縮を目指しているからだ。

一方でインフレ抑制法は補助措置の条件として「一般的な賃金水準の適用」と「一定時間以上の実習生登用」を挙げており、こうした規定と採用難が相まって幾つかの企業は労組加入者の受け入れを迫られている。

オーステッドは欧州やアジアで働き手獲得の難しさを学習した結果、北米建設労働組合(NABTU)との間で協定を結び、人材確保につなげた。労組を結成した一部従業員との紛争が泥沼化しているアマゾン・ドット・コムでさえ、ニューヨーク州クイーンズで電動バン運用のための充電施設を建設するに当たり、労組の力を活用した。

国際電気労働者組合(IBEW)に属する電気技師でシングルマザーのコリーン・ケースさんは、アマゾンの充電施設建設の仕事でもらえる時給は43ドルで、充電施設整備に向けた電気技師需要の増大で雇用が保障される状況はとてもうれしいと明かした。

<退役軍人や受刑者にも期待>

太陽光・風力発電企業やEVメーカーらは働き手探しの一環で、退役軍人や女性、受刑者や元受刑者などにも無料の研修プログラムを提供している。

何社かの太陽光関連企業は、軍人時代に習った技術が業界にとって有用だと考え、退役軍人の募集に乗り出そうとしているところだ。

サンパワーやネクストラッカーなどは昨年、非営利団体と協力して太陽光パネル設置技術を教える女性限定の研修プログラムに資金を拠出。コロラド州では1週間にわたる研修に30人余りの女性が参加した。

昨年10月にはある非営利団体がバージニア州当局とともに受刑者と最近まで刑務所にいた人々向けに太陽光パネル設置の研修プログラムを試験的に実施しており、この団体はプログラムの拡大を検討中だと述べた。

カリフォルニア州マデラ郡で2017年から受刑者に太陽光パネル設置研修を行ってきた非営利団体は今年、研修対象を州内の他の刑務所に広げつつある。

ロサンゼルスの別の非営利団体は毎年、元ギャングだった50-60人に太陽光パネル設置の研修を行っており、昨年は研修受講者の80%以上が仕事を見つけることができたという。

*カテゴリーを追加して再送します

(Nichola Groom記者、Valerie Volcovici記者)

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