July 26, 2019 / 2:19 AM / 3 months ago

コラム:米政界から消える財政規律、歯止め役見当たらず

[ニューヨーク 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国で1期目のクリントン政権が財政赤字削減に力を注いでいた際に、大統領の政治アドバイザーだったジェームズ・カービル氏は「全ての人を怖がらせる力がある」債券市場に生まれ変わりたいと語っていた。ところが奇妙なことに、債券市場の財政監視機能をあれほど支持していたカービル氏はその後すっかり宗旨替えし、財政赤字容認派に取り込まれてしまった。もはや米国の政治家は、何の代償も伴わずに財政規律を放棄できる状態になりつつある。

 7月23日、米国で1期目のクリントン政権が財政赤字削減に力を注いでいた際に、大統領の政治アドバイザーだったジェームズ・カービル氏は「全ての人を怖がらせる力がある」債券市場に生まれ変わりたいと語っていた。写真は2017年6月撮影(2019年 ロイター/Thomas White)

22日にトランプ大統領と議会指導部が2年間の借り入れ期限延長と裁量的支出の引き上げに合意した後でも、債券相場はほとんど変化しなかった。短期的に見れば、支出引き上げは2年で約550億ドルと大した規模ではない。ただ今回の合意によって、議会が2011年以降採用してきた歳出上限制度は実質的に葬り去られた。非営利団体「責任ある連邦予算委員会」は合意を批判し、向こう10年で歳出が1兆7000億ドルも増えると試算している。

もっとも同委員会は、だれも聞く人がいない教会で説教をしているのに等しい。中央政界には今、財政赤字抑制を唱える勢力は全く存在しないのだ。トランプ氏は来年の選挙に支障を来すような、債務上限ないし政府機関閉鎖を巡る政治対立が起きるのを望んでいない。トランプ政権の赤字を増やす減税を承認した与党・共和党も、支出を抑える資格も動機もない。一方野党・民主党は、過去に削減された支出を復活させることに熱意を燃やす有様だ。

市場も政治家の行動を野放しにしている。そして実際に何年も前から、財政赤字増加は民間投資を締め出したり、インフレを助長するとの警鐘が鳴らされてきたが、現実には悪いことはほとんど起きていない。米国の財政赤字は今年23%増え、10月からの2020会計年度には1兆ドルを超えるペースだ。連邦債務の対国内総生産(GDP)比は77%と第2次世界大戦後の最悪水準にあり、現在も上昇を続けている。それでもなお、財務省は10年国債を2%ちょっとの利回りで発行できるし、株価は最高値を連日更新している上に、ドルも底堅い。

世界はお金であふれている。欧州の国債は10兆ドル余りがマイナス利回りとなり、日本では政府債務の対GDP比が240%に迫っているというのに経済は順調なままだ。米国に関しては、特に今後景気後退に見舞われた場合、「放漫財政」のつけを政治家が払わなければならないかもしれない。しかし今のところ米国をおびえさせる存在は見当たらない。

●背景となるニュース

・トランプ米大統領と議会は22日、今後2年間は連邦政府の借り入れ権限を延長し、歳出水準を引き上げることに合意した。[nL4N24N4C2]

・借り入れ権限は2021年7月31日まで延長される。この措置がなければ、9月9日までに連邦債務が法定上限に到達し、米国がデフォルト(債務不履行)に陥る恐れがあった。

・今回の合意により、2020会計年度の裁量的支出は1兆3700億ドルに増え、21年度はさらに50億ドル上乗せされる。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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