for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:米国経済、「景気の山」へ急接近か

[ロンドン 30日 ロイター] - 米国の景気は、減税や企業と消費者の信頼感がしっかりしているおかげで拡大が続いているという兆候が読み取れる。

 8月30日、米国の景気は、減税や企業と消費者の信頼感がしっかりしているおかげで拡大が続いているという兆候が読み取れる。ワシントンで3月撮影(2018年 ロイター/Yuri Gripas)

ただし拡大期間の長さと、労働市場および財市場のスラック(需給の緩み)が限られているように見える点の双方が、現在の成長ペースは恐らく中期的には持続できないことを示唆している。

景気拡大は足元で110カ月目を迎え、来年7月まで続けば過去最長を記録する。

この長さだけでは景気の転換点を占う適切な材料にはならないが、ほとんどの金融関連、実体経済関連の指標が数十年来の強い水準近辺にあり、リスクバランスは変化しつつある。

米国における景気循環研究の権威であるビクター・ザーノウィッツ氏は1992年の論文で「一番大事なのはカレンダー上の時間の経過ではなく、その間動き続ける経済に何が起きたかだ。それは数々のイベントとプロセス、知見、行動に満たされた歴史的、心理的な時間と言える」と記した。

さらにザーノウィッツ氏は「1つの単純な論理的帰結は、現在の景気循環局面とその長さに関する知識は役に立つものの、それだけを使ってはいけないということ。景気の拡大と縮小の長さはばらつきがあまりに大きく、転換点を予想するのは極めて難しい。ある局面の長さは、その終わりを見通す上で大して有益ではなく、進化を続ける景気情勢のダイナミクスの方が意味がある」と指摘した。

同氏によると、最も大きな予想の間違いが起きるのは景気循環の変わり目付近、特に景気の山においてだ。多くの人は直近のイベントや事態の展開に過度の影響を受け、足元の流れに身を任せてしまい、景気後退や回復を見逃すという意味で循環の視点が不十分になるという。

<逆イールド>

米国債の「逆イールド化」と景気減速は数十年にわたってかなり相関関係を持つだけに、現時点で長短利回りスプレッドがゼロに近づいていることで、景気減速懸念が高まってきた。

2年債と10年債の利回りスプレッドは現在わずか22ベーシスポイント(bp)と、直近の景気後退が始まった2007年12月の数カ月前以来の低水準になっている。

このスプレッドは、1983年以降のいくつもの景気循環に関してパーセンタイル順位で分類した場合、82番目─83番目の段階に相当し、景気が既に相当に成熟し、金融が引き締まっている局面に入っていることが分かる。

次の景気減速の正確なタイミングやその深さを予測するのは不可能だが、利回りスプレッドの縮小からは、今後数年間の景気動向のリスク分布が下振れ方向にシフトしている様子がうかがえる。

またインフレ加速や新興国危機、金融政策の失敗、企業の財務悪化といった事態が悪くなるシナリオは増えている半面、万事順調というシナリオは少なくなっている。

足元の小幅な利回りスプレッドは、購買担当者景気指数(PMI)や消費者信頼感、失業率、消費者物価指数、株価など多くの指標の動きとも一致する。

これらは全て、景気循環の山が近づいていて、向こう1年から2年の間に景気後退に陥らないとしても、成長がより緩やかになる公算が大きいことを示している。

重大な問題は、次の景気減速が単なる小休止で拡大自体は続く(1994/95年のケース)のか、あるいは現在の循環が終わって新たな循環が始まる(2000/01年ないし07/08年)起点になるのかだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up