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アングル:FRB、コロナ感染の「循環リスク化」が新たな頭痛の種

[ワシントン 22日 ロイター] - 米連邦公開市場委員会(FOMC)は5週間前、コロナ禍による危機が経済の重しになっているとの文言を声明から削除した。ところが、米国は早くも感染者数の再拡大に直面している。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)は5週間前、コロナ禍による危機が経済の重しになっているとの文言を声明から削除した。カリフォルニア州ロサンゼルスで3月29日撮影(2021年 ロイター/Mario Anzuoni)

感染再拡大によって世界の景気回復に疑問が広がっており、オーストラリア準備銀行(RBA)など、既に政策手段の見直しを検討せざるを得なくなった中銀もある。

直近のFOMCが開かれた6月16日以来、米国の新規感染者数は2倍以上に増えた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はこの時、感染力の強いデルタ株の出現を踏まえれば、感染者数、入院者数、死者数の減少が続くことを前提に「勝利を宣言するのは時期尚早」だと述べていた。

実際、減少は続かなかった。足元の感染爆発は地域が限定されているとは言え、再び病床がひっ迫し始めたとのニュースもあり、米国債利回りが急低下するなど金融市場にも影響が波及した。

市場のアナリストは依然として、今年の米経済が1984年以来で最高の成長率を記録すると予想している。だが、デルタ株によって人々の行動様式が変わらないか、日々のデータを詳しくチェックしているところだ。

ウェルズ・ファーゴ・コーポレート・アンド・インベストメント・バンクの首席エコノミスト、ジェイ・ブライソン氏は「ワクチン接種済みの人々でも、飛行機に乗らなくなる可能性がある。それが下振れリスクだ」と言う。

「1年前のようなロックダウンを予想する人はいないだろう。国民はもう耐えられない。ただ、ロックダウンが実施されなくても、人々が(自主的に)『家にいるよ』と言い出すだけで影響がある」とブライソン氏は語った。

今のところ、そうした行動の変化を示す明らかな兆候は見られない。米運輸保安庁の統計によると、空の旅行はコロナ禍前の8割前後まで回復した状態を保っている。飲食店予約サイトのオープンテーブルのデータによると、レストランへの客足は落ちていない。

19日までの1週間、野球のメジャーリーグの観客数は2019年の平均水準に戻った。これは今年初めてのことだ。

それでも7月27、28日に開かれるFOMCは、新たな問題に頭を悩ませることになるだろう。新型コロナは簡単には消え去らず、今後何年間か健康と経済に対する「循環的なリスク」として残るかもしれないという問題だ。

FOMCは今年6月、パンデミック後の金融政策へシフトすることを計画し始めたと示唆した。インフレ上昇のリスクが最重視され、一部委員は月額1200億ドルの債券買い入れの縮小(テーパリング)や、利上げ前倒しに前向きな姿勢を示した。

RBAの状況は、FRBに注意喚起を促すかもしれない。RBAはテーパリングを開始した後に国がロックダウンを再実施する事態に直面し、エコノミストはRBAが後戻りを強いられると感じている。

米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁はこの週末にラジオで、デルタ株が米景気拡大に「ブレーキをかける可能性」があり、そうなれば「われわれにとって非常に大きな妨げになる」と述べた。

<リスク警戒>

デルタ株の感染拡大に対する当局の対応は、これまでのところ抑制的だ。ロサンゼルス当局は屋内でのマスク着用義務を再導入。米小児科学会は19日、秋には通学を再開すべきだが、職員と2歳以上の子どもにはマスク着用を義務付けるべきだと勧告した。

昨冬の深刻な状況に比べれば、感染者数と死者数もはるかに少ない。1日の新規感染者数は現在3万7000人前後だが、1月には25万人に達していた。

1日の死者数は200人前後で、悲劇ではあるが、自動車事故などに比べれば少ないとジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のデービッド・ダウディ疫学准教授は言う。

ダウディ氏は、米国の成人の約6割が完全にワクチン接種を終え、残りの人口の一部も既に感染して免疫があると考えられるため「パニックに陥る必要はない」と語った。

ただ、免疫を持たない成人も依然として多く、米国のワクチン接種はこのところ足踏みしている。12歳未満の子どもの接種は、まだ承認されていない。ここ数週間の動向を見ると、コロナ禍後の政策への移行は、なお険しい道のりとなりそうだ。

例えば、FRBが想定している主なシナリオの1つは、秋に通学が本格的に再開し、自由になった親が仕事に復帰できるという展開だ。しかし、足元ではこの前提が崩れ、失われた約680万人の就業者数の回復に遅れが生じる可能性が出てきた。

ノーザン・トラストの首席エコノミスト、カール・タネンバウム氏は「子どもを学校に通わせるのに抵抗する親も必ずいるだろう。そうした親たちは、職場復帰をためらうかもしれない」と語り、「たとえ公式の制限措置が再導入されなくても、市民の間でリスク警戒感が高まれば、商業活動の妨げになるだろう」と予想した。

家計は政府から支給されたコロナ禍対応給付金を蓄えており、今後も支出を続けられる。企業側も、非接触式のQRコードを利用したメニューやネットによる注文システムなど、ウイルス感染防止に対応する仕組みを整えた。

それでも、繰り返す感染の波には今後も対応していく必要がある。しかも、秋には大半のコロナ禍対応支援措置が打ち切られる。

SGHマクロ・アドバイザーズの米首席エコノミスト、ティム・デューイ氏は「(新型コロナは)消えない。風土病になっていく」と強調し、例えば、レストランその他の産業は感染拡大による循環的な減速を体験するようになり、雇用にも新たな季節的パターンが生まれると予想。「公衆衛生上の目標は、これ(新型コロナ)を特別な出来事にしないことへと変わった」と述べた。

(Howard Schneider記者)

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