June 15, 2018 / 8:13 AM / 2 months ago

焦点:米国での逆イールドに現実味、冷え込む日本勢の米債投資

[東京 15日 ロイター] - 米国で短期金利が長期金利を上回る逆イールドカーブの発生が視界に入ってきた。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを継続し、短期金利が上昇する一方で、長期金利が伸び悩んでいるためだ。逆イールドが景気後退の兆しかどうかは議論が分かれるものの、投資家にとっては運用金利に見合わない調達金利となりつつあり、日本勢の米債投資も冷え込んでいる。

 6月15日、米国で短期金利が長期金利を上回る逆イールドカーブの発生が視界に入ってきた。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを継続し、短期金利が上昇する一方で、長期金利が伸び悩んでいるためだ。写真はニューヨーク証券取引所で13日撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

<米長短金利差が大幅縮小、10年超ぶりの水準>

米連邦公開市場委員会(FOMC)を経た15日のアジア時間で、米2年国債と10年国債の利回り格差は36.18ベーシスポイント(bp)まで縮小した。

長短スプレッドが36bp台まで低下するのは、2007年8月27日以来、10年10カ月ぶり。当時はサブプライム問題が表面化した時期で、同月には仏BNPパリバ(BNPP.PA)が傘下の3ミューチュアル・ファンドの解約を凍結し、いわゆる「パリバショック」が発生した。

FRBは今週12─13日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で今年に入って2度目(累計では7回目)の利上げを決定。今年はあと2回の利上げが実施される見通しであり、年末には長短金利が逆転する可能性がある。

逆イールドの発生については、米金融当局者の間でも警戒されており、前回のFOMC(5月1、2日)の議事要旨では、数人の参加者が逆イールドは歴史的にリセッションのリスクの高まりを示してきたと指摘していたことが明らかになった。

ブラード・セントルイス地区連銀総裁は5月14日、年後半から来年初めにかけて長期債利回りが短期債より低くなる「逆イールド」が起きる可能性があるとし「実際に逆イールドが起きれば、米経済にマイナスのシグナルを送ることになる」と警鐘を鳴らした。

一方、パウエルFRB議長は14日の会見で、利上げしているのだから、短期金利が上昇するのは当然とする一方、低迷する長期金利の理由については「ターム・プレミアムが歴史的な低水準にあること、リスクオフの環境では米国債に人気が集まることなどさまざまな要因が考えられるが、イールドカーブにまつわる議論はつまるところ、適切な政策とは何かという議論に収れんする」とし、明言を避けた。

<フラットニングで投資家は苦境に>

米長短金利差の縮小の原因について見方が分かれるものの、世界最大の米国債市場におけるイールドカーブのフラットニング(平坦化)は、投資家にとっては切実な問題だ。

米国は2015年12月のFOMCでゼロ金利政策解除を決定し、2006年6月以来初めて利上げを行った。7回の利上げで政策金利は1.75―2%まで上昇した。

この間、為替スワップ取引を介したドルの調達コストは上昇し続け、採算性の観点から「日本勢を含めた海外勢の米国債需要は、フラット化の中で低下した」(SMBC日興証券の為替外債ストラテジスト、野地慎氏)。

日本勢にとって、ドルのヘッジコスト(3カ月)は現在2%半ば。利回りが3%に届かない米国10年債への投資は魅力的とは言えない。さらに長短金利が逆転すれば、為替ヘッジを付けないオープン投資でさえ、調達金利に見合った運用利回りが得られなくなる。

実際、日本勢の米国債投資は急減。国際収支統計によると、日本人投資家は2015年に15兆2162億円、2016年に15兆4908億円と多額の米中長期債を購入した。

しかし、17年にはネットで米債を2兆2009億円売り越し、今年は4月までに4兆5596億円を売り越している。

ただ、米国の資金循環勘定によると、今年1―3月の米国債のネット発行額は2兆5180億ドルと過去最高だったが、うち約9割が米国内の投資家によって消化されている。日本勢を含む海外勢による米債投資が減少しても、米債利回りがそれほど上昇せず、フラットニングが進んでいるのはこのためだ。

<過度な金融引き締めを警戒>

市場では、逆イールドの発生自体だけではなく、過度な金融引き締めの結果として、米国に逆イールドが発生するのではないかという点が警戒されている。

みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は「幻のインフレ懸念に突き動かされて無理に利上げを重ねてきたことが、米国債のイールドカーブのフラット化、株価の不安定化、新興国経済の動揺に結びついている」と指摘。このあたりで利上げを停止して様子を見るのが、政策論として妥当ではないかと話す。

一方、みずほ総合研究所・市場調査部主任エコノミスト、殿岡直樹氏は「金融政策が過度な引き締めにならない限り、逆イールド化がリセッションのシグナルになることはないだろう」との見方を示す。

ただ、タームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)が極めて低い状態にあるため、緩やかな利上げペースでもフラット化が生じやすいほか、トランプ政権下の財政出動を背景とする短期債の増発で、短期ゾーンの金利に上昇圧力がかかりやすいと同氏は指摘する。

SMBC日興の野地氏は「2年債が中立金利に近づく過程で、イールドカーブはフル・フラットから逆イールドになると予想される」とし、「むしろ心配なのはFRBが利上げを継続する中で、新興国からの資本流出が広がり、プチ・ショックのような形で金融市場が不安定化することだ」と警戒している。

市場では、14日の米利上げ後、新興国通貨が下落し、株価にも下げ圧力がかかりだしていることに対し、警戒する声が出始めている。

新興国から米国への資金流入の加速が、米長期金利の上昇を抑制し、逆イールドの実現時期を早める役割を果たすのではないかという予想も、市場の中で広がり出した。

森佳子 編集:伊賀大記

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