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アングル:「言動不一致」のFRB、長期金利急騰で2月の国債買入が大幅増

[東京 8日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は最近の米長期金利上昇を基本的に「静観」する姿勢を見せ、積極的なけん制は行っていない。しかし、過去1カ月間の行動をみるとFRBは金融政策で定めた買い入れペースを大幅に上回る規模で米国債の買い入れを進めており、急ピッチの金利上昇に心中穏やかでないことがわかる。

連邦準備理事会(FRB)は最近の米長期金利上昇を基本的に「静観」する姿勢を見せ、積極的なけん制は行っていない。写真は米議会上院の委員会で証言するパウエルFRB議長。昨年12月1日、米ワシントンで撮影。(2021年 ロイター/代表撮影)

FRBのデータによると、2月3日から3月3日までの1カ月間に市場から米国債を952億ドル買い入れた。1月の買い入れ額727億ドルや、昨年7月―1月の月間平均買い入れ額798億ドルから積み増している。

昨年7月以降、FRBは月間で約800億ドルの米国債の買い入れペースを維持してきたが、この1カ月の間に米10年国債利回りが1.105%から1.62%台まで急伸して1年超ぶりの高水準に達したことで、購入拡大に踏み切ったと考えられる。

また、昨年3月までは買い入れの対象は主に短期国債だったが、それ以降は中長期債が大半を占めているため、こうしたFRBの買い入れ拡大は、長期金利の上昇を抑える意図と結びついていると言える。

<FRBの公式見解と本音>

FRBの長期国債の買い入れ拡大の動きは、高官らの発言と矛盾している。

パウエル議長は4日、最近の米国債利回りの急上昇について「注目に値し、留意している」としつつも、「無秩序な」動きともFRBによる介入が必要とも考えていないとし、「FRBの現在の政策スタンスは適切だ」と述べた。

さらに5日には複数のFRB当局者が、最近の米国債利回りの上昇を懸念していないとして、16―17日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)で長期金利上昇が追加緩和を行う根拠にならないとの考えを示している。

パウエル議長の「本心」について、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は「市場でまん延する過剰なインフレ懸念や誤った利上げの織り込みに対して、内心は一定のいら立ちと危機感を感じているはずだ」と指摘する。

ただ、最近の米長期金利上昇が「無秩序」とまでは言えないことや、利上げを先んじて織り込んでしまうことに対する反動が起こり得るとの考えが、直接的なけん制をためらわせているのではないかと推察している。

また、パウエル議長にはグリーンスパン元議長のようなカリスマ性や求心力が備わっていないことも、FRBの総意が明確に形成または伝達されにくいと要因と上野氏はみている。

<市場には過度なインフレ期待>

米国債市場では、大規模な財政出動や原油高、新型コロナウイルスワクチン接種の進ちょくを主な材料にしながらインフレの急加速を警戒するムードが高まっているが、「行き過ぎた織り込み」と冷静な声は多い。

みずほ証券の上野氏は「財政による景気刺激効果について米国人が抱いている期待感は明らかに過大であり、コロナ前から存在しているグローバル化やIT化など構造的な物価上昇抑制要因は忘れられてしまっている感が漂う」と指摘する。

ある大手金融機関のエコノミストは、米国では供給制約から中間財の価格上昇がみられており、コストプッシュ圧力がいずれ最終消費財にも転嫁され消費者物価指数(CPI)にも跳ね返ってくると予想する。それでも、「こうした相対価格の上昇は、需給ギャップの高まりを反映した通常のインフレとは本質的に異なるものだ。また、非労働力人口を含めた米国の実質的な失業率が約10%もあることを考えれば、インフレ率がFRBの目標である2%を、持続的かつ大幅に上回る公算は小さい」とみている。

実際、パウエル議長は2月24日、物価目標の持続的達成には「3年以上かかるかもしれない」と述べ、利上げ開始が2024年以降にずれ込む可能性を示唆した。

しかし、インフレ期待に起因する金利上昇が続いているのは事実であり、その織り込みが過剰であるとの認識が市場で十分に広がるまで、FRBは当面の間、日々のオペレーションを通じて、米国債購入のさじ加減を調整していくことになりそうだ。

森佳子 編集:田中志保

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