April 13, 2018 / 1:28 AM / 6 months ago

コラム:米政権の燃費基準緩和、雇用や安全保障に「やぶ蛇」

[6日 ロイター] - トランプ米政権は、オバマ前政権時代に定めた車の全国的な燃費規制基準を緩和する方針を発表したが、それは、間違っている。基準を緩めれば、米国の安全保障が損われ、厳しい基準の維持を望む州との法廷闘争が頻発し、他の自動車生産国に優位を与えてしまう。

 4月6日、トランプ米政権は、オバマ前政権時代に定めた車の全国的な燃費規制基準を緩和する方針を発表したが、それは、間違っている。写真は米シカゴ近郊のガソリンスタンドで2016年10月撮影(2018年 ロイター/Jim Young)

米環境保護庁(EPA)のプルイット長官は、2日の声明で、2022─25年に発売される車種に関してオバマ政権が定めた基準は「厳しすぎる」と述べた。

この基準では、米国内で販売される新車の平均燃費を2025年までに約2倍にすることを自動車メーカーに求めている。これは壮大な目標のように思えるかもしれないが、米国のエネルギー安全保障を強化し、燃料コストを引き下げ、電気自動車(EV)その他の高効率車両の生産に向けた雇用を国内で創出するためには非常に重要である。

現行規制があまりにも厳格で遵守のためのコストが高すぎるという自動車メーカーの抗議を緩和することが目的であれば、EPAは目標をわずかに引き下げ、一部の車種に対して与えているクレジット制度を拡大することもできた。

たとえば、従来の燃料とバイオ燃料を組み合わせて使う「フレックス燃料車」に対してもっと余裕のあるクレジット制度を定める、などである。基準そのものの緩和は各州による連邦政府の提訴につながり、自動車メーカーにとっては不確実性が高まる。それに比べれば、こうやって柔軟性を拡大する方がはるかに優れているだろう。

3日には11州の司法長官が、EPA長官による基準緩和を司法の場で争う意志を表明している。

連邦政府は、米国の自動車メーカーがEVその他の低燃費車を製造し、それを世界で最も急速に成長している市場に輸出できるような環境創出を支援する必要がある。特に中国をはじめとするアジア新興市場諸国の消費者のあいだでは、EVへの支持が急速に高まっている。内燃エンジン車の禁止予定も含め、世界各国では、EV、水素自動車その他の高効率車両への需要を高める一方の政策が増えている。

厳しい燃費規制を課すことは、トランプ氏が大統領選挙の際に重視していた、国内での新たな製造業雇用の創出という点でもプラスになる。世界的に、自動車メーカー各社は設備投資のうち、少なくとも900億ドル(約9.6兆円)という非常に大きな部分を、EVとバッテリーの製造に投じている。

スウェーデン自動車大手ボルボ(VOLVb.ST)はサウスカロライナ州チャールストン近郊に新設中のEV製造工場に11億ドルを投じており、独ダイムラー(DAIGn.DE)は10億ドルを投じてアラバマ州タスカルーサ郊外の自社工場の改修を進めているが、これもEV増産に向けたものだ。

米国企業でも、電動バス製造のスタートアップ企業プロテラが、より静かで環境汚染の少ないバスを求める国内各地の都市需要に応えるため、サウスカロライナ州グリーンビルでの製造を拡大している。

ネバダ州で米EV大手テスラ(TSLA.O)が建設する「ギガファクトリー」は世界最大の工場になる予定であり、州による助成措置も手伝って、数千人分の雇用を創出し、同州の失業率低下に貢献している。

燃費規制は、自動車部品製造など関連産業における雇用創出にも貢献している。現在、低燃費車のための部品製造に携わる米国人労働者は28万8000人以上を数える。たとえばミシガン州では、EV用部品を製造する新工場のために、韓国のLG電子(066570.KS)が2500万ドルを投資し、約300人の労働者を雇用している。

低燃費車に対する政府による従来の助成措置は、雇用創出につながってきた。日産自動車(7201.T)はジョージ・W・ブッシュ政権下で2008年に実施された助成プログラムによる低利の融資を受けたが、これはバッテリー及びEV製造に向けた1300人の雇用創出に貢献した。

燃費規制は消費者にとっても朗報である。非効率な多目的スポーツ車(SUV)のオーナーに比べ、EVオーナーは、5年間で燃料費を約1万5000ドル節約できることになる。原油価格が再び上昇を始めれば、こうした節約効果は大きくなるばかりだ。

燃費基準に関するEPAの指導を実施する運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、自動車メーカー各社及びカリフォルニアなどの州と協議し、適合扱いとなる車種・燃料に関して自動車メーカーにもっと自由度を与える一方で、全国統一の基準は維持するべきである。

自動車メーカーが四半期ごとの利益を基準に考えるのは必然だから、政府は長期的な視野を持たなければならない。そのためには、将来的に米国が競争力のある豊かな国家になるよう、厳格な基準を支持すべきである。

*筆者はシンクタンクである大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)の先進エネルギー担当副ディレクター。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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