October 4, 2019 / 12:32 AM / 11 days ago

ブログ:有刺鉄線に囲まれた日常、反体制のカシミールで生きる

[スリナガル(インド) 27日 ロイター] - インド実効支配下にあるジャンムー・カシミール州アンチャー地区は、頑丈なバリケードと有刺鉄線で囲まれている。反政府運動を押さえ込むため、警察が何週間にもわたって全域で取り締まりを続けており、地区外に出ようとする人はほとんどいない。

 9月27日、インド実効支配下にあるジャンムー・カシミール州アンチャー地区は、治安当局の侵入を防ぐため、住民が頑丈なバリケードと有刺鉄線を築いている。写真は州都シュリーナガルで9月17日撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

インド政府は今年8月5日、イスラム教徒が人口の大半を占めている同州に特別な自治権を与えている憲法370条を廃止した。特別な自治権が国内の統合の妨げになっているというのがその理由だ。

インド治安部隊の車両のアンチャー地区侵入を防ぐため塹壕が掘られた道を行き交うカシミール住民。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

自治権が廃止されれば、社会不安が広がる、という同州当局者の懸念通り、州内では暴動が発生し、すでにインド当局による逮捕者は4000人近くにのぼっている。

労働者階級が多く住むアンチャー地区は、こうした抗議行動の拠点となっている。警察の取り締まりは7週間以上も前に開始され、当初に比べれば平穏は戻っているものの、約1万5000人が暮らすアンチャー地区の孤立状況が解消される兆候はない。

<覆面をする住民たち>

この地域への入り口には、丸太や電柱、有刺鉄線で作られたバリケードが置かれ、警察が入ってこないよう、若者らが目を光らせている。 車道には、治安当局の車両を阻止するために塹壕が掘られている。

インド治安部隊のアンチャー地区侵入を防ぐバリケードで、夜間の見張りに立つカシミール住民男性。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

日が暮れると、若者たちのグループは、たき火を囲み、近隣の住民が提供する茶をすすっている。彼らの多くは覆面をし、投石用の石や棍棒代わりの木の枝で武装している。

「夜通し屋外で過ごしているのは、家族を守り、我々に暴行を加えるインド当局を入れないためだ」と16歳の学生、ファジルさんは言う。

太い木の枝を手にし、検問所から街路を見張るファジルさんは、「何も怖いものはない」と言う。

シャッターに独立支持の落書きが残る閉店中の店舗前に座り込むカシミール住民男性。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

インドのナレンドラ・モディ首相は、カシミール州住民だけに(州内での)不動産購入や公職就任を認めるという特権こそが、同州の発展を阻害し、1989年以来4万人の死者を出した分離独立主義者による反乱を刺激していると述べている。

金曜日の礼拝の後、アンチャー地区でスローガンを叫ぶカシミール住民。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

インド側は、抗議行動を予防するため、インターネットと携帯電話サービスを遮断し、夜間外出禁止に近い規制を設けている。その後7週間以上が経過し、ある程度平穏は戻ってきており、逮捕者の多くも釈放された。

固定電話は再び使えるようになったが、携帯電話とインターネット接続は依然として遮断されている。

人気のないアンチャー地区街路を歩くカシミール住民女性。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

商店は短時間だが営業するようになり、生活必需品の買い置きが可能になっているし、スリナガル市街の交通も戻ってきている。夕刻、背後にヒマラヤ山脈がそびえるダル湖畔の大通りを人々が散歩するような日もある。

<銃弾の飛び交う日常>

だが、アンチャーはあいかわらず治安部隊が入り込めない地域になっている。地域内では学校などの公的サービスの閉鎖が続き、住民はその場しのぎの対応に追われている。

4人の大学生は3部屋ある住宅を仮設の学校に仕立て上げ、毎日数時間、200人もの子どもたちを相手に授業を行っている。頭をスカーフに包んだ女児も含め、子どもたちは童謡から数学に至るまでさまざまな教科書を手に、ひっきりなしにこの「学校」を訪れている。

住宅内で子どもたちを教えるカシミールの大学生。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

「この地域の生徒たちへの教育は、混乱のために酷い状況にある。このまま将来の世代を苦しめるわけにはいかない」と教師役を務める大学生アディルさんは言う。

もう1人、子どもたちを教えている学生ワリドさんは、「この子らが毎日目にしているのは、銃弾やペレット(散弾銃の弾丸)ばかりだ」と嘆く。

墓地で祈るカシミール住民男性。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

人々が逮捕される恐怖におびえながら市内の他地域に向かわなくて済むように、基本的な医療を提供している学生もいる。

住民のルビナさんによれば、15歳になる彼女の息子は、金曜日の礼拝から帰宅する途中、治安部隊が発射したペレットで負傷したという。

息子のX線写真を見せるルビナさん。9月26日、シュリーナガルで撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

少年の頭部は包帯でぐるぐる巻きにされており、負傷して以来、口をきいていないという。だが家族は、警察に拘束されることを恐れて、市立病院に連れて行くよりも自宅で治療したいと考えている。

「包帯を換えるために近くの政府系病院に行かざるをえないとすれば、拉致されないように、6~7人の女性が同伴することになるだろう」とルビナさんは言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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