August 3, 2015 / 6:52 AM / 4 years ago

コラム:アジアで強まる「脱米国依存」

[31日 ロイター] - 米国のオバマ政権が「アジア重視」を掲げてから約3年。だが、アジアの米同盟諸国はいささかか納得していないように見える。

 7月31日、米国のオバマ政権が「アジア重視」を掲げてから約3年が経つが、アジアの米同盟諸国はいささかか納得していないように見える。写真は海上自衛隊の護衛艦「いずも」。2013年8月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

中国と近隣諸国による領有権問題について、米国が常に目を光らせていることに異を唱える人はいないだろうが、しばしば他の優先事項の陰に隠れてしまいがちだ。とりわけ、中東問題やロシアとの対立が米国の最優先課題として繰り返し浮上している。

その結果は比較的分かりやすいものだ。中国の動きを懸念する日本、インド、フィリピン、ベトナム、オーストラリアなどのアジア諸国は、結束を一段と強めている。こうした国々は、米国の行動に関係なく、自ら事にあたる能力が必要になると気をもんでいる。

そのような現象はさまざまな形で表れている。例えば、日本とオーストラリアは新型潜水艦の開発を共同で行う可能性がある。インドも米印海上共同訓練「マラバール」に日本の海上自衛隊を招待している。

米議会が先月に環太平洋連携協定(TPP)の妥結に不可欠とされる、米大統領の貿易促進権限(TPA)法案の成立を阻止した後、シンガポールのシャンムガム外相はワシントンで、米国はアジアで権力のレバーを失いつつあると指摘。「非常に厳しい選択だ。地域の一員でいたいのか、それともいたくないのか」と語った。

TPA法案はその後まもなく成立した。

批判的な人たちが何と言おうと、米国のリーダーシップは確かに存在する。だが事態はもっと複雑であり、米国は依然として重要な役割を担っている。

アジアで中国軍が海洋進出を拡大しているのを背景に、米国も同地域で支配的な海軍力を維持し続けている。さらに極めて重要なのは、同地域の同盟各国にとって米国が最も重要なパートナーであり続けているということだ。歴史的に中立的な立場を取ってきたインドでさえ、モディ政権下で親米姿勢を強めている。

ただし、米国のリーダーシップはさまざまな方向へと引っ張られている。米国は、ロシアと中国による同盟諸国への攻撃を阻止すると同時に、衝突へとつながりかねないほど両国の反感を買うことは避けなければならない。

米国の軍事・外交問題の焦点は主に、過激派組織「イスラム国」との戦いやイラン核問題、そしてイスラエルとパレスチナの和平プロセスなど中東にある。一方、中国は一貫して自国周辺に注力している。

米国は軍事的支配を他の大国に脅かされるなか、軍事費を縮小し始めている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、米防衛費は、2010年のピーク時に比べ20%減少している。

それとは対照的に、アジア諸国では近年、防衛予算が増加する傾向にある。オーストラリアは2014年だけで防衛予算が6.7%増加。韓国とインドもそれぞれ2.3%、1.8%増となっている。また、日本政府は1月、閣議で2015年度の防衛予算案を過去最高の4兆9800億円とすることを決めた。

こうした国々がどの程度緊密に防衛面で連携し、その中に米国がいかに組み込まれるのかはまだ分からない。昨年に国防費伸び率が9.7%と地域最大となった中国だが、同国最大の懸念は仮想敵国が北大西洋条約機構(NATO)のような公式の集団を構築することだろう。だが差し当たり、これは起こりそうもない。むしろ、インドとベトナム、フィリピンと日本といったような個別間での関係が強化されている。

米国では、専門家だけでなく一部の当局者らから、もしアジアの同盟国が中国と戦うことになった場合、米国がそれに巻き込まれるリスクがある一方で、米国は同地域での影響力を失う可能性を危惧する声も聞かれる。

そのような衝突を望む人は中国にもどこにもいないという考えが多数を占める一方で、中国は明らかに周辺地域で勢力を拡大する意志を示している。南シナ海での人工島などの建設や同海域で強める軍事行動は今後も活発化するだろう。

こうした傾向は中国の周辺地域をはるかに超えている。特に中国がインドに対抗するなか、専門家らは、南アジア諸国間での「新たな覇権争い」について話し始めている。

中東が逆説的に、この成り行きのヒントを与えてくれるかもしれない。米国の中東への傾倒については、同地域の多くの同盟国、とりわけ湾岸諸国とサウジアラビアがますます疑念を持つようになっている。中東の同盟諸国も防衛費を増強しており、昨年のサウジの同費伸び率は世界最大の17%となった。

その結果、米国が中東の同盟諸国に対する影響力と支配力を行使することが一段と難しくなっている。例を挙げれば、イランが支援するイエメンのイスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」へのサウジ主導の空爆は、西側の影響力が及ばない領域のように見える。

アジアでは当面、血を流すような衝突はほぼ間違いなく起きず、対立は主に沖合や経済やビジネス、サイバー空間上に限られるだろう。

ただし、米国が何をしようと、他の地域でもそうであったように、米国のアジアにおける支配力は徐々に行き詰まっている。アジアの世紀であろうとなかろうと、少なくともアジアでは、同地域の国々が支配力を強めていくことになる。

*同コラムはシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」のサイトに掲載されたものです。

*筆者はロイターの防衛担当記者で、PS21の理事も務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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