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コラム

コラム:アメリカの「秘密兵器」=ビル・ゲイツ氏

[18日 ロイター] - 米国は今回の大統領選にすっかり夢中になってしまっている。多くのコメンテーターが指摘しているように、予備選の焦点は政策よりも候補者の人柄だ。

 4月18日、11月の大統領選で、すべての候補者が合意してほしいと思う点は、米国には比類のないイノベーションの能力があるということだ。写真は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同代表を務めるビル・ゲイツ氏。ワシントンで開催されたロイターイベントで撮影(2016年 ロイター/Joshua Roberts)

民主・共和両党はこの秋に自党を代表すべき候補者の選択に集中しているが、ここで、11月にすべての候補者が合意してほしいと思う点を述べておきたい。それは、米国には比類のないイノベーションの能力があるということだ。

イノベーションに投資すれば、米国内で企業が誕生し、雇用が生まれる。国民はより健康で安全になり、世界各地の最貧国で人々の生命を救い、貧困に取り組むことになる。イノベーションによって、次期大統領は国内だけでなく世界中の人々を助ける大きな機会を得られるのだ。

もちろん、米国のイノベーション能力は目新しいものではない。私たちは過去2世紀以上にもわたって発明を繰り返してきた。

ベンジャミン・フランクリンや、マーガレット・ナイト、トーマス・エジソンを思い出してみよう。第2次世界大戦が終了する頃には、米国は自動車、航空機、エレクトロニクス、医学その他の分野で世界をリードしていた。

また、その成功の公式も別に複雑なものではない。政府がワールドクラスの研究機関に資金を与えることで新たなテクノロジーが生まれ、それを米国の起業家たちが製品化しただけである。

以前と違う点は、グローバルな主導権争いに参加する国が増えており、彼らもイノベーションの価値を知っているということだ。韓国の研究開発投資(対GDP比)は2000年以降90%上昇している。中国でも倍増している。これに対し、米国の研究開発投資は事実上横這い状態だ。他国もイノベーションに力を入れ始めたというのは素晴らしいことだが、もし米国が主導的な役割を維持するつもりなら、賭け金を上げていく必要がある。

筆者は、この種の研究がもたらしうるインパクトを目の当たりにしてきた。実にラッキーなことに、1960年代にコンピューターが登場してきた頃、私は学生だった。当初、コンピューターは非常に高価で、利用するのは難しかった。だが、米政府の研究によって可能となったマイクロチップ革命のおかげで、状況はガラリと変わった。

特に、筆者が共同設立者となったマイクロソフトMSFT.Oにとっては、コンピューターを生産性向上に欠かせないツールとするようなソフトウェアを開発できるようになった。その後、これもやはり政府の研究の産物であるインターネットによって、状況は再び変化した。

今日、代表的なテクノロジー企業の大半があいかわらず米国に本拠を置いているのは偶然ではない。彼らが前進すれば、人間活動のあらゆる分野に非常に大きな影響が及ぶだろう。

筆者のお気に入りの例は、医療である。この分野に対する米国の投資によって、大学、バイオテクノロジー企業、政府系研究所に、高給職が生み出されている。がん治療など、疾病に対する新たな治療法につながっている。エボラ出血熱やジカ熱など致死性の高い伝染病の封じ込めに貢献している。貧困国で命を救うことにも役立っている。1990年以降、5歳未満で死亡する子どもの比率は半分以下に低下した。これは歴史を通じて最も偉大な数字だと思う。その実現に対する米国の貢献はもっと評価されてよい。

今後数年間で、さらに大きな進捗があるかもしれない。少しの幸運に恵まれれば、私たちはポリオを根絶できる。米国の科学者によって開発されたワクチンのおかげで、この目標は達成間近となっている(ポリオは1979年の天然痘に続いて二番目に根絶される疾病となるだろう。天然痘の根絶においても米国は欠かせない役割を果たした)。

また、マラリアについても素晴らしい前進が見られる。米国が医薬品や蚊帳などの画期的なツールを支援したことが一因となって、2000年から2012年にかけて、マラリアによる死亡者数は40%以上減少した。だがこうした機会を最大限活かすには、基礎医学研究と、ワクチンなど特定分野にもっと投資する必要がある。

もう一つの素晴らしい例がエネルギーだ。エネルギー生産における最先端技術を決定づけているのは、米国の資金による研究である。風力発電、太陽光発電の初期の発展は、政府資金によって育まれたものだ。そしてこの研究は大きな投資利回りをもたらしている。1978年から2000年までの間に、エネルギー省は省エネルギー及び化石燃料の研究に175億ドル(約1.9兆円)を投じ、410億ドルの経済効果をあげた。だが、レーガン政権期から今年に至るまで、エネルギー省の予算は実質的に増加していない。

こうした投資を増やしていけば、エネルギー部門に新たな雇用が生まれ、世界にエネルギーを供給するテクノロジーが育まれる。同時に、気候変動対策にもなり、エネルギー自給が促進され、今日エネルギーを利用できない13億人もの人々に廉価なエネルギーを提供できる。

有望な分野をいくつか挙げるならば、植物に近いやり方で太陽エネルギーから燃料を生産する、原子力をより安全で低コストにする、炭素回収・貯留、再生可能エネルギーを最大限活用するための新たなエネルギー貯蔵方法を生み出す、などがある。

現在、クリーンエネルギーに関しては強い追い風が吹いている。昨年、米国を含む20カ国の首脳が、この分野に投じる国家予算を倍増させることを公約した。こうした重要な取り組みを補完すべく、筆者は有望なクリーンエネルギー企業を支援する民間投資家のグループ、「革新的エネルギー同盟」を立ち上げた。次期大統領には、この勢いを加速するチャンスがあるだろう。

研究開発投資とは、政府が勝者と敗者を選別することではない。そうした選別は市場がやることだ。政府による投資は、うまく行くと分かっていることをやればいい。つまり、限定的でターゲットを絞った投資を行い、米国の起業家たちのための基礎を築くことだ。このアプローチは数十年にわたって米国のリーダーシップにとって不可欠だったし、今後も、その重要性は増す一方だろう。

夏の終わりまでに、民主・共和両党はリーダーを選び、11月の大統領選本選に向けて準備を始めるだろう。指名された候補は、米国に関する自らのビジョンと、それを実現するためのアジェンダを提示する。恐らくそれらのビジョンには、類似点よりも相違点の方が多いだろう。しかし筆者は、米国の将来をどう考えるかに関わらず、イノベーションは常に重要な役割を担うという点で全員が一致できるよう願っている。

*筆者はビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同代表。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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