October 10, 2018 / 3:43 AM / 10 days ago

コラム:イラン外交政策、米制裁では変わらない理由

[8日 ロイター] - イラン政府が発するメッセージは明快だ。1日には過激派組織「イスラム国」(IS)のシリア東部にある拠点にイラン革命防衛隊(IRGC)がミサイル攻撃を実施した。IRGCによると、これは9月22日のイラン南西部アフワズで起きた銃撃テロへの報復措置だという。

10月8日、イラン政府が発するメッセージは明快だ。写真は2015年7月、ウィーンで行われたイランの核問題を巡る会議で、イランの国旗を移動させる係員(2018年 ロイター/Carlos Barria)

しかしミサイル攻撃には、IS向けだけではないメッセージが込められている。

イランのテレビは、ミサイルの1つに記されたスローガン「米国に死を、イスラエルに死を、サウジアラビアに死を」を映し出した。つまりトランプ政権と中東におけるその同盟勢力に対して、米国がいくら制裁を発動してもイランは外交政策を変えないというはっきりとしたシグナルを送ったのだ。

3日にはイランのそうした方針を後押しする動きがあった。国際司法裁判所(ICJ)が、米国に「人道物資」を制裁から除外するよう求めたからだ。ICJの命令に強制性はなく、ポンペオ米国務長官はこれを拒絶したとはいえ、イラン指導部としては反抗的な姿勢を維持しても大丈夫だと勇気づけられるだろう。

イラン外務省はICJの判断が出た直後の声明で「イランの正しさと同国市民に対する米国の制裁の違法性ならびに残虐性が証明された」と強調した。

トランプ政権が核合意からの離脱を表明した後、イランの姿勢がより「攻撃的」になった一因として、政治決定部門においてIRGCを含めた強硬派の権力が増大したことが挙げられる。

シリアのIS拠点へのミサイル攻撃の約1カ月前には、イラク北部クルド人自治区にあるクルド人武装勢力の拠点にもミサイルを発射。8月にはイラク国内のシーア派に弾道ミサイルを供与したとロイターが伝えた。

またフランス政府は、パリ近郊で開かれたイラン反体制派組織の集会を狙った爆弾攻撃未遂事件の背後にイラン情報省がいたのは「間違いない」と批判。イラン外務省は同国の関与を否定したものの、欧州地域まで攻撃の手を伸ばそうとしたことは、イラン国内の強硬派による暴走傾向が強まっている様子がうかがえる。

米国の制裁がイランに効いていないと主張したいわけではない。9月の国連総会におけるトランプ大統領のイラン非難を受け、通貨リアルは過去最安値まで急落した。

その後イラン当局によるドル売りなどでリアルはやや持ち直したが、貯蓄の大幅な目減りを目にしてきた国民の懸念を払しょくする上ではほとんど役に立っていない。

物価急上昇や失業の増加、過剰流動性の発生といった事象から見えるイラン経済の全般的な悪化で、穏健派のロウハニ大統領が初めて議会に呼び出され、経済的な問題で答弁を迫られるとともに、一部の批判派から弾劾要求まで出される事態になった。

それでも国内の圧力によって、イランの強硬な対外政策が修正される展開にはなっていない。その理由の1つは、穏健派が政治的な影響力を保持しようして、国内に高まりつつあるナショナリスト的なムードに配慮している点がある。

もっともそうした動きがなくとも、米国の圧力にイランが抵抗する流れは予想できた。

それは1979年のイスラム革命や1980─88年のイラン・イラク戦争などの修羅場を潜り抜けてきた同国の指導部の間に確固として築かれた信念に根差している。つまり一歩退けばさらなる後退が生まれ、外国の要求を受け入れれば一段の要求を招く可能性があるという思考だ。

こうした考えは、イランの最高指導者ハメネイ師が4日、米国への服従を唱える国民は「国家への最大の裏切りを行っている」と発言したことでも裏付けられた。

イラン政府にしてみれば体制変更を強いるタカ派的な米政権と協議すれば国内の支持基盤を弱め、対外的地位が打撃を受けるだけであり、イラン側が体面を保ち、新たな合意は先の核合意のようにならないと納得するような提案をホワイトハウスがしない限り、交渉に応じそうにはない。

*筆者はイランインターナショナルテレビのマルチメディアジャーナリストです。スウェーデンのルンド大学の政治学博士号を取得し、同大の中東研究センターの外部研究員を務めています。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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