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アングル:干ばつ深刻化のケニア、農家は「魚の養殖」に活路

[キビンゴ(ケニア) 16日 トムソン・ロイター財団] - 農家のイライジャ・ムリシさんがバナナを栽培していた1980─90年代、ケニア中央部では気候がだんだんと不安定になり、栽培に大量の水が必要なバナナでは安定した収入を得ることが難しくなっていた。

 1月16日、農家のイライジャ・ムリシさん(写真)がバナナを栽培していた1980─90年代、ケニア中央部では気候がだんだんと不安定になり、栽培に大量の水が必要なバナナでは安定した収入を得ることが難しくなっていた。写真は2022年12月、キビンゴにあるムリシさんの養魚場で撮影(2023年 トムソン・ロイター財団/Caroline Wambui)

長引く乾期には若い苗がだめになった。長雨や豪雨が続く雨期にはバナナが豊作になり過ぎ、市場に売る価格を下げなければならなかった。

より少ない水で育つコーヒーの栽培に切り替えた時でさえも、安定した生産には苦戦した。

だが、2021年、ムリシさんが農場には珍しい「作物」を加えると、変化が起こった──。その作物とは、魚だ。

ムリシさんの養魚地には今、1500匹以上のティラピアが泳ぐ。この池は、豪雨の際には雨水の貯水池に、乾期には作物への水やり用の水源になっているという。

干ばつや豪雨であっても、通年でコーヒーや野菜を育てることができるうえ、魚を売って追加収入を得ており、現在はとても安定した生活を送っているとムリシさんは話した。

ケニアの首都ナイロビから北東に130キロ離れたキビンゴに、ムリシさんの0.5ヘクタールの農場はある。コーヒーの栽培場所よりも高い位置にある縦10メートル、横25メートルの養魚池から農地に水を引く方法を説明しながら、ムリシさんはこう語った。

「(養殖は)私にとって実に有益だった」

ムリシさんが2021年4月に養魚場を始めてからというもの、コーヒーの収穫量は従来の2倍以上にあたる年間2000キロに増加。全体の収入は3倍になったという。

東アフリカ諸国は現在、過去40年で最悪の干ばつに見舞われており、作物と収入に大打撃を与える異常気象への対策が急務となっている。一部の農家は、貯水池として使えるほか、より栄養価の高い食事ができ、さらには収入も増大する魚の養殖に活路を見いだし始めている。

キリニャガ地区の自治体は2019年以降、景気刺激策の一環として、養魚場を設けるよう農家を支援している。

水産課によれば、これまでに20の農業団体と1350人の個人農家を支援したという。支援事業の費用の詳細は明かさなかった。

自治体は池用の防水シート代や、初年度の稚魚代、そして魚が大きくなるまでの餌代を負担している。

キリニャガの自治体は10月、年間の漁獲高を29トン(1280万シリング=約1347万円相当)から、62トンにまで増やすよう取り組んでいると話した。

<農家の態度に変化>

26人のメンバーから成る「カムワカ自助農業組合」でトップを務めるハリソン・ムワンギさんは、当初、乾期の長い同地域では、ほとんどの農家が魚を育てることに抵抗感を示したと振り返る。

メンバーの多くにとって魚の養殖は未知の仕事で、むしろニワトリを育てる方が良い結果になるだろうと考えていた。

しかし、自治体が上手な魚の育て方について研修を行い、基本的な初期費用の援助を進める中で、多くの農家が挑戦に踏み切った。

ムワンギさんによれば、組合は2021年の初めにようやく、メンバーのひとりが所有する草地を養魚場へと切り替えると決定。この草地は牧草地として利用されていたが、特に乾期になると収穫量が格段に低下していた。

同年末までの間に、彼らは農場を訪ねる人や地元の市場に対し、1万7000シリング分の魚を販売したという。ムワンギさんは売り上げについて、1年目の収穫にしては「かなり励みになる」と評価した。

ムワンギさんはまた、家畜の管理に比べて魚の養殖がいかに容易かを語った。

「組合にとって、これ以上の農場の使い道はないだろう」

カムワカの農家たちの年収はそれぞれ10─15万シリングほどだが、今後魚の飼育数が増えれば、さらに高い収入が見込めるとムワンギさんは言う。

ティラピアやナマズを育てるほか、農家への研修も行うムエア農場の責任者ジョン・ウィルソンさんは、魚の養殖について、良いビジネスというだけでなく、ケニア人に代替タンパク源を提供できる機会だと指摘する。

<魚の消費を増やせるか>

ムリシさんとムワンギさんは、干ばつで打撃を受けるケニアの農家に「魚が将来性のある作物だ」と説得するほかに、越えなくてはならない壁が複数あると声をそろえる。

農家は豪雨の際に池でためた水を乾期に使うことができる一方で、乾期が特に長引いた場合には池の水の補給に苦しむことになる。

ムリシさんは時折、乾期の農家を助けるため自治体から支給された農業用水を池に入れて補充したことがあると話す。

また、カムワカの農家たちは乾期の間、週に一度、ランニングコストのかかる発電機を用いて近くの川からきれいな水をくみ、池に足していたとムワンギさんが明かした。

さらに、魚の養殖を始める人が増えて地元市場への魚の供給が過剰になったことも農家にとって難題だ。

キリニャガの小さな工業都市サガナで稚魚を育てるマイケル・マネキさんはこう話す。

「農家は自身の生産物の市場を積極的に探していくことが必要だ。自治体政府が市場を切り開いてくれるのを待っているべきではない」

政府の漁業担当省庁出身でナイロビ大学で海洋学や漁業生物学を研究するンティバ・ミシェニ教授は、魚を食べることが一般的でないケニアで、魚をメインの食事として浸透させることが過剰生産の解決につながると考えている。

「子どもたちや学校、地域向けに『魚をもっと食べよう』という強固なキャンペーンを打ち出さなければ、魚の消費は広がらないだろう」

Reporting by Yuka Osawa

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