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アングル:米製造業、「ポストコロナ」の深刻な人手不足が直撃

[21日 ロイター] - 新型コロナウイルスのパンデミック後に生じた深刻な人手不足が、米国の製造業を直撃している。インディアナ州では先月、製造受託企業が十分な働き手を確保できなかったため、160万ドル(約1億7500万円)相当の金属部品を顧客に納入できなかった。またマサチューセッツ州のプラスチック工場は何とか納期を守ろうと必死になった結果、背に腹は代えられず受注残高の4分の1近くを下請け業者に外注した。

5月21日、新型コロナウイルスのパンデミック後に生じた深刻な人手不足が、米国の製造業を直撃している。米カリフォルニア州サンノゼの工場で2020年4月撮影(2021年 ロイター/Stephen Lam)

ここ数カ月で経済成長が加速し、企業経営者はコロナ禍において進めた人減らし方針をあわてて転換しつつあるものの、そう簡単に行く話ではない。米労働省が発表した4月雇用統計を見ると、製造業をはじめ小売り、配送サービスなどの雇用が軒並み減少したからだ。労働者が仕事に戻らず様子を見ている原因が、失業保険給付金の「大盤振る舞い」にあるのかどうかを巡り、政治論争が過熱する事態にもなっている。

実際、通常分に週当たり300ドルが上乗せされた現在の失業保険給付金は、最低賃金が支払われるほとんどの職種よりも実入りが良く、3月に議会で承認されたバイデン大統領の新型コロナ対策の一環として上乗せ期間も9月上旬まで延長された。このため知事が野党・共和党系の20余りの州では、地元の労働力不足を理由に予定よりも早くこの上乗せ措置を打ち切った。

ほかに労働者の復帰を阻んでいる要素ではないかと疑われているのは、子育て関連サービスの利用が難しいことや、全般的な健康リスクを巡る不安だが、米連邦準備理事会(FRB)高官から企業首脳まで、なぜ労働需給がひっ迫しているのか誰もはっきりした理由は指摘できない。

結局のところは、FRBのクラリダ副議長が最近言ったように「米経済は閉じるより再開する方がずっと時間がかかるのだろう」という点に尽きる。

<採算割れも>

多くのメーカーにとって、人手不足問題はロックダウン中の巣ごもり消費をきっかけに始まった需要急増によって一段と悪化している。米サプライ管理協会(ISM)によると、過去2カ月間はいずれも製造業の受注残が過去最高水準を記録した。

マサチューセッツ州に本社を置くプラスチックメーカー、ユナイテッド・ソリューションズのライリー最高経営責任者(CEO)は「私は30年間、製造業界に身を置いてきてこのような状況を目にしたのは初めてだ」と驚く。同社はラバーメイド社の保存容器などの生産を手掛けている。

ライリー氏は、自前の従業員だけで注文をさばくにはどうしても100人弱足りなかったので下請け2社に仕事を依頼した。同社はボストン郊外とミシシッピ州に工場を持ち、通常なら700人ほどを雇用しているのだが、最近数カ月で両工場とも人員が流出してしまった。在庫調整や下請けの活用などで対処できたのは受注の一部にすぎず、必要な生産量のおよそ25%はまだめどが立っていない。今や、事務部門の従業員と管理職まで製造現場にかり出しているという。

人手不足は操業コストを押し上げつつある。ユナイテッド・ソリューションズの場合、工場を1日24時間/週7日稼働させ、3回目のシフトや夜勤の対応にずっと四苦八苦している。人繰りが非常に乏しくなったことから、同社はシフトに入ってもらうために多額の超過勤務手当を支給。ライリー氏によると、こうした人手問題とプラスチック樹脂価格の高騰が重なり、間もなく3回目のシフトを回しても採算が合わなくなり、操業停止に追い込まれかねない。操業を止めれば、生産目標の達成がさらに遠のくことになってもだ。

<賃金競争>

今のところ、半導体不足に見舞われた自動車工場のような、人手不足に起因する操業停止は現実化していない。その代わり、出荷の遅れや成長の機会を失わざるを得ないといった問題に直面している。

インディアナ州ブレーメンで製造受託事業を手掛ける同族企業のBCIソリューションズは先月、人手不足のあおりを受け160万ドル相当の製品を出荷できなかった。J・B・ブラウン社長は「たいしたことがないように聞こえるかもしれないが、われわれにとっては重大事だ」と強調する。失った取引は年間売上高4000万ドル前後のおよそ4%を占めるからだ。

BCIは受注分を全て生産するために250人程度が必要なのに、ブラウン氏によると年初来従業員がくしの歯を引くように辞めていき、今は約120人になってしまった。

ブラウン氏は、そうなったのは週300ドルの失業保険給付上乗せも含めたさまざまな要因のためだとみなした。去ってしまった従業員の多くは周辺に集中しているRV車工場に就職。これらの工場は、好況時に生産量に基づく大規模な賞与を支払うという条件を提示している。ブラウン氏も2月に新規採用者の時給を2ドル引き上げて15ドルにした上に、24日からは20ドルに再引き上げする方針で、ずっと働いている従業員の機嫌を損ねないようにするには賃金水準全体を引き上げなければならなくなっている。

同氏は、半径0.5マイル以内にある他の企業と情報交換したところでは合計で足りない働き手は1000人を超えており、町にあるアイスクリームチェーンのデイリークイーンは少ない人手でやりくりするために毎週1日休業していると明かした。

RV業界の最大手サプライヤー、LCIインダストリーズのリッパートCEOも、働き手をより好条件の職場に奪われつつある。「われわれがいる地域でRVメーカーの賃金水準が最も高い」と語るリッパート氏は、同メーカーの時給は最高で50ドルに達すると指摘。もし時給20ドルの仕事に満足していない労働者なら、転職を目指すのが普通だとあきらめ口調で説明した。

(Timothy Aeppel記者)

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