May 10, 2019 / 11:03 PM / 4 months ago

コラム:出口が見えない米製造業の「大幅減速」

[ロンドン 9日 ロイター] - 米国の製造業セクターは、2015年以降と08年のグレートリセッション(大不況)以前の期間で最も著しく活動が減速していることが、一連の連邦政府データなどから分かる。

 5月9日、米国の製造業セクターは、2015年以降と08年のグレートリセッション(大不況)以前の期間で最も著しく活動が減速していることが、一連の連邦政府データなどから分かる。米テネシー州の自動車工場で2018年8月撮影(2019年 ロイター/William DeShazer)

米中貿易摩擦が激化し、事業環境の不透明感が増しているにもかかわらず、アジアや欧州の製造業に比べて米国勢は底堅く推移してきたことが一部の専門家にとって悩みの種だった。

しかし新規受注や雇用、労働時間、販売価格、また民間の景況調査を注意深く分析すれば、それらは2018年半ば以降に米製造業の勢いが弱まったことを一致して示している。

ホワイトハウスは、経済指標のヘッドラインが比較的強い点や米国株の底堅さを強調しているが、製造業は過去9カ月でひどく痛めつけられたのだ。

こうした製造業の減速ぶりは、ホワイトハウスが中国と貿易協議に合意して貿易戦争のエスカレートを避けようとする動機になる。

製造業関連の指標がおしなべて成長減速を伝えているのは以下に見る通りだ。

●航空機を除く非国防資本財の新規受注は1─3月の前年同期比伸び率が4.1%と、18年6─8月の8.3%に比べて半分未満になった。

●2─4月の製造業雇用者の伸びは前年同期比1.8%で、18年9─11月の2.2%を下回った。

●2─4月の非管理職労働者の週平均労働時間は41.7時間、前年同期は42.3時間だった。

●4月の製造業残業時間は、前年同月の4.7時間から4.3時間に減った。

●2─4月に製造業の販売価格は前年同期比1.7%の上昇で、18年5─7月の約5.8%から鈍化した。

政府データと整合的なのが米供給管理協会(ISM)の景況調査で、やはり18年8月末以降活動が急速に弱まったことを物語っている。

4月のISM製造業景気指数は52.8で、直近ピークだった18年8月の61.3を大きく下回り、16年10月以降の最低水準だった。

18年8月に64.5だったISMの新規受注指数は4月に51.7にまで下がり、拡大・縮小の節目の50が迫ってきた。

構造物・機械設備・知的財産向け企業投資は1─3月の伸びが年率2.7%、前年同期は11.5%だった。

18年夏以降、製造業や卸売業、小売業はこれまでに大規模で恐らく意図しなかった原材料、中間財、最終財の在庫増加をそれぞれ報告している。

売上高在庫比率は18年6月が1.33だったが、今年2月には1.39まで上がり、1年半ぶりの高水準を記録。過剰在庫がなくなるまでは、新規受注の制約要素となりそうだ。

製造業の拡大ペース鈍化に伴って貨物輸送量の伸びも減速している。

<減速はまだ続く>

米製造業は、欧州やアジアの製造業に痛手を与えた世界的な企業投資や貿易の鈍化から無傷でいられるわけではない。

17年から18年初めには、米製造業は石油掘削再開や減税、国防予算増加、関税引き上げによる内製化の動きなどが追い風になった。

しかし18年半ば以後は、他国と同じように企業投資や景気の弱まりによって悪影響を受けている。

意図せざる在庫や新規受注に関する比較的軟調な指標からすると、米製造業の減速は少なくとも在庫がより許容できる水準に減るまで、あと数カ月は続きそうだ。

もしも関税の応酬がエスカレートしていけば、米製造業は向こう半年で景気後退に陥るリスクも高まるだろう。

ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、米経済成長が再加速するとともに株式に大規模な資金が流入してもおかしくないと予想したが、そうした展開には米中貿易協議の合意が必要なことはほぼ間違いない。

<新インフラ法案も>

もっとも貿易協議の合意だけでは、事業環境の不透明感を払しょくして製造業活動を再び急拡大させるには不十分だ。

企業にとっては大規模な投資を再開する前に、米中関係が落ち着き、関税や投資、セキュリティー問題に関する争いが二度と起きないと確信できるような一定の時間が欠かせない。

だから景気見通しに関するリスクは下振れ方向にあるように見える。つまり貿易戦争のエスカレートは恐らく景気後退を招くが、合意が成立したからといってすぐに成長が急加速するわけでもない。

下振れリスクと製造業の拡大ペースの低調さによって、米連邦準備理事会(FRB)は減速がこれ以上深刻かつ長引く事態にならないための保険として、年内に利下げする公算が高まっている。

製造業のさえない動きが続くと予想されるため、ホワイトハウスと米議会が来年の選挙前にこのセクターを急速な成長軌道に戻す目的で、新たな大規模インフラ整備法案を打ち出す政治的な魅力も増していくだろう。

*筆者はロイターの市場アナリストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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