June 8, 2018 / 6:44 AM / 11 days ago

アングル:金正恩氏迎えるシンガポール、消えた「同志」たち

John Geddie and Fathin Ungku

6月7日、シンガポールの市街地中心部にあるくすんだ高層ビル。入居する韓国語学校「アイスピーク韓国語センター」のエレベーターホールを挟んだ向かい側には、北朝鮮大使館が入居する質素な一室がある。米朝首脳会談が行われるセントーサ島からシンガポール中心部を眺める。4日撮影(2018年 ロイター/Edgar Su)

[シンガポール 7日 ロイター] - シンガポールの市街地中心部にあるくすんだ高層ビル。入居する韓国語学校「アイスピーク韓国語センター」のエレベーターホールを挟んだ向かい側には、北朝鮮大使館が入居する質素な一室がある。

だが、同校の校長を務める韓国人のステラ・チョイさんは、大使館が移転してきた2年前から、北朝鮮人や訪問者を見たり、話をしたことがないという。

北朝鮮に対する外交圧力が強化され、北朝鮮人が国外に旅行したり働くことが次第に難しくなったことを受け、シンガポール在住の小規模な北朝鮮人コミュニティーは近年、人目を避けるような生活を送ってきた。チョイさんの体験は、そうした状況と符合する。

北朝鮮に対する国連制裁が強化されたことを受け、シンガポールが制裁決議を順守して同国との貿易や銀行取引を停止、就労許可を取り消したことで、ここ数年は北朝鮮人の姿が消えている。

現職の米大統領と北朝鮮指導者による史上初の首脳会談を12日に控えたシンガポールでは、世界における北朝鮮とその在外国民の立場に、注目が集まっている。トランプ米大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と、北朝鮮の核・ミサイル開発終結と引き換えに、外交や経済面での見返りを提供する可能性について議論する。

グローバルな金融・貿易ハブであるシンガポールにはかつて、北朝鮮本国に資金や燃料、物品を中継する、数十人の結束の固い同国外交官やビジネスマンのコミュニティーがあった。

シンガポールは今も北朝鮮と外交関係を保っているが、北朝鮮大使館は、歴史的なショップハウスが立ち並ぶ活気ある地区にあった3階建ての建物から、現在の目立たない場所に移転した。

「いつか彼らを見てみたい。南北朝鮮の関係は改善しているので、話をすることもできるかもしれない」と、チョイさんは話した。

ロイターは昨年以降、北朝鮮大使館を複数回訪ねているが、人がいたのは1度だけだった。ロイターは2017年2月、Ri Pyong Dok一等書記が大使館に入るところに遭遇したが、同書記はコメントの求めに応じなかった。

最近では、首脳会談の準備の進捗状況を取材しようと電話をかけたが、北朝鮮人スタッフがコメントを拒否した。

シンガポール外務省の外交官・大使館職員リストには、6月時点で、北朝鮮大使館に外交官4人とその配偶者が記されている。

<戦略的管理>

シンガポールの北朝鮮大使館の入り口。5月撮影(2018年 ロイター/Edgar Su)

「米国とその同盟国が科した制裁や圧力が、金正恩氏に対話路線に転じ、国外での首脳会談に応じる決断を促す主な動機となったのは間違いない」と、シンガポール国際問題研究所で安全保障問題などを担当するニコラス・ファン氏は言う。

北朝鮮はこれまで常に、国外在住の北朝鮮人を戦略的に管理しており、西側の考え方に「汚染」される心配がない中国やロシアなどの友好国に多くの国民を送り込んできた。

シンガポールは、北朝鮮が歴史的に自国民を置いた国の中では恐らくもっとも外交的に中立であり、北朝鮮は外交よりも貿易面の理由から人を送り込んできたと、韓国系米国人ビジネスマンで、北朝鮮ビジネスについて研修を行う非営利団体に助言するジョン・キム氏は言う。

キム氏は、この5年ほど、シンガポールで北朝鮮人と会話していないと言う。最後に話した北朝鮮人は、シンガポールには約50人の北朝鮮人が住み、主に物流などの仕事に携わっていると話したという。北朝鮮人コミュニティーの規模について、公式な統計は存在しない。

対照的に、シンガポールには約2万人の韓国人が住んでいる。

シンガポールは昨年11月、国連制裁強化に従い、北朝鮮との貿易をすべて停止した。3月には、国内に残る北朝鮮人全員の就労許可を取り消したと発表した。

シンガポールに長年暮らすある韓国人は、数年前までは、北朝鮮人グループが夕食に焼肉を楽しむため韓国レストランを訪れ、韓国人客や店員と雑談する姿も見られたと話す。

彼らはリラックスして友好的だったが、南北の対立関係を反映して、会話の中に緊張が混じることもあったという。

シンガポールで有名だった北朝鮮人といえば、金正恩氏の異母兄で、昨年クアラルンプールで暗殺された金正男(キム・ジョンナム)氏だ。

夜遊び好きの正男氏は、有名リゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」の最上階にある豪華なバーや、市内に数多くあるカラオケ店でよく酒を飲んでいたと、正男氏の友人の1人は話した。この友人は、安全上の理由で氏名の公表を拒んだ。

この友人によると、正男氏は地に足が着いた、自虐的なユーモアがある性格で、自らの家族についてもジョークにしていたという。

シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ・ホテル(奥)。4日撮影(2018年 ロイター/Edgar Su)

「私たちが、『キム、共産主義についてどう思う』と尋ねると、彼は『愛と平和一筋だ』と答えたものだ」と、この友人は振り返った。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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