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コラム:米大統領の核攻撃命令、議会は止められるか
December 2, 2017 / 12:35 AM / 11 days ago

コラム:米大統領の核攻撃命令、議会は止められるか

John Mecklin

 11月30日、昨年の大統領選出馬から候補者討論会、さらには今夏の北朝鮮に対する「炎と怒り」発言に至るまで、ドナルド・トランプ氏のように衝動的な人物が、核のボタンを押せる大統領の地位に就くことを、共和・民主両党の専門家やキャリア軍人、外交官はずっと懸念してきた。ホワイトハウスで撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

[30日 ロイター] - 昨年の大統領選出馬から候補者討論会、さらには今夏の北朝鮮に対する「炎と怒り」発言に至るまで、ドナルド・トランプ氏のように衝動的な人物が、核のボタンを押せる大統領の地位に就くことを、共和・民主両党の専門家やキャリア軍人、外交官はずっと懸念してきた。

北朝鮮が今週、米国本土の全域を射程に収める可能性のあるミサイルの発射実験を強行し、トランプ大統領が「対処する」と、最初に反応したことは、到底この不安を和らげるものではない。

「核のボタン」を巡る大統領権限について先週開催された米上院外交委員会の公聴会で、こうした懸念は1つの沸点に達した。

この公聴会は、上院外交委員長で上院共和党のボブ・コーカー議員からの要請で開かれたものだ。

来年の中間選挙で再選を目指さない方針を表明しているコーカー議員は、トランプ大統領による節度のないツイートや、公の場で行われた発言には、「第3次世界大戦に続く道」へ米国を向かわせるリスクがあると、公然と懸念を表明している。

同委員会のクリス・マーフィー上院議員(民主)もこれに呼応。「米国大統領は、あまりにも不安定で暴走しやすく、その英雄気取りの意思決定過程によって、米安全保障上の利益から大きく外れた核攻撃を命令しかねない」と公聴会で語った。

しかし、公聴会やその後の論評でも明らかになったように、トランプ大統領が正当性のない先制核攻撃を仕掛ける権限を持つことに対する懸念と、その権限に制限を設けることは、全く別の事柄だ。

大統領は、憲法によって定められた最高司令官の地位にあり、外国の脅威から国民を守ることを義務付けられている。憲法上、宣戦布告の権限は米議会に与えられている。しかし、特に米国やその同盟国が攻撃を受けたり、攻撃が迫っている場合、大統領が核のボタンを押す権利を大きく制限するような法律が合憲かどうかは明確ではない。

また、米国家安全保障会議(NSC)のメンバーだったデューク大のピーター・フィーバー教授(政治科学)が上院公聴会で指摘したように、法改正で核使用を巡る指揮系統を変更しようとすれば、米国の危機対応の迅速さについて敵国や同盟国が疑問視するなど、意図せぬ危険な結果を招く恐れがある。

ただ、少なくとも先制核攻撃については、こうした憲法と立法上のジレンマを解消する方法がある。困難なのは、それにはトランプ大統領自身の参加が必要なことだ。

最近では、マサチューセッツ州のエド・マーキー上院議員とカリフォルニア州のテッド・リュー下院議員が共同提出した「核兵器の先制使用制限」についての法案が、核のボタンがトランプ大統領の手中にあることを懸念する専門家や活動家らの支持を集めている。

これは「議会が明示的に先制核攻撃を認める宣戦布告を行った場合を除き、先制核攻撃を仕掛けること」を大統領に禁止する内容だ。理不尽な核開戦を阻止しようという、私見では尊敬に値する試みだが、この法案を提出したのが、どちらもリベラル系民主党議員で、共和党が支配する議会を通過する見込みはほぼゼロだ。

 11月29日、米大統領が外出先からも核攻撃を指令できる道具が入ったブリーフケース「核のフットボール」(右)を手に、ホワイトハウスで大統領専用ヘリに乗り込む海兵隊員(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

もし議会による効果的な行動が短期的に見込めないとすれば、両党議員や彼らが代弁する市民を安心させるために何が有効だろうか──。その答えは、トランプ氏自身が、先制核攻撃を仕掛ける自らの権限を制限する大統領令を出すことだ。

米大統領が、核のボタンを押す自らの権限を抑制することを阻むものは何もない。米国が核攻撃を受けていなかったり、または差し迫った核攻撃の脅威がない場合に、例えば軍司令官が核使用命令の合法性を確認する訓練を受けていることも含め、現行の指令系統や管理システムには、すでに大統領の核使用権限に一定の制限が設けられている。

公聴会を終えたフィーバー教授が筆者に語ったように、核使用に関する意思決定に、大統領は追加の統制を設けることができる。

「決定的に敵対的な執行府(ホワイトハウス)に対して、実際に機能する法改正を講じるのは難しいと思う。だが議会は法改正について執行府と協力し得る。執行府が自らそうした法的措置を課すように、議会の監査機能を使って提案できればなお良いだろう。やってみる価値はある」と、同教授は指摘した。

オバマ前政権がテロリストを標的とするドローン攻撃の承認に厳格なガイドラインを設定したように、例えば、トランプ政権も、大統領が命じた先制核攻撃を実行する前に、その命令が合法かつ米国の条約義務に合致しているかを特定の閣僚に判断させる仕組みを導入することができる、とフィーバー教授は語る。

例えば、大統領による先制核攻撃の命令が軍司令官に届く前に、国務・国防の両長官が署名するよう、正式に大統領令で義務付ければ、大統領の衝動的な行動に対する懸念を大いに和らげることになるだろう。北朝鮮との対立が国民の大きな関心を集めている今であれば、なおさらだ。

このような「3本のカギ」を必要にする修正は、トランプ大統領にも、大きな政治的恩恵をもたらす。ある朝、激高したトランプ氏が、怒りのツイートを発信したあと、平壌への核攻撃を命じて世界の滅亡を招くようなことは決してないと、国民や同盟国の両方を安心させることになるからだ。

このような改革が信頼を得るには、議会と軍の専門家による厳格な審査を経る必要がある。先制攻撃を命じる大統領権限が狭まる一方で、米国が攻撃されたり、攻撃が明らかに差し迫っている場合には、大統領は即座に効果的な行動が取れることを明確化しなければならない。人類の存続に関わる事柄では、ディテールが重要だ。

大統領令による修正は、当然トランプ政権以降も継承されるとは限らない。未来の大統領は、修正の撤回を決めることもできる。

だが、大統領が核のボタンを一方的に悪用する事態を防ぐ、こうした手続き上のセーフガードが賢く設定されるならば、米国や世界中の人々に歓迎され、強力な前例となるだろう。主要法案の成立に苦労している大統領にとって、こうした改革は短期的な政治的恩恵を受ける以上に、長期的な遺産となる可能性も秘めている。

トランプ大統領の性格やリーダーシップのスタイルを考慮すれば、自らの権力を制限することに同意するとは考えにくい。トランプ氏が乗り気でないなら、核のボタンについて彼の後継者が別の考えを持つよう、どうすれば説得できるかを考えるべき時が来ている。

*筆者は「原子科学者会報」の編集責任者。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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