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米雇用統計:識者はこうみる
September 2, 2016 / 3:12 PM / a year ago

米雇用統計:識者はこうみる

[2日 ロイター] - 米労働省が発表した8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが15万1000人と、市場予想の18万人に届かなかった。市場関係者のコメントは以下の通り。

9月2日、8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が15万1000人増と、市場予想を下回る伸びにとどまった。写真は2013年6月、ワシントンで開催された就職フェアで撮影(2016年 ロイター/Jonathan Ernst/File Photo)

●FRBの利上げ傾斜、ドル買い反応は短命に

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

為替市場はフィッシャーFRB副議長の「利上げ促進発言」を手掛かりにドル高が進行。ISM製造業指数の50割れでいったんは伸び悩んだが、予想を下回る米雇用統計の内容を受けても足元3カ月で非農業部門雇用者数を均して数字を上げて、FRB当局者の意に沿うように12月利上げに望みをつないで104円台をつけた。

FRBの利上げ騒ぎは、日欧のマイナス金利政策が奏功していないことを目の当たりにして、政策金利のバッファーを造っておかないと、次の景気失速の際に米国自身がマイナス金利に追い込まれることを回避したいとの焦燥感の裏返しのようにみえる。

また、昨年8月の上海株急落で昨年9月の利上げを見送り、英国民投票を控えて6月利上げを見送った経緯もあり、現時点でも近い将来を見据えても必要のない利上げであっても、今回は11月の大統領選というノイズの前に駆け込みたいとの焦りもありそうだ。

他方、イエレン議長は6月のFOMC後の記者会見の際にも「政策の道筋はあらか

じめ決まっているわけではない」、「決定は会合ごとに下している(live meeting)」と政策決定はdone dealではないことを示している。

FRB当局者の利上げ傾斜はそうした見識とは別次元のものになっていると言えるだろう。つまりは経済の良し悪しとは別次元の利上げ根拠ということになる。

為替市場は、当局者の言にしたがって、これまでのところは利上げを織り込んだド

ル買いを進めている。

ただ、ドル指数の上昇は、米国が外需を放棄することと同義であり、利上げは米国経済にとって足枷(あしかせ)となり、利上げによって経済を腰折れさせるリスクを高める。総括的に判断すれば、為替市場がFRBに伴走するのも程度問題となり、ドル高も早晩に飽きられるとみている。9月利上げはなしと見ているが、その場合に飽きやすい為替市場が12月のFOMCまで今の利上げ発言を材料にしたドル買いを続けるとは考えにくい。

対照的に、米長期金利はFRBの利上げ連呼にも関わらず、その織り込みに逡巡し

債券売りに二の足を踏んでいる。これは米国経済が実際に利上げを必要とする状況にあるか否か、FRB関係者の発言に確証が持てないためだと考えられる。

9月の米FOMCまでの予想レンジ:100―105円前半。

●9月米利上げ捨てきれず、目先の日本株は上昇余地限定

<SMBCフレンド証券 チーフストラテジスト 松野利彦氏>

8月米雇用統計の非農業部門雇用者数の伸びは市場予想を下回ったが、6─8月の3カ月平均では23万2000人増。この数字となれば、9月の米利上げの可能性は捨てきれない。米金利が上昇し、ドル高/円安の反応も出ている。20─21日の日米金融政策イベント前まで、米利上げや日銀の金融緩和期待が膨らむ形となりやすい。

円安を背景に、日経平均は1万7500円を目指す形となるとみているが、この水準では予想PER(株価収益率)が15倍台に近づくこととなる。以前の日本株と比べれば、バリュエーション面では結構なところまで上昇する。

3カ月ぶりに日経平均は1万7000円台を回復したものの、6月初めごろの為替の水準は1ドル110円近辺。今後1ドル110円台まで円安が進むという展開が想定に入っているとの解釈も可能だが、そこまで行けるのかという感もある。日銀によるETF(上場投信)の大量買いも、この状況では見込みにくい。

●9月利上げなし、際立って強くない

<プルデンシャル・フィナンシャル(ニュージャージー州)の市場ストラテジスト、クインシー・クロズビー氏>

雇用統計を受け、株式先物は上昇、ドル安が進み、金は値上がりしており、市場は9月利上げがないとの見方を織り込んでいるようだ。統計内容は底堅く、今後上方修正される可能性もあるが、米連邦準備理事会(FRB)に9月利上げを迫るほどの際立った強さが欠けている。

●FRBは厄介な状況に直面

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏>

統計は強弱まちまちの内容となり、米連邦準備理事会(FRB)は厄介な状況に直面することになるだろう。9月の利上げを正当化するほど力強い内容ではなかった。だが、長期間の低金利維持による意図せぬ悪影響や余波を踏まえ、FRB内で今後、金利の道筋をめぐる議論が白熱する可能性がある。

●9月利上げの可能性残る、物価統計に注目

<シチズンズ銀(ボストン)のグローバル・マーケッツ部部長、トニー・ベディキアン氏>

雇用者数の伸びは予想をやや下回ったものの、依然として15万人程度の雇用創出を確保しており、米連邦準備理事会(FRB)はこのことを前向きを受け止めるのではないか。過去2カ月分の修正は差し引きほぼ変わらずだったが、8月分に関しては、FRBも認識している通り、雇用者数は歴史的に7万人程度上方修正される公算が非常に大きい。したがって、全体的にみれば今回の数字はかなり前向きといえる。

9月利上げの可能性についてはまだあると考える。雇用の全般的なすう勢は引き続き前向きである上、今月下旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)までにインフレ統計も出揃う。消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)に一定の伸びが認められれば、FRBは利上げに踏み切る可能性がある。今回の統計だけでFRBが目先判断を変えることにはならないとおもう。

●賃金の伸び非常に控えめ、利上げ迫らず

<HSBC証券(ニューヨーク)の首席米国エコノミスト、ケビン・ローガン氏>

賃金の伸びが非常に控えめな点が重要だ。労働市場がひっ迫すれば賃金は上昇し、インフレ圧力が強まるというのが理屈だが、実際こうした状況は確認されていない。したがって今回の統計は米連邦準備理事会(FRB)に利上げを迫るものではない。

●3カ月平均の伸び底堅い、利上げ12月か来年初め

<ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティチュートの株式戦略グローバル共同責任者、ショーン・リンチ氏>

雇用者数の伸びが20万人を超える大幅増ではなかたっため、特に株式市場には安堵感が広がっている。過去3カ月の伸び平均が23万人超であることを踏まえると、15万1000人という数字は良い数字だ。

株式市場は(年内)少なくとも1回の利上げは許容できる。だが一連の利上げが今後早い段階で実施されると想定し始めれば、市場では警戒が高まるだろう。だが15万人の水準では、こうした可能性は高まらない。

ここ数週間に米連邦準備理事会(FRB)から発せされたシグナルの一部はかなりまちまちだったため、9月利上げが消えたかはわからない。だが利上げはおそらく12月か来年初めだと見ている。

●米9月利上げの可能性50%以上、ドル/円は底堅い

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>

2日発表の8月米雇用統計を受け、ドル/円は初期反応でいったん円高方向に振れたが、年内の利上げ観測が維持される内容だったこと、株式市場が早期利上げ期待の後退を好意的にとらえたことなどで、二次反応はドル高/円安となった。結果的に、株式市場や債券市場の関係者がいいところ取りの解釈ができる内容だった。

米連邦公開市場委員会(FOMC)主流派メンバーのダドリー米ニューヨーク地区連銀総裁、フィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長、イエレンFRB議長が、利上げに含みがある発言をしていたことを踏まえると、9月20─21日のFOMCで利上げする可能性が50%以上の確率まで高まったとみている。

FOMCと同時期に行われる9月の日銀決定会合は、金融政策の「総括的な検証」の結果として、物価目標達成時期の中長期化や国債買入額の柔軟化、必要に応じた緩和の拡充など、今後の金融政策の方針を示すだろう。9月会合では政策変更の予告にとどめて市場の地ならしを行い、それ以降、9月に示した方針にのっとって淡々と実施していくと予想する。

ただ、9月のFOMC、日銀決定会合のいずれもどのような政策決定がなされるか不透明感がある。ドル/円は、それまで下値の堅さと上値の重さが共存し、101.50─105.50円のレンジで方向感をつかみにくい相場となりそうだ。

*内容を追加して再送します。

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