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コラム

コラム:「史上最高齢」の争い、米大統領にも定年制導入を

[チューリヒ 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国民は間もなく、史上最高齢の大統領候補2人のうちどちらかを選ばなければならない。もし民主党のバイデン前副大統領が勝利すれば大統領就任時は78歳で、フランクリン・D・ルーズベルト以降の歴代民主党大統領の平均年齢を28歳も上回る。そして実はバイデン氏は、私の父親の年齢に達することになる。

10月16日、米国民は間もなく、史上最高齢の大統領候補2人のうちどちらかを選ばなければならない。写真は9月、オハイオ州クリーブランドで開かれた大統領候補討論会に参加するトランプ米大統領(左)とバイデン前副大統領(2020年 ロイター/Brian Snyder)

私の父は今でも数多くのことをこなせる。ハムレットの重要な幾つかの節を暗唱できるし、雨戸の修理もお手の物だ。引退後に暮らしているマサチューセッツ州ケープコッドの自宅ではさまざまな木材加工にいそしんでいる。恐らく六分儀だけでナンタケット海峡を船で通過することも可能だろう。だが私は彼をとても愛しているので、世界で最も過酷な仕事である米大統領になってほしいとは思わない。

実際、78歳の父は例えば58歳の時ほどの活力はないし、運転能力も身体的な強さも低下している上に、新型コロナウイルス感染症を含めて病気にかかりやすい。バイデン氏でも事情は同じだろう。トランプ大統領はバイデン氏より4歳若いとはいえ、個人的にも新型コロナ感染と格闘中で、普段以上に言動に一貫性がないように見える。

これら全ての点から、自由世界の指導者になるにはあまりに年老いていると言えるのは一体何歳からなのかという疑問が出てくる。合衆国憲法には、大統領の最低資格年齢を35歳とする規定しかない。これは単に憲法制定に関わった人々の当時の平均年齢から10歳引いただけのことだ。当時の平均寿命とひどくかけ離れてもいない。ただ、身体的・精神的な能力が衰える年齢で大統領に出馬する人はいないという暗黙の前提は存在すると思う。独立宣言を起草した建国の父たちが、将来の世代は憲法規定を常識と分別をもって運用してくれると信じていた事実は、肝に銘じる必要がある。

一方米国企業はトップの年齢問題を成り行き任せにはしていない。もちろん企業は政府ではないが、非常に複雑な組織であり、多数の組織構成員を満足させる使命を帯びているという意味では共通項がある。企業トップは政治指導者のモデルに使われる例もしばしば見られる。2016年の大統領選では、トランプ氏がビジネスでの「成功」を打ち出して当選を果たした。もっとも彼の企業は株式非公開で、家族経営式だったのだが。

そこでトップに定年制度を設ける問題では、企業が政府に格好の事例を提供してくれるかもしれない。S&P総合500種企業のおよそ4分の3は、内規でおおむね65歳前後をトップの定年と定めている。スペンサー・スチュアートによると、取締役の定年は72歳当たりとずっと上ではあるが、同じ割合の企業が定めている。

結果として米企業の最高経営責任者(CEO)の平均年齢は、現在の大統領候補よりかなり低く、上院議員の平均年齢をもやや下回る。コンファレンスボードの調査に基づくと、17年の平均は58歳超。09年平均からは2歳ほど切り上がった。またこの間にS&P総合500種企業の約1割でCEOが交代したが、60歳以上での交代はわずか6社だった。

当然ながら、高齢者がCEO、あるいは政治家として全く能力を発揮できないということを言いたいわけではない。この夏に90代に入ったウォーレン・バフェット氏は引き続きバークシャー・ハサウェイBRKa.Nを率いて、世界の富豪トップ5に君臨している。87歳のシェルドン・アデルソン氏は、ラスベガス・サンズLVS.Nの会長兼CEOとして世界に名をとどろかせている。

しかし2015年に発表された少なくとも1つの研究は、企業のパフォーマンスとトップの年齢には負の相関関係があることを示している。ミシシッピ州立大のブランドン・クライン教授とミズーリ大のアダム・ヨア教授がCEOの定年制がもたらすメリットについて2134社の1万2610の事例を調査したところ、CEOの定年制を設けていない企業でのみ、トップの年齢が企業価値、業績、M&A活動などに重大なマイナスの影響を及ぼすとの考察結果が出た。ここから定年制が、高齢CEOによる企業の不振を最小限に食い止める効果的なガバナンスの方法だという結論が導き出されたという。

クライン氏が先週打ち明けたところによると、自身とヨア氏は当初、1人のCEOが長らくその座にとどまれば権力が強大化しやすく、これを阻止する手段になり得るものとして企業定年制導入を仮定した。さしずめゼネラル・エレクトリックGE.Nのかつてのジャック・ウェルチ氏のようなケースを想定したという。

ところが現実は違い、定年の問題は企業パフォーマンスとの相関がより見いだされたというのだ。つまりCEOの年齢が高いほど総資産利益率(ROA)が低い傾向となり、42歳以下と68歳以上を比べると、年間で最大155ベーシスポイントの差が開いたという。

その理由の1つは、高齢の企業トップは合併や合弁、資産売却、資本増強といった活動に消極的なきらいがあるからだとクライン氏は指摘する。これは純粋に生物学的な衰えがあるかもしれないという。今回の論文は他の先行研究も踏まえ、高齢化に伴う認知機能面での神経生理学的な変化のため、CEOの年齢が企業価値を下げるという仮説を提起している。

話を大統領選に戻すと、企業と政府が同じでないことは前に述べた通りだ。大統領を選ぶ仕組みも、比較的少数の候補から起用されるCEOの交代とは、根本的に異なる。だが6兆6000億ドル(約700兆円)もの連邦予算を運営し、治安や国防、教育、医療、税制など幾つもの分野で同時多発的に起きる複雑な問題を処理していく仕事は、異例なほどのはつらつとした指導力を必要とするのは間違いないのではないか。

ビジネス界は総じて、より若いトップの方が経営の舵取りを任せる上で適切だとの結論に達している。だから高齢者2人の大統領選をきっかけに、米国の指導者にも年齢制限を設けるべきだと論じる価値はあるだろう。少なくとも私は、父が私にコーヒーテーブルを作れるとしても、決して大統領候補にはならないことは分かっている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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