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コラム

コラム:米金利上昇で欧州に失速リスク、対応迫られるECB

[ロンドン 24日 ロイター] - 米国の金利がくしゃみをすれば、欧州が風邪をひく。バイデン米政権の大規模財政支出方針がインフレをもたらすのではないかという市場の不安が米国債利回りを押し上げ、ドルの価値を損なっている。これがユーロ高と、相対的な実質借り入れ金利の高まりという形で、欧州の景気回復を窒息させる恐れが出てきた。

 2月24日、米国の金利がくしゃみをすれば、欧州が風邪をひく。写真は2020年1月、フランクフルトのECB本部で撮影(2021年 ロイター/Ralph Orlowski)

市場は、欧州では米国に匹敵するほどの大型の追加財政出動がなさそうだとして、利回り上昇が景気に及ぼす悪影響を和らげるため、欧州中央銀行(ECB)がさらなる債券買い入れを迫られるかもしれないと考えている。

ECBのラガルド総裁は22日、長期債利回りの動向を「注視している」と述べ、早速、けん制球を繰り出した。しかしこの「口先介入」は名目利回りを一時的、さらには、わずかに抑え込んだだけで、ドイツ国債の物価調整後の実質利回りは23日に4カ月ぶりの高水準を記録した。

重要なのは、インフレ期待の違いを背景に、欧州の実質利回り上昇ペースが米国を上回っている点にある。これはECBの悩みを深めるし、実際、ユーロ圏にとっては少なくともユーロ高/ドル安が再び進行するという意味で、経済的にプラスには働かない。

アクサ・インベストメント・マネジャーズのグループ・チーフエコノミスト、ギレス・モエク氏は今週、「ユーロ圏の実質利回り上昇は問題がより深刻だ」述べた。モエク氏の見立てでは、これは具体的な対応が必要となるが、ECBのパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を断固たる姿勢で拡大することで解決できる。現在のPEPPの買い入れ枠は1兆8500億ユーロだ。

<本当の有害要素>

ECBの調査担当者は先月になってようやく、米金利のボラティリティーが大きくなるとユーロ圏を含む世界経済が貿易や金融を通じ、どのような打撃を受けるかの大まかな分析結果を示した。それによると、米金利のボラティリティーが想定外に変化すると、他国経済に「非常に同調的な形で」波紋が広がっていくという。

実際に米国債の代表的なボラティリティー指標であるMOVE指数は過去1カ月で約50%跳ね上がっており、既にその衝撃が感じられる。

だが経済にとって本当に有害なのは、実質金利上昇だろう。

米国では今月になって債券利回りが高騰し、特に10年国債利回りは40ベーシスポイント(bp)上がって1.4%前後に到達。物価連動国債が示唆する予想物価上昇率は2.2%超と、2014年以降で最も高まった。ただ米連邦準備理事会(FRB)がこれを受けて短期資金供給を幾らか絞るのではないか、引き締めの検討さえ始めるのではないかと市場が考え始めたため、米長期債の実質利回りも上がり始めた。

金融引き締めの影がわずかにちらついただけで、その影響はすぐに世界中の市場に波及した。米株式市場でも最も低金利のメリットを享受して高値で推移していたハイテクやインターネット株が、大きく値下がりした。

本来ならこうした米実質利回り上昇はドルを押し上げ、ドルへの依存度がより大きい新興国ほどでないにしても、欧州もユーロ安を通じて、経済への悪影響がある程度緩和されるはずだ。

ところが厄介なことに今回、欧州の実質利回り上昇の方が米国よりも急速に進んでおり、ドルの実質利回りベースのプレミアムが縮小するとともに、ユーロが再びドルに対して値上がりし始めた。

<抜本的対策>

例えば、期間10年の実質利回りで見た米国債のドイツ国債に対する利回りプレミアムは今年52bp前後まで拡大する場面があったものの、足元では10bpにすぎない。

クレディ・スイスが指摘するように、より為替レートが敏感に反応する短期ゾーンの動きはもっと劇的だ。期間2年の実質利回りは米国債がドイツ国債をおよそ40bpほど下回っており、14年以降で最大のディスカウント幅となっている。言い換えると、米国発の利回り上昇は欧州に及んでいるが、一方で欧州では米国のようなインフレ期待は発生していない。

実際、ユーロ圏の物価上昇率が予見可能な将来に2%に届くと予想する向きはほとんど存在せず、5年先の向こう5年のインフレーションスワップで見た米国の予想物価上昇率は2.3%と、ユーロ圏を100bp前後上回っている。

ウニクレディトのチーフエコノミスト、エリック・ニールセン氏は「ユーロ圏国債利回りが今後数週間上昇し続けるなら、ECBとしては望ましくない金融環境の引き締まりを解消するためにPEPPの債券買い入れを強化するしか手だてはなくなる」と話す。

ユーロ圏が長期の実質利回り上昇とユーロ高というダブルパンチに見舞われている以上、もはや小手先だけでない政策が必要になるのではないか。

一部の専門家にとって、それは金融政策運営でインフレの許容度を広げ、物価目標について固定した水準ではなく移動平均式に変更するようECBに求める圧力が強まることを意味する。

モルガン・スタンレーの経済アドバイザー、レザ・モガダム氏は「ECBにとっての危険は、FRBが提起した課題に立ち向かうのに十分なほど自分たちの物価目標の枠組みを修正しない場合、ECBが先天的にタカ派体質の染みついた組織だと見なされるようになることだ」と述べた。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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