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コラム:米国家安全保障会議、最大の課題はトランプ氏自身か
2017年4月2日 / 08:18 / 7ヶ月後

コラム:米国家安全保障会議、最大の課題はトランプ氏自身か

[30日 ロイター] - 政府の委員会が歴史を左右することはめったにないが、国家安全保障会議(NSC)は例外だ。大統領にとっての取締役会に相当し、独自のスタッフを抱えるNSCは、国家安全保障政策の策定や監督に携わっている。

 3月30日、政府の委員会が歴史を左右することはめったにないが、国家安全保障会議(NSC)は例外だ。大統領にとっての取締役会に相当し、独自のスタッフを抱えるNSCは、国家安全保障政策の策定や監督に携わっている。写真はトランプ米大統領(右)と握手する国家安全保障担当のマクマスター大統領補佐官。2月、フロリダで撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

北朝鮮に対する最善対応の決定からロシア台頭への対処に至るまで、NSCがいま取り組んでいる広範囲のテーマを見れば、この機関の重要性と、その課題の重さが分かる。

トランプ政権下でNSCの指揮を執るのは、新たに国家安全保障担当大統領補佐官に任命されたH・R・マクマスター中将だ。軍出身の研究者として敬意を集めるマクマスター氏には、曲芸的な手腕が求められる。

10を越える省庁からNSCに上がってくる政策提案を導き、議論が袋小路に陥らないように配慮し、大統領執務室ではNSCの決定を推進する。どれについても、大統領が外交、経済、国防の点で何を政策目標としているか目配りが必要だ。

これまでの報道からは、マクマスター氏はNSC内に独自色を持ち込もうとしているように見える。彼は2つの次席補佐官職を廃止したが、NSC内の上位グループである定員9人の「主要閣僚」委員会に、国家情報長官と統合参謀本部議長を復帰させたいと考えていると伝えられる。トランプ氏は大統領令によりこの2つの役職をNSCの会合から外し、代わりにスティーブ・バノン大統領上級顧問を加えている。

だが、こうした変更を加えても、マクマスター氏にとっての最大の問題は解決しない。秩序とはおよそ縁遠い大統領のもとで、秩序あるNSCを運営するという課題だ。歴代の国家安全保障担当補佐官と同様に、マクマスター氏は大統領との個人的な絆・信頼関係を構築しなければならない。だが、彼がトランプ氏に影響を与えられるかどうかは、なお未知数だ。

冷戦時代の起源から現在NSCが直面している政策策定上の課題に至るまで、NSCの歴史を顧みれば、マクマスター氏がホワイトハウスにおける自らの立場を築く際に考慮すべき教訓がいくつか得られる。

NSCは必然的に、大統領とその政治スタイルを反映する。

過去の歴史から考える限り、トランプ政権下のNSCは、トランプ大統領の色に染まることになるだろう。

アイゼンハワー大統領はNSCに大きな責任を与えたが、これは同大統領が第2次世界大戦中に連合国軍最高司令官を務め、権限を委譲し、対立する同盟国をまとめて重要な意志決定を下していた経験を反映している。アイゼンハワー大統領は「主要閣僚」委員会を小人数に留めたが、NSCの規模は拡大した。

ケネディ大統領政権下のNSCは、アイゼンハワー政権下とは違った。ケネディ大統領は自らの現場優先のスタイルに合ったスリムな参謀組織を好み、NSCを縮小した。ジョンソン大統領のもとではまた風向きが変わり、外交や政策の細部に関心の薄かったジョンソン大統領は、ほぼNSCを無視するようになった。

重要なのは人間関係だ。

マクマスター氏は、諸々の問題と官僚機構を動かすコツに長けた人材をNSCに揃える必要があるが、さらに重要なのは、ティラーソン国務長官やマティス国防長官といった「主要閣僚」との関係である。こうした関係がギクシャクした場合に何が起きるか、歴代のいくつかの政権に前例が見られる。

カーター大統領のもとで、ズビグネフ・ブレジンスキー補佐官(国家安全保障担当)はソ連に対して強硬な政策を主張していた。対ソ関係をめぐるバンス国務長官との意見不一致は公然たる対立へと発展し、国内外での政権のイメージを損なった。

またライス首席補佐官は、ジョージ・W・ブッシュ大統領とうまくいっていたにもかかわらず、別方面との戦いを余儀なくされた。

チェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官が彼女に抵抗し、その立場を揺るがせたのである。チェイニー副大統領は対テロ強硬派であり、9.11同時多発攻撃以降、テロ容疑者の扱いその他の問題をめぐってライス補佐官と衝突した。ライス氏は回想録のなかで、ラムズフェルド氏とほぼひっきりなしに対立していたと回顧している。ラムズフェルド氏は退任後も態度を和らげず、ライス氏を「学者」と批判している。

しかし、国家安全保障担当補佐官は、「主要閣僚」に対して脇役に甘んじるわけにはいかない。

マクマスター氏は国家安全保障全般について大統領の右腕となるはずだ。だが、トランプ大統領が得意とする人騒がせなマネジメント手法、身内で固めた側近、彼自身の往々にして気まぐれな行動を考えれば、マクマスター氏の立場はあまり確実とは言えない。彼の前任者たちも同じような立場にあった。

議会政治の信奉者だったレーガン大統領は、NSCの位置付けを低下させ、主要閣僚に政策の策定や管理を委ねた。彼は政権2期で6人と、次々に国家安全保障担当補佐官を交代させた。実質的にどの補佐官も、シュルツ国務長官やワインバーガー国防長官といった強力な人物の脇役に甘んじた。だが、こうした有力者の意見の相違をまとめる剛腕の補佐官がいなかったため、特に中東情勢や軍縮をめぐる彼らの政策論争によって、政権は身動きが取れなくなってしまった。

レーガン大統領は、イラン・コントラ事件のスキャンダルによって国家安全保障政策の策定が混乱していることが明らかになり、事態を直視せざるをえなくなった。スキャンダルの後、NSCを検証するために任命された「タワー委員会」は、大統領と国家安全保障担当補佐官との関係を批判し、NSCと、これに参加する主要閣僚に対する大統領の指揮権を強めるよう求めた。

これほどの大問題はないにせよ、マクマスター氏は大きな障害に直面している。何よりも、大きいのが、トランプ氏の側近との競争である。トランプ氏の娘婿であるジャレド・クシュナー氏やバノン氏の信奉者数名によって新たに設立されたチームである「戦略イニシアチブグループ」は、NSCの領分を侵食しつつある。

さらにクシュナー氏は20数カ国もの首脳と大統領執務室の連絡役となっており、外国からトランプ大統領に接触する窓口としてのマクマスター氏の立場が危うくなっている。

マクマスター氏にとって政策策定における重要な支援者となるべき主要閣僚のもとには、次官・次官補といった必要な人材が揃っていない。こうした多数のポストが空席のままでは、特に国務長官、国防長官、国土安全保障長官がNSCにおける協議に参加しようとしても、待ち受けるさまざまな問題や決定事項を処理する体制が整わない。

もちろん、マクマスター氏が実力のあるNSCを構築できる可能性は残っている。イラン・コントラ事件の後で国家安全保障担当補佐官に就任したフランク・カールッチ氏とパウエル氏は、レーガン政権下のNSCを改革し、会議の意志決定を効率化した。それにマクマスター氏のもとには、推定400名の職員を含め、任務を果たすための豊富なリソースがある。

だが、現在のホワイトハウスによる国家安全保障政策の特徴とも言える混沌のなかから、マクマスター氏が秩序を構築するためには、大統領の支援が必要だ。つまり、マクマスター氏にとって最大の課題は、トランプ大統領その人なのである。

*筆者は元CIA上級アナリスト。東アジア担当国家情報責任者や、アジア拠点主任、CIA広報部長を歴任。

本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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