[ニューヨーク 2日 ロイター] - 過去9年近くの間、世界中で利回りを求める人々がたどり着く場所といえば米国株だった。その米国株は2日に2016年9月以降で最大の下落率を記録した。
背景には、1月雇用統計で賃金の伸びが09年以降で最大になったことを受けてインフレ懸念が広がり、米国債利回りが跳ね上がったことがある。
金融危機後の主要中銀による超低金利政策と大規模な国債買い入れによる債券の品薄化で、あらゆる層の投資家は株式に目を向けざるを得なくなっていた。しかし数カ月にわたってひそかに進行していた米金利の上昇が先週突如スポットライトを浴びると、投資家は新しい現実、つまり株式はもはや利回り追求のための唯一の投資先ではないことを、改めて認識したのだ。
ジョーンズ・トレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は「強気相場局面で繰り返し唱えられていたキーワードの1つは、株式は債券に比べて安価だということだった。(しかし)特に今の株高局面では、債券はどんどん割安化しつつある。だから市場参加者は利益確定に動いており、恐らくそうすべきなのだろう」と述べた。
実際、米10年債利回りが今年中に11年以降で初めて3.5%まで達するような勢いになってきたことで、利回り重視の投資家にとって魅力が高まり始めた。
一方、トムソン・ロイターの分析では、S&P総合500種の益回りは5.5%と、長期的なすう勢の約6.7%よりも低い。国債利回りの上昇が続いているだけに、株価の投資上の優位性は薄らぎ出しているというわけだ。
BMOグローバル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、マイク・ダウドール氏は「株式と債券の有利不利が逆転したわけではないが、10年債利回りが3%近くなって相当妙味があるように見えてきた」と話した。
これまでの米国株は、金利上昇の悪影響をほとんど受けてこなかった。昨年のS&P総合500種は20%近く上がり、16年初め以降で10%ないしそれ以上の下落は起きていない。押し目があればことごとく買い場とされてきた。
しかし2日には、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの「ブル・ベア指標」がついに米国株の「売り」シグナルを発した。この指標は、02年からの11回の株価調整局面すべて正確に予測したという実績がある。
トランプ大統領は就任以来、株高は自身の経済政策がうまくいっている証拠だと自慢してきただけに、秋の中間選挙を前に株価が調整するようなら、同氏や与党・共和党は政治的に厳しい立場に置かれかねない。
米国株の中では、金利敏感セクターが今年の下げを主導している。S&P総合500種の不動産株は年初来で3.7%、公益株は同4.6%下落した。
逆に賃金上昇がもたらすインフレで値動きが好調になる傾向がある一般消費財株は年初来で8%上昇。ファンドマネジャーによると、ハイテクや金融といった他の成長株も、物価上振れや税制改革を追い風に値上がりを続けると期待している。
ウェルズ・ファーゴ・ファンズのシニア・ポートフォリオマネジャー、マーガレット・パテル氏は「経済成長と賃金が加速しつつあるので、成長株セクターは引き続き投資すべき対象になる。たとえ米長期金利が3%であっても、今まではこれらのセクターの堅調な値動きの妨げにはなってこなかった」と指摘した。
(David Randall記者)
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