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コラム

コラム:意義失った米の対中制裁関税、インフレがとどめの一撃に

[ワシントン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ついにインフレから、何か良いことが生まれるかもしれない。バイデン米大統領は近く、トランプ前政権が中国に適用した総額3500億ドルの制裁関税の少なくとも一部を撤廃する見通しだ。

 7月5日、 ついにインフレから、何か良いことが生まれるかもしれない。写真は米国と中国の旗。ボストンで2021年11月撮影(2022年 ロイター/Brian Snyder)

制裁関税は消費者にとって有害だというのが現政権の見方だが、そもそも関税では中国の態度を変えられなかったというのが、より大きな理由だろう。

制裁関税を立案したのは、バイデン氏ではない。知的財産権の侵害など中国の不公正な振る舞いを罰しようとしたトランプ氏の手によるものだ。

しかし、バイデン氏は制裁関税をこれほど長期にわたって放置するというミスを犯した。

中国は当初、2年間で2000億ドル相当を米国から追加で輸入し、実質的に政策を変更することに合意していた。だが、こうした約束は守られなかった。ピーターソン国際経済研究所によると、中国は米国からの追加輸入をいっさい実施していない。

40年来の高い伸びとなった物価上昇率が、物事を見直す契機になった。米シンクタンクのアメリカン・アクション・フォーラムの試算によると、玩具、塗料、石鹸などの追加関税で米消費者は年間約500億ドルもの負担を強いられている。

そのためバイデン氏など政権チームは、早ければ今週中にも対中制裁関税の一部を撤廃する方向で検討している、と米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じた。

ピーターソン研究所は、制裁関税が全廃されれば消費者物価指数(CPI)が1%ポイント押し下げられると推計している。5月CPIの前年比上昇率は8.6%だった。

不測の事態によって、制裁関税はすでに意味を失っていた。新型コロナウイルスのパンデミックと個人消費の高まりで、米国の2021年の対中貿易赤字は前年比15%増加し、今年に入っても拡大している。

しかし、中国は米政界では数少ない、超党派で標的にできる存在であり、制裁関税は依然として政治的に価値がある。WSJ紙によると、バイデン政権は産業用機械に対して別の輸入関税引き上げを検討しており、ハイテク製品も対象となる可能性がある。

バイデン氏にとっては、中国に対して弱腰だと受け取られるリスクがあり、特に大統領選で支持獲得を働きかけた労組からこうした批判を浴びる恐れがある。

また、政府の補助金など中国の不公正な通商慣行は問題でもある。だが、制裁関税は的外れだ。対中制裁関税はそもそも余命わずかで、インフレはとどめの一撃に過ぎない。

●背景となるニュース

*中国の商務省によると、中国の劉鶴副首相とイエレン米財務長官は5日、オンラインで会談し、米国の対中制裁関税を巡り意見を交わした。バイデン政権はトランプ前政権が約3500億ドル相当の中国製品に適用した制裁関税の少なくとも一部を撤廃する方向で検討を進めている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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