June 10, 2019 / 6:46 AM / 6 months ago

コラム:関税振りかざすトランプ氏が生み出す厄介な事態

[サンフランシスコ 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領の対外政策がテレビのリアリティー番組だとすれば、不法移民問題を巡ってメキシコに関税を課す方針を見送ったのは、1つのエピソード(回)の終わり方としては実にひどい内容であると同時に、今後のもっと非生産的な場面へとつながる伏線の性格を帯びている。

 6月9日、トランプ米大統領の対外政策がテレビのリアリティー番組だとすれば、不法移民問題を巡ってメキシコに関税を課す方針を見送ったのは、1つのエピソード(回)の終わり方としては実にひどい内容であると同時に、今後のもっと非生産的な場面へとつながる伏線の性格を帯びている。写真はアイルランドで7日撮影(2019年 ロイター/Carlos Barria)

トランプ氏は7日、メキシコからの全輸入品に5%の関税を導入する計画を無期限で停止すると表明した。その代わり、メキシコは中米諸国からの移民流入を阻止するために治安部隊を派遣するとしている。

一見するとトランプ氏の勝利に見えるが、実際はそうではないかもしれない。ニューヨーク・タイムズ紙によるとメキシコ政府は3月には、国境に部隊を送ると約束していたし、米国への難民申請者を手続き中にメキシコに送還・待機させる案は、1月に米国土安全保障省が打ち出していたからだ。

それでも表面上は、今回の出来事は関税が非貿易問題の解決にも使えるとの考えを補強してくれる。先月、トランプ氏がメキシコ向け関税をちらつかせると、米国がメキシコ、カナダと結んだ新たな自由貿易協定が危うくなるとの見方も加わり、世界的な株安をもたらした。トランプ氏は以前、米国人牧師を拘束したトルコに対して鉄鋼関税を2倍に引き上げ、2カ月後にこの牧師が解放されたケースもあった。

ただこうしたやり方は、政治的な目的を達成することを意図する経済制裁と、貿易圏内の拡大・強化という狙いのおぼつかない境界線をあいまいにしてしまう。メキシコ向け関税を取り下げた事態を、中国の視点から考えてみよう。トランプ氏は今月下旬、中国の習近平国家主席と会談し、制裁関税撤廃を議論するとみられる。ところが習氏がもし、南シナ海の軍事的緊張や北朝鮮問題での意見対立などを理由に関税が復活してもおかしくないと思えば、米中合意はより難しくなるし、合意してもその信頼性は低下する。

米政府の輸入自動車関税発動を避けようと交渉を続けている欧州連合(EU)の例も、もう1つの参考になる。米国はこれと別に、欧州側に北大西洋条約機構(NATO)の防衛費負担増を迫っている。自動車関税の合意が成立したとしても、その後NATO問題がうまくいかなかった場合に自動車関税が蒸し返される可能性があるなら、果たして最初の合意に意味があるのだろうか。

せっかく関税を回避できたメキシコさえ、すぐにまた試練に見舞われかねない。5月にメキシコから米国に入ろうとして拘束された人は13万2000人と2007年以降で最高を記録した。この人数が減らないとすれば、関税が再び発動される恐れはある。市場は、貿易戦争が長引き、しかもそれが全て筋書きのないドラマだという最悪の組み合わせに直面している。

●背景となるニュース

・米国とメキシコは7日、不法移民対策で合意した。メキシコが米国への移民流入対策強化を約束し、トランプ大統領はメキシコからの全輸入品に5%の関税を課す計画を停止した。関税は10日に発動される予定だった。

・メキシコはグアテマラとの国境に治安部隊を派遣し、数十万人に上る可能性がある米国への難民申請希望者数を、手続き期間中メキシコで待機させる。

・メキシコは「安全な第三国」指定は受け入れなかった。この指定を受けると、中米諸国からの難民を米国でなくメキシコが受け入れることになる。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below