May 29, 2019 / 10:00 AM / 20 days ago

米為替報告書要旨(2019年5月)

[28日 ロイター] - <エグゼクティブサマリー>

 5月28日、米財務省は半期に1度の為替報告書を公表した。写真はワシントンにある同省の建物。2008年9月撮影(2019年 ロイター/Jim Bourg)

2018年下期の世界経済は、米国の成長が堅調であったにもかかわらず、中国とユーロ圏の景気減速により鈍化した。より最近のデータによると、世界経済の減速は2019年初頭も続き、世界経済のいくつかの主要地域で成長の鈍化の兆候が見られた。この弱さの少なくとも一部は一時的なものであると考えるに足る十分な理由がある。米国では、強固な基礎的ファンダメンタルズが今後も堅調な成長を持続する可能性が高く、中国の成長は最近実施された支援策を背景に安定しているように見える。しかし、主要経済国は、信頼を高め、短期的及び中期的な成長の両方を高める政策を積極的に追求すべきだ。

トランプ政権は、米国の労働者と企業の繁栄、生産性の向上、実質的な平均所得の増加を支援することに重点を置いている。米税制の30年ぶりの大幅改革を受けて、米国では2018年に企業の投資と生産性が顕著に加速した。3月に発表された大統領の2020年度予算は、歳出削減を通じて中期的な米財政赤字を削減することを目指している。政権の提案と政策の下、2024年までに財政赤字は対国内総生産(GDP)比で2.6%に削減されるだろう。

トランプ政権は、貿易に対する不公正な障壁を撤廃し、主要な米国の貿易相手国とより公正で互恵的な貿易を実現するために積極的に取り組んでいる。これには、為替市場への不当な介入など、競争優位を促進する不公正な為替慣行との戦いが含まれる。米・メキシコ・カナダ貿易協定は、3カ国が不公正な為替慣行を回避し、関連する経済情報を公表するとの約束を盛り込んでいる。また、3月には韓国が初めて為替介入を公表した。財務省は、韓国の為替慣行におけるこの重要な進展を歓迎する。

財務省は引き続き、中国人民元の動向を注視している。人民元は2018年下半期には対ドルで3.8%下落し、過去1年で対ドルで8%下落して1ドル=6.92元となった。為替市場への介入など、中国のの為替レートの慣行は依然として不透明だ。財務省の試算によると、中国人民銀行によるこの数カ月の外為市場への直接介入は限られているようだ。にもかかわらず、中国が長期的かつ大規模な外為市場への介入を通じて通貨の過小評価を促進してきた長い歴史を踏まえ、財務省は人民元の動向と介入慣行について中国当局との議論を継続してきた。

また、中国は近年、漸進的な経済自由化政策から、国家統制を強化し、非市場メカニズムへの依存を強める政策へと転換している。明示的および暗黙的な補助金やその他の不公正な慣行の活用は、貿易相手国との経済関係をますます歪めている。こうした行動は、中国の輸入品に対する需要と市場アクセスを制限し、貿易黒字の拡大につながる傾向がある。実際、米国の対中貿易赤字は2018年には4190億ドルと過去最大を記録した。この増加の主な要因は、2018年第4・四半期に米国の中国への輸出が急減する一方、米国の中国からの輸入は維持されたことだ。米国は、両国間の貿易パターンを改善し、米国の労働者と企業にとってにより良い結果をもたらすために、2国間の貿易赤字問題に対処することにコミットしている。

近年、米国の主要な貿易相手国のほとんどで為替介入の規模や頻度が低下している。それにもかかわらず、米国の一部の貿易相手国は為替市場に一方的に介入してきた歴史がある。財務省は今回の報告書から、対外不均衡や一方的介入を監視するため、より多くの貿易相手国の動向を検討・評価する。また、財務省は、我々の貿易相手国による介入がどの程度対称的であるか、また、為替レートの変動を円滑化することを選択した国が、上昇圧力と同様に減価圧力に抵抗するかどうかを、引き続き注意深く監視する。

財務省は、他の国に対して、為替レートが成長を支え、経済状況の変化に適応できるようにするよう促してきた。G20は昨年、強固なファンダメンタルズ、健全な政策、強靱な国際金融システムが為替レートの安定には不可欠であり、強固で持続可能な成長と投資に貢献することで一致した。

こうした前向きな進展にもかかわらず、トランプ政権は、世界経済における大きな貿易不均衡を引き続き深く懸念している。米国の貿易赤字は2018年に一段と拡大した。内需が米国で上向く一方、主要な米国の貿易相手国では鈍化したためだ。また、国際通貨基金(IMF)の推計によると、米国のいくつかの貿易相手国の通貨は引き続き過少評価されていた。いくつかの主要貿易相手国、特に中国との2国間貿易赤字は依然として極めて大きい。2018年のドルの実質実効為替レートの上昇が続けば、この大きな貿易不均衡をさらに悪化させる可能性が高い。

さらに、世界的な成長は十分に強くもなく、均衡もとれていない。いくつかの主要経済国では、貿易と経常収支の大幅な黒字が長年続いている。こうした不均衡は、将来の成長に対するリスクをもたらす。過去には、不均衡縮小に向けた急速な調整は、赤字国の需要の圧縮と、それに伴う世界的な需要と成長の後退を通じて起こることが多かった。これらのリスクは、不均衡の持続性により増幅され、世界の生産に占める純債権・純債務のポジション拡大につながる。財務省は引き続き、より力強い内需の成長に向けてマクロ経済政策を再調整し、競争上の不公正な優位性を助長するような為替・貿易政策を回避することによって、より強固でかつバランスのとれた世界の成長を支援するよう、大規模な対外黒字を維持してきた主要な米国の貿易相手国に引き続き求めていく。

<中国関連の財務省結論>

中国は引き続き、米国との2国間貿易黒字が極めて大きく、持続的に拡大させており、これは米国の主要貿易相手国の中でも群を抜いて最大だ。中国のモノの対米貿易黒字は2018年12月までの4四半期で4190億ドルに達する。これは、中国が非関税障壁、非市場メカニズム、国家補助金、その他の差別的措置を執拗かつ広範に利用し、貿易・投資関係をますます歪曲しているためだ。こうした慣行は、中国の輸入財・サービスに対する需要と市場アクセスを制限し、貿易黒字を拡大させる傾向がある。また、中国の政策は海外投資を抑制し、人民元の下落につながっている。2018年には、対米人民元相場は5.4%下落、幅広い貿易加重ベースでは2%弱下落した。このままでは、中国の大幅な対米貿易黒字がさらに拡大する可能性が高い。

財務省は、競争的な切り下げを行わず、競争的な目的のために中国の為替レートを目標としないというG20のコミットメントを中国が遵守することを重要視している。財務省は引き続き、中国に対し、為替レートや準備高のオペレーションや目標に関する透明性を高めるよう求めている。財務省は、中国が為替介入の公表を引き続き拒んでいることに、依然として強い失望感を抱いている。財務省は人民元の動向を注視しており、中国当局との協議を継続している。

中国は、人民元の成長と信頼を高めるような、より市場本位の経済改革を追求すべきだ。中国は、市場の力の役割を拡大し、家計消費の拡大を支え、経済を投資からリバランスさせる改革を積極的に進める必要がある。このような改革は、中国経済をより持続可能な基盤に置き、世界の成長を支え、米国との二国間黒字の削減に役立つ。

<「監視リスト」に載った他の8カ国について>

◎日本

モノ対米貿易黒字は2018年は680億ドルで世界第4位。2018年の日本の経常収支黒字はGDP比3.5%で、2017年の4.2%から減少した。日本は2011年以来外国為替市場に介入していない。財務省は、大規模で自由に取引される為替市場においては、介入は、適切な事前協議を伴う非常に例外的な状況にのみ留保されるべきものと認識している。日本は、継続的な景気拡大を活用して、持続的かつ迅速な内需拡大を支え、長期的成長のためのより持続可能な道筋を作り、日本の公的債務負担と貿易不均衡を削減するための重要な構造改革を実施すべきだ。

◎韓国

大きな対外黒字は、2018年も緩やかな減少が続いた。2018年の経常収支の黒字はGDP比4.7%に減少した。韓国の対米貿易黒字も減少傾向を続け、2018年には180億ドルと、2013年以来初めて200億ドルを下回った。米財務省の評価によると、2018年には、韓国当局はウォンを支援するための介入を実施、ネットベースで小幅な外貨売りを行った。2018年のウォン相場は対ドルで4.1%下落し、実質実効ベースでは小幅に下落した。米財務省は、韓国が為替介入を初めて公表したことを歓迎する。これは、2018年下半期の行動をカバーするものだ。当局は、為替市場が乱高下するなどの例外的な状況に介入を制限すべきであり、財務省は引き続き韓国の為替慣行を注視していく方針だ。現在、韓国が2015年法の3つの基準のうち1つしか満たしていないことを考慮すれば、財務省は次の報告書の時点でこのままであれば、監視リストから韓国を除外することになる。

◎ドイツ

経常収支の黒字規模は、名目ドルベースで世界最大だ。2018年12月までの4四半期で2980億ドルと、ドイツは3年連続で、世界の対外黒字への最大の寄与国となった。ドイツはまた、巨額の対米貿易黒字を維持しており、2018年12月までの4四半期で680億ドルに上る。巨額の経常収支黒字と米国との2国間貿易不均衡が続いているのは、ドイツの需要の伸び悩みと実質実効為替レートの過小評価に起因している。2018年にドイツの財政黒字が過去最高にまで増加し、ここ数四半期でドイツのGDP成長率が弱まっていることを踏まえると、ドイツは国内投資と消費を押し上げるための有意義な政策措置を講じるべきだ。例えば、労働・付加価値税の引き上げによる負担を最小限に抑えるための大幅な財政改革などであり、国内主導の成長を支え、大きな対外不均衡の縮小に役立つだろう。欧州中央銀行(ECB)は2001年4月以降、一方的な為替市場介入を実施していない。

◎イタリア

2018年の経常黒字はGDP比2.5%で、モノの対米貿易黒字は320億ドルに増加した。イタリアの競争力は、生産性の低迷と人件費の上昇に苦しんでいる。イタリアは、高い失業率と公的債務の削減と整合的な形で長期的な成長を促進し、財政および対外的な持続可能性を守るために、根本的な構造改革に着手する必要がある。ECBは2001年以降、外国為替市場に一方的に介入していない。

◎アイルランド

ユーロ危機に伴い経常収支は赤字に陥ったが、この数年は、経常収支黒字と対米貿易黒字は大きく拡大している。2018年はアイルランドの経常収支黒字はGDPの9.2%に達し、モノの対米貿易黒字は史上最大の470億ドルに達した。一方、サービスについては、米国がかなりの黒字になっている。アイルランドの対外バランスの改善は、一部には、外国の多国籍企業(MNE)の重要性と存在感の増大を反映している。経常取引のかなりの部分は多国籍企業の活動に起因している可能性が高く、国内のアイルランド住民のシェアは相対的に小さい。ECBは2001年以降、外国為替市場に一方的に介入していない。

◎シンガポール

2018年のGDPに占める経常黒字の割合は17.9%と、世界最大の黒字国の1つ。このような対外黒字にもかかわらず、シンガポールは米国とのモノの貿易では赤字が続いており、2018年は60億ドルだった。シンガポールの金融政策は、主要な金融政策手段として為替レートを使用しており、珍しい。物価安定目標を達成するために、当局は為替介入を頻繁に利用して、為替レートを誘導し、目標範囲内に維持している。財務省の推定によると、シンガポールは2018年に少なくともGDPの4.6%に相当する170億ドルの純外貨購入を行った。シンガポール当局は5月、2020年に介入データの公表を開始すると発表した。財務省はこの進展を歓迎する。いくつかの構造的要因がシンガポールの大きな経常収支黒字に寄与しているが、シンガポールは高い貯蓄率を低下させ、低い国内消費を増加させる改革に取り組むべき。実質為替レートを経済ファンダメンタルズに沿った水準にし、大規模かつ長期的な対外黒字の縮小に努める必要がある。

◎マレーシア

2015年以来、米国との2国間のモノの貿易で大幅な黒字を維持し、昨年は270億ドルとなった。しかし、マレーシアの経常収支黒字は消費と投資の増加でここ10年間で大幅に減少し、2018年にはGDPの2.1%にまで大幅に減少した。マレーシアの中央銀行はここ数年、為替市場に双方向に介入してきた。財務省の試算によると、中銀は2018年、リンギの下落に対抗するため、対GDP比3.1%の外国為替の純売却を行った。近年のマレーシアの対外リバランスは歓迎すべきものだ。マレーシア当局は、この傾向の継続を支援する適切な政策を追求する必要がある。例えば、質の高い透明な投資を奨励し、予防的貯蓄の最小化に役立つ十分な社会支出を確保することなどだ。

◎ベトナム

対米貿易黒字はこの10年間で増加し、2018年には400億ドルに達した。ベトナムの経常収支も過去10年間で改善傾向にあり、2018年6月までの4四半期でGDPの5%以上の黒字を記録した。2016年に為替相場制度が変更され、為替相場の法律上の柔軟性が高まったにもかかわらず、ベトナムドンは実際には米ドルに対して緊密に管理されている。その結果、為替介入は、ドルとの緊密な連動性を維持するために、頻繁かつ双方向に利用されてきた。ベトナム当局は財務省に対し、2018年5月の純外国為替購入額はGDPの1.7%だったことを報告している。これらの購入は、外貨準備が標準的な適正基準を下回っており、外貨準備を再構築する合理的な理由がある状況で行われた。さらに、為替の買いが年間を通じて売りを上回ったが、中央銀行は両方向に介入し、2018年下半期には、ベトナムドンに対する下押し圧力に抵抗するために為替の売りが活用された。ベトナムが金融政策の枠組みを強化し、外貨準備が適切な水準に達するに伴い、ベトナムは介入を減らし、実質実効為替レートの段階的な上昇を含む、経済ファンダメンタルズを反映した為替レートの動きを許容すべきだ。そうすれば、ベトナムの対外黒字縮小につながるだろう。

<「監視リスト」から除外した国>

◎インド

2回の報告書で連続して、3つの基準のうちの1つ(米国との2国間の大幅な黒字)を満たしたのみだったため、本報告書では監視リストから除外された。中銀は2017年にネットで外貨を購入した後、2018年の大半の期間は外貨準備を段階的に売却し、年間の外貨売却額はGDPの1.7%だった。インドは、IMFの基準に沿った十分な準備率を維持している。

◎スイス

2回の報告書で連続して、3つの基準のうちの1つ(大規模な経常収支黒字)を満たしたのみだったため、本報告書では監視リストから除外された。財務省の推計によると、スイス国立銀行(中銀)による為替介入は2017年半ば以降極めて控えめになっており、2018年の介入総額は20億ドルに満たなかった(GDPの0.3%)。財務省は、スイス当局に対し、全ての介入データをより高い頻度で公表することを引き続き奨励する。スイスはまた、国内経済活動をより力強く支援するために、十分な財政余地の活用などマクロ経済政策を調整すべきであり、これはインフレを目標に向けて持続的に上昇させるにあたり、金融政策の負担を軽減するのに役立つだろう。

米財務省は引き続き、1988年法及び2015年法の要件に基づき、米国の貿易相手国の為替政策とマクロ経済政策を注意深く見守る。これに関連して、財務省は、全ての国・地域が、適時かつ透明性のある形で対外収支及び外貨準備に関するデータを公表することの重要性を強調する。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below