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コラム:政府運営に企業の手法用いるトランプ氏の「限界」
2017年5月18日 / 03:37 / 6ヶ月後

コラム:政府運営に企業の手法用いるトランプ氏の「限界」

[ニューヨーク 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国政府の運営に企業経営の手法を用いるのはやはり無理があることが証明されつつある。トランプ米大統領は有権者に、ホワイトハウスを1つの企業として切り盛りしていくと約束した。

 5月17日、公開企業に存在する規律にまったく向き合ってこなかったトランプ氏は、インフォーマルな経営手法をホワイトハウスに持ち込んだ。規律の欠如が、さまざまな「自滅行為」をもたらした。写真はホワイトハウスで17日撮影(2017年 ロイター/Yuri Gripas)

だが自身の不動産会社に必要な技能は、いくつもの権限の相互チェックが働き、さまざまな支持層に対処しなければならない行政府の長として援用しにくいことが分かってきた。

そして企業において、間違いを正すことを最も期待されるのは外部取締役だ。トランプ政権では、そうした役割は議会が背負わせなければならないだろう。

トランプ氏は選挙中、自分のビジネス感覚が事業を成功させたのと同じように米国を再び偉大にする上で大いに役立つと請け合った。実際、閣僚にはエクソンモービル(XOM.N)やゴールドマン・サックス(GS.N)の元首脳を取り込んだ。同氏は、ビジネスにおける巧みな交渉術が素晴らしい貿易協定や抜本的な税制改革をもたらすとも強調。有権者はこうした発言のとりこになってしまった。

ただし、いくらトランプ氏が実業家として注目されていたとしても、経営していた不動産会社は非公開の家族経営組織で、役員には3人の子息と長年忠実に従ってきたごく一握りの人々が名を連ねていた。そこでトランプ氏は4回の破産を経験して債権者と交渉しなければならなかったが、部外者に回答する場面はほとんど見られなかった。トランプ氏の企業の法律顧問を務めたアラン・ガーテン氏はあるインタビューで「つまるところ、わたしはトランプ一家のために仕事をしていた」と話している。

その結果、トランプ氏は公開企業の最高経営責任者(CEO)であれば当たり前の監視されるという経験をしていない。企業のトップに君臨するのは取締役会で、株主によって選出されるとともに株主の利益に沿った行動をする義務を持つ。CEOは取締役会に状況を報告し、取締役会が経営執行幹部を評価する。

公開企業に存在するこうした規律にまったく向き合ってこなかったトランプ氏は、そのインフォーマルな経営手法を重役だった家族とともにホワイトハウスに持ち込んだ。例えば娘のイバンカさんはホワイトハウス職員となり、その夫のクシュナー氏は上級顧問に就任。長年トランプ氏の私的な護衛を務めてきたシラー氏は、連邦捜査局(FBI)に赴いてコミー長官の解任通知を渡した。大統領執務室は側近がいつでも出入り自由とされ、情報漏れを許す事態を招いている。

このような規律の欠如が、発足から4カ月のトランプ政権にさまざまな「自滅行為」をもたらした。直近では、トランプ氏がコミー前FBI長官に対して、フリン前大統領補佐官とロシアの関係に関する捜査を中止するよう求めた、と米紙ニューヨーク・タイムズが伝えた。ホワイトハウスはそうした事実はないと否定するが、本当であれば捜査妨害に該当しかねない。

トランプ氏のインフォーマルな手法の限界として最も顕著な事例は、ホワイトハウスの情報発信がしばしば齟齬をきたすことだ。先週は、コミー氏解任を巡る政権幹部の説明と、トランプ氏がテレビで述べた内容が食い違った。

公開企業ならCEOは自らのメッセージを他の重役から現場社員、投資家、サプライヤー、顧客、労組、あるいは政治家に至るまで幅広く浸透させることは不可欠だ。片やトランプ氏は家族経営企業においてそんなことをする必要はなかったため、今もコミー氏解任から貿易交渉まで、重要問題で政権幹部に同一歩調を確実に取らせることができない。

さらに公開企業の場合、何か不祥事が発覚すると取締役会が委託した独立的立場の調査が始まり、調査担当者は外部取締役に報告することが頻繁にある。PwCの子会社が15日公表した調査報告によると、2012─16年には不祥事や不適切な行為が原因で解任されたCEOの数は、07─11年に比べて36%増加した。スタンフォード大学の研究では、有力メディアに不適切な振る舞いを報じられたCEOの6割近くは解雇されている。

このシステムは完全ではなく、取締役会と執行幹部がなれ合いの関係になって不祥事への対応が遅れるケースも多い。それでもある程度の責任体制を提供しているのは事実で、取締役は報酬面から執行幹部を締め付けることもできる。バークレイズ(BARC.L)は、内部告発者の特定に動くという規律違反をしたステーリーCEOに対して、取締役会は大幅な減俸を決めた。ウーバーなど非公開企業の一部でさえ、CEOの失策後に経営改革を打ち出した。

もちろんホワイトハウスは公開企業とは異なり、大統領に懲戒処分を下したり弾劾するためのハードルは非常に高い。ただし企業的な賢い考え方を政府に持ち込むと約束したのはトランプ氏であり、そうした基準に基づいた判断が求められる。

そこで企業と同様のやり方を貫くためには、特に上院の多数派政党に大統領のチェック役が帰せられることになる。つまり共和党のマコネル上院院内総務が、事実上の筆頭外部取締役を務めるわけだ。マコネル氏が軌道修正に失敗すれば、議会は株主、要するに有権者の激しい怒りに見舞われてもおかしくない。

●背景となるニュース

*米紙ニューヨーク・タイムズは16日、トランプ氏がコミー前FBI長官に対して、フリン前大統領補佐官とロシアの関係に関する捜査を中止するよう求めた、と伝えた。ホワイトハウスは、大統領はそうした要請をしていないと報道を否定。コミー氏は9日に解任され、フリン氏は2月、キスリャク駐米ロシア大使との会話内容についてペンス副大統領に正しい報告をしなかった責任を取って辞任している。

*キスリャク氏とロシアのラブロフ外相は10日、ホワイトハウスでトランプ氏と会見した。米紙ワシントン・ポストは15日、トランプ氏がISに関する機密情報をロシア側に漏らしたと報じた。トランプ氏は16日にツイッターで、テロとの闘いにおいてロシアと情報を共有する「絶対的な権利」が自身にあるとつぶやいた。FBIは、昨年の米大統領選へのロシアの干渉や同国とトランプ陣営につながりがあったかどうか捜査している。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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