[ハタイ(トルコ) 8日 ロイター] - 大きなコンクリート片やれんがの下敷きになりながら、アブドラリム・ムアイニさんは救助隊員に弱々しく手を振っていた。大地震でトルコ南部ハタイ県にあるアブドラリムさんの自宅が倒壊してから、2日以上が経っていた。
彼のすぐ隣には、妻エスラさんが横たわっていた。救助隊の到着は、エスラさんには遅すぎた。
マグニチュード(M)7.8の地震で甚大な被害に見舞われているハタイ県に入ったロイターのフォトグラファー、ウミト・ベクタシュ記者は、取材2日目を迎えていた。トルコ南東部とシリア北部を合わせると、少なくとも1万2000人がこの地震で亡くなった。
最も大きな被害を受けた地区に向かいながら、捜索や救助活動を行うボランティアに対し、1つの質問を繰り返し尋ねた。「生存者は見つかったか」と。
この時は「イエス」と返ってきた。アブドラリムさんを見つけた捜索隊からだった。
アブドラリムさんは脚がコンクリートの下に挟まって身動きが取れずにいたが、意識はあり、救助隊員と会話することができた。
ベクタシュ記者はアブドラリムさんと直接話すことはできなかったが、近くに立っていた2人の友人から話を聞くことができた。彼らによれば、アブドラリムさんはシリア西部ホムスの出身で、内戦を逃れ、トルコ人女性のエスラさんと結婚したという。夫婦には娘マーセンさんとベシラさんという2人の娘がいたが、彼女たちの安否はわからないと話した。
救助には長い時間を要した。ベクタシュ記者は数時間後に同じ場所に戻ってきてようやく、がれきの中からアブドラリムさんが救出されるのを目にした。全身が灰色の粉じんに覆われ、片目は腫れ上がっていた。脱水症状があり、治療が必要な状態だった。それでも、アブドラリムさんは生き延びた。
ただ、彼の家族は命を落とした。地面に、毛布にくるまれたエスラさん、マーセンさん、ベシラさんの遺体が横たえられていた。
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