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フォトログ:ロシア逃れた音楽家、新天地で夢見る演奏活動再開

[トビリシ 30日 ロイター] - アレクセイ・アントロポフさん(29)は、モスクワを中心に活動するロシア・フィルハーモニー管弦楽団でコントラバスを演奏していた。

 1月30日、アレクセイ・アントロポフさん(29)は、モスクワを中心に活動するロシア・フィルハーモニー管弦楽団でコントラバスを演奏していた。写真は勤務先のピノベールパレスホテルのロビーでピアノを弾くアントロポフさん。昨年12月、トビリシで撮影(2023年 ロイター/Maxim Shemetove)

だが昨年9月、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナでの戦闘における劣勢打開を狙い、第二次世界大戦後初めてとなる部分動員令を発令。アントロポフさんは隣国ジョージアに逃れ、現在はホテルの受付で働いている。

アントロポフさんがコントラバスを車から運び出すのを手助けするタクシー運転手。昨年12月、トビリシで撮影(2023年 ロイター/Maxim Shemetov)

アントロポフさんのように賛同しない戦争への徴兵を逃れるために国外脱出を選んだロシア人は数十万人に上り、その多くが若い男性だ。

ジョージアの首都トビリシは、ロシアから陸路で向かうことができ、入出国の規則が比較的緩く、文化的な結び付きも深いことから、多くの人がロシアからの避難先として選んだ。

ナリカラ要塞近くにある高台からトビリシ中心部を静かに眺めるアントロポフさん。1月撮影(2023年 ロイター/Maxim Shemetov)

アントロポフさんはトビリシ郊外にある安価なホステルで新生活を始めた。その後、友人らと共にアパートへ移り住み、ささやかな職にも就いた。

音楽への情熱も絶やさず、トビリシや、あるいは隣国アルメニアの首都エレバンで演奏することを目標に、自身のようなロシア出身のクラシック音楽家を集めている。

「今は(参加できる)オーケストラがない。だから自分で作っている」

アントロポフさんが率いる小規模のオーケストラで、初のリハーサルに臨むロシア人演奏者ら。昨年12月、トビリシで撮影(2023年 ロイター/Maxim Shemetov)

昨年12月下旬には、トビリシ中心部にある建物の地下室を借り、初めてのリハーサルが行われた。アントロポフさんは演奏者たちのため、積み重ねられる安いプラスチック製スツールを購入した。

アントロポフさんは、たとえ政権が変わったとしても当面の間はロシアへの帰国を考えていないという。

「ロシアの次の『プーチン氏』は、現大統領よりもさらに恐ろしいかもしれない」。地元料理を提供するカフェで、アントロポフさんはこう語った。

勤務先のピノベールパレスホテルで、客室を整えるアントロポフさん。昨年12月、トビリシで撮影(2023年 ロイター/Maxim Shemetov)

また、ジョージアに避難するまでを振り返り、ロシアからの出国を急ぐ人々がベルフニー・ラルスの検問所で長蛇の列を成していたため、越境に3日間を要したと話した。

「警察官らに賄賂を渡しながら、車に乗せてもらって田舎道を国境に向かった。それから、10キロ以上ある山道を徒歩で登った」と、アントロポフさんは皮肉な笑みを浮かべた。

いつかトビリシで家を買いたいと考えているという。

「家が必要だ。帰ることのできる場所が欲しい。自分にとって、トビリシがそうした場所になってくれることを願っている。美しい都市だ」

<「大きな喪失」>

グレゴリー・ドブルイニンさんは、ロシアのバンド「SBPCh(「最大素数」を示すロシア語の頭文字)」のドラマーだ。

昨年2月24日にロシアが本格的なウクライナ侵攻を開始した後、ドブルイニンさんもジョージアに向かった。持ち物は身の回り品をいっぱいに詰めたスーツケース1つと、コンサートで被っていた帽子2個だけだった。

ドブルイニンさんはSBPChの活動を細々と続けながら、トビリシにある「プラクティカ」というリハーサル室で大半の時間を過ごしている。ここは、国内外から集まるミュージシャンたちの交流の場として設けられた場所だ。

写真撮影に応じるドブルイニンさん。首からドラム用のチューニングキーを下げている。昨年11月、トビリシで撮影(2023年 ロイター/Maxim Shemetov)

ジャムセッションが2週間に一度開催されるほか、ドブルイニンさんによるドラム教室も行われている。

「ドラムを教えることが自分にとって後ろ向きなことだとは思っていない。指導とバンドでの演奏はまるで違う。比べることなどできない」

ドブルイニンさんは「だが、本心を言えば、コンサートやギグ(一度限りのセッション)がとても恋しい。私にとっては大きな喪失だ」と続けた。

トビリシ中心部にある住宅地の庭を歩くアナスタシア・イワノワさん。ロシア人歌手「グレチカ」として知られている。昨年11月撮影(2023年 ロイター/Maxim Shemetov)

「グレチカ(植物のソバの意味)」の芸名で知られる、ロシア出身の歌手でギタリスト、アナスタシア・イワノワさん(22)は昨年の春にロシアを離れた。以降もコンサートツアーを続けられているものの、ロシア国内での公演はできずにいる。イワノワさんは、自身が反戦を支持していることで「ブラックリスト」に載せられていると話す。

トビリシに拠点を置くイワノワさんは2014年、ロシアによるクリミア半島併合後にウクライナでコンサートを行ったという。

「ウクライナの観客は、とても温かく迎えてくれた。だから、ロシアのテレビが、ウクライナ人がロシア人を憎んでいると放送していても、それがでたらめだとわかっている」

(Filipp Lebedev記者、Maxim Shemetov記者)

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