February 8, 2019 / 3:49 AM / 7 months ago

焦点:高級ピックアップトラック、米ビッグスリーの「命綱」に

[ディケーター(テキサス州)/フリント(ミシガン州) 5日 ロイター] - ミッキー・マクマスターさんが乗っているのは、彼にとって12台目となるピックアップトラックだ。

2月5日、米国での自動車需要が低下するとしても、米ビッグスリーは大型化・高級化の進むピックアップトラックを買い続けてくれる顧客に期待を寄せている。写真は4日、テキサス州ディケーターで、ミッキー・マクマスターさんと、彼の12台目となる新しいピックアップトラック「GMCデナリ」(2019年 ロイター/Nick Carey)

テキサス州ディケーターで農業機器を販売する61歳のマクマスターさんは2週間前、長いこと働き続けた自分へのご褒美に、2019年型「GMCデナリ」を約6万9000ドル(約760万円)で購入した。

「私にとって、これはピックアップ版キャデラックだ。まぎれもなく高級車だ」とマクマスターさんは言う。「私はこういう車を買えるようになるまで働いてきた。この車は、私がこれだけ稼いできたのだと示してくれる」

ゼネラルモーターズ(GM)(GM.N)はミシガン州フリントの工場で同社として最も大型の新世代ピックアップを生産するため、新たに1000人の採用を計画している。同社が当てにしているのが、マクマスターさんのようなタイプの顧客だ。

テキサスなど米中部各州における大型ピックアップに対する需要は、米最大手の自動車メーカーであるGMが他地域の工場でレイオフの対象としている多くの労働者にとって頼みの綱となっている。

ほとんどのアナリストの予想通り、米国での今年の自動車需要が全体として低下するとしても、米国自動車産業のビッグスリー、そして各社の国内従業員数千人は、マクマスターさんのような顧客が大型化・高級化の進むピックアップを買い続けてくれることを期待している。

フリント工場でGMが生産しようとしているのは、大型ピックアップの新型「シボレー・シルバラード」と「GMCシエラ」であり、その中には、世界で最も利益率の高い車種に数えられる高級仕様車も含まれている。

GM、フォード・モーター(F.N)、そしてフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)(FCHA.MI)の商用車部門「ラム」はこのセグメントの車種を独自に生産しており、各社とも、今年投入する新型、あるいはモデルチェンジする車種に後にひけない勝負を出ている。

業界のデータによれば、大型ピックアップトラックの米国における販売台数は、2013年以降で20%以上も伸び、年間60万台以上に達している。高級仕様車の価格は7万ドルを優に超える。

GMでは5日、ミシガン州フリント工場で、「シボレー」「GMC」ブランドでの新世代ピックアップの生産開始を華々しくスタートさせる。GMによる大型ピックアップトラックの生産は、現在すべてフリント工場に集約されている。

GMは国内で従業員数千人のレイオフを進め、北米工場5カ所を閉鎖する計画を立てているが、その一方で、フリント工場では雇用を増やしている。同工場は1日3交代制で週6日操業している。マイク・ペレズ工場長はロイターに対し、「新車種の組立システムの拡大によって、生産能力は25%以上増大する」と語った。

フリント工場では1000人の新規採用を予定している。メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)によるリストラ計画の一環としてGMが閉鎖対象としている工場からの配置転換を希望する従業員は1500人いるが、その半分以上を吸収できる計算だ。

ペレズ工場長は「毎週50─100人、新しい従業員が入ってくる」と言う。

従業員らは先週、総額15億ドルの投資プロジェクトの一環として、新型の大型ピックアップの生産に向けて、フリント工場の設備更新業務の仕上げに追われていた。

新たな組立ラインのハイライトは、2階建てほどの高さのあるファナック製ロボットが、ピックアップトラック用の車室(キャビン)と荷台(ベッド)を別々のパレットから持ち上げ、向かい合わせのアーク溶接機へと送り込み、その後、ゆっくりとフレーム部分に下ろして、さまざまなロボットによるボルト接合が行われる工程だ。

ビッグスリーの幹部は、大型ピックアップの市場を守っているのは、「モート(堀)」と呼ばれる輸入トラックに対する25%の関税、そして何十年にもわたるエンジニアリングの経験だと胸を張る。

それによって、3万ポンド(13.6トン)もあるトレイラーをけん引でき、大型高級セダンに匹敵する乗り心地、そしてBMWやレクサスといった高級車と同等の安全性やネット接続機能を備えたピックアップを生産してきたのだ。

ケアリー・ウィリアムズさんは、ディケーターで自動車販売店を経営している。毎月235台ほど売れる新車のうち、4分の3はピックアップだ。その半分近くは、7万ドル以上もするハイエンド寄りの高級仕様車である。

ウィリアムズさんは、ラムの新型ピックアップがGMのライバルになることは心配していない、と言う。

「ピックアップはわれわれの生活を支える柱であり、(GMの)ニューモデルは、顧客の求めるあらゆる機能を備えることで、それを証明してみせる」

空調機器設置・修理業の2代目オーナーであるマーク・アリーさん(37)は、2019年型「シルバラード・ハイ・カントリー」を6万5000ドルで購入した。リアシート用の独立したエアコン、360度撮影可能なカメラ、電話やテキストメッセージの送受信が可能なハンズフリー機能がお気に入りだ。

「GMはテクノロジーの力で2019年型ピックアップを本当に進化させた」とアリーさんは言う。

<威風堂々>

大型ピックアップのセグメントで首位に立つフォードは、今年後半にFシリーズ「スーパーデューティ」に、7.3リットルのガソリンエンジンを搭載したバージョンを発売する。フォードの標準的なセダン「フュージョン」のエンジンに比べ、排気量は3倍以上だ。

フィアット・クライスラーの「ラム」ブランドでは、大型ピックアップの改良版に力を入れており、オプションとして、12インチのディスプレイ画面のほか、3万5000ポンドのトレイラーをけん引可能な1000ポンド・フィートのトルクを発生する排気量6.7リットルのカミンズ社製ディーゼルエンジンを提供している。

GMで大型ピックアップ/スポーツタイプ多目的車(SUV)担当のチーフエグゼクティブ・エンジニアを務めるティム・ヘリック氏によれば、同社の大型ピックアップ「シルバラード」「GMC」は、新型のディーゼルエンジン、10段変速のトランスミッション、「優に3万ポンドを超える」トレイラーけん引能力を備えることになるという。

フリント工場の組立ラインが送り出す新型ピックアップは、同じラインで生産された旧モデルとは別物だという。旧モデルに比べて車高は高く、印象的なフードやグリルを備えている。

ヘリック氏は「ピックアップには堂々とした見栄えがほしかった」と言う。

<投資負担も巨大化>

ビッグスリーは、大型ピックアップの販路を商業用途・作業用途の顧客以外にも広げていこうと大規模な投資を進めている。

各社とも、「ラム」ブランドの「ララミー・ロングホーン」、フォードの「リミテッド」、シボレーの「ハイ・カントリー」といった具合に、大型ピックアップに高級仕様車を用意している。

GMは複数車種をそろえた高級ピックアップのサブブランドとして「GMCデナリ」を開発した。GMCのグローバルブランド責任者を務めるダンカン・アルドレッド氏はロイターに対し、現在GMCブランドによる大型ピックアップの6割はこの「デナリ」シリーズとして販売されていると語った。ディーゼルエンジン搭載のバージョンは定価7万ドルを超える。

大型ピックアップに適用される連邦燃費規制は、より小型のピックアップやセダンの場合とは異なっている。商用トラックを対象とする、さほど厳格ではない基準の対象となっており、業務用ゆえに燃料消費が多くなることが認められている。また小型ピックアップの場合とは異なり、価格表示の際に参考燃費が添えられていない。

大型ピックアップの販売が伸び、高級志向が強まる中で、二酸化炭素排出量の削減を求める活動家からは、こうした個人利用の大型ピックアップへの批判が出始めている。

自動車安全センターのダン・ベッカー氏は、「フォードの新しい巨大ピックアップは、7.3リットルのエンジンを積んでいるのだから、フォード『バルディーズ(原油流出事故を起こしたタンカーの名前)』という名で販売されるのがふさわしい」とあるメールで書いている。

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GMのベテラン従業員、41歳のランディ・ランドールさんのような労働者にとって、フリント工場でGMの新しい大型ピックアップ生産の担当になることは一筋の希望の光だ。ランドールさんはレイオフの対象になるたびに複数のGM工場を渡り歩いてきたという。現在彼は、フリント工場の組立ラインの最終工程で製品の検査に携わっている。

ランドールさんは、「GMC」ブランドのピックアップの前方に置かれた画面に、その車両が検査に合格したことを示すメッセージが表示されるとほほ笑んだ。「この車には明るい未来がある」と彼は言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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