[東京 16日 ロイター] - 来日中のブリンケン米国務長官とオースティン国防長官は16日午後、日本の外交・防衛担当閣僚と会談し、中国による海洋進出や人権問題への懸念を盛り込んだ共同声明を発表した。バイデン新政権が中国を「最大の地政学上の課題」と位置付ける中、共同声明は台湾海峡や香港の情勢にも言及。両氏の訪日は、対中批判を前面に打ち出す形となった。
ブリンケン、オースティン両氏は同日午後、日本の茂木敏充外相、岸信夫防衛相と安全保障協議委員会(2プラス2)を対面形式で開催。中国に多くの時間を割いて地域情勢を協議した。
日米はその後に出した共同声明で、中国が南シナ海や東シナ海で活動を活発化させていることを念頭に、国際秩序に合致せず、国際システムを損なう行動に反対すると表明。民主化が後退する香港、イスラム教徒の少数民族が弾圧される新彊ウイグル自治区における人権問題への懸念も共有した。また、軍事バランスが中国優位に傾きつつある台湾海峡の平和と安定の重要性も強調した。
会合後に会見したブリンケン国務長官は、「中国が威圧的、攻撃的な姿勢で自分の思い通りにしようとするなら、米国はそれを押し返す」と語った。
共同声明は、中国海警局の船舶による武器使用を認めた海警法への懸念も表明した。日本は尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺をはじめ、東シナ海における中国の活動をとりわけ注視しており、日米は声明で、海警法などが地域の混乱を招くと指摘した。会見したオースティン国防長官は「安定を損ねる中国の行動への米国の懸念を日本と共有した」と述べた。
その上で、日米の4閣僚は抑止力の強化に向けて連携することで一致。年内にも2プラス2会合を再度開くことを申し合わせた。
また、北朝鮮の非核化を進めることも改めて確認した。北朝鮮はブリンケン、オースティン両氏が日本に到着した翌日の16日早朝、国営通信を通じて金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の声明を発表。金正恩総書記の妹である与正氏は、「次の4年間、平和な眠りを望むなら、最初の段階で騒ぎを起こさない方がよい」と語った。
バイデン政権の閣僚が外遊に出るのは、ブリンケン、オースティン両氏が初めて。最初の訪問国に日本を選んだ。両氏は16日夕に菅義偉首相とも会談した。米シンクタンク、外交問題評議会のスコット・スナイダー氏はロイターの取材に対し、「これはまさに枠組み作りの外遊だ」と解説。「中国に対抗するための戦略、中国と競争するための連合作りに焦点を当てたものになる」とした。
日米両政府は2プラス2に先立ち、外相、防衛相会談をそれぞれ開催した。ブリンケン国務長官は茂木外相に対し、日米は民主主義・人権・法の支配という価値観を共有しているとした上で、「例えば中国やミャンマーなど、多くの場所でこうした価値観が危うくなっている」と語った。茂木氏と岸氏によると、いずれの会談も中国について多くの時間を割いた。
バイデン政権は1月の発足以降、中国に厳しく臨む姿勢を鮮明にしている。ブリンケン国務長官は3日の外交政策演説で、中国を「最大の地政学上の課題」と呼び、中国への対応を重視していく考えを打ち出した。12日にはバイデン大統領が主導し、日本・オーストラリア・インドとの4カ国首脳会談を初めて開いた。
ブリンケン、オースティン両氏はこの後韓国を訪問し、2プラス2会合を開く。ブリンケン氏は米アラスカ州へ戻り、中国の外交政策を統括する楊潔チ共産党政治局員、王毅外相と会談する。オースティン氏はインドへ向かう。
*内容を追加しました。
山口貴也、Humeyra Pamuk、久保信博
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