[デトロイト 22日 ロイター] - 米国で、遺体を集めて切断し部位ごとに研究者らへ売って利益を得る「ボディーブローカー」のアーサー・ラスバーン被告(64)に対し22日、懲役9年の判決が下った。病気に感染した部位を医学教育者へ販売したことが罪に問われた。
米国の「死体市場」はほぼ野放しの状態にあり、ラスバーン被告は今回の全米捜査で有罪判決を受けた3人目。中でも最も重要な人物とみられている。米連邦捜査局(FBI)はイリノイ、オレゴン、コロラド州で他のボディーブローカーの捜査を進めている。
検察によると、ラスバーン被告は1997―2013年までに、研究のために献体された死体の販売や貸し出しにより1300万ドル(約14億2000万円)を得た。この際、少なくとも120回にわたり、エイズウイルス(HIV)や肝炎に感染した部位を医学教育者へ供給したとみられる。
1月の裁判でFBI捜査官は、同被告はデトロイトに所有する倉庫の冷凍庫に死体の部位を保管していたが、ほとんど放置状態だったと証言。複数のドナーからの部位が「お互いにくっついた状態で冷凍されていた」という。
裁判には、遺体の関係者も出席した。イリノイ州在住のトレーシー・スモルカさんは2010年、亡くなった父親の遺体を献体したが、遺体はその3年後、FBIによりラスバーン被告の冷凍庫から発見された。スモルカさんは同被告に対し「地獄で焼かれるがいい」と怒りをあらわにした。
米国では心臓や肝臓など、移植を目的とする臓器しか法による規制の対象となっていない。このため、同被告は人体の部位の扱いに関しては罰せられず、詐欺行為および危険物の配送を取り締まる法律で裁かれた。
今回の裁判でラスバーン被告は証言しなかったが、量刑のための審問では、故意に偽って部位の購入へ誘導したのではないと主張。自分の研究室を「清潔で、完璧」だと主張し、自らをこの分野における洞察力を持つ「時代の先をゆく科学者」だとうそぶいた。
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