Reuters logo
コラム:中国、米国向け金融市場開放の裏に「したたかな計算」
2017年4月11日 / 03:46 / 7ヶ月後

コラム:中国、米国向け金融市場開放の裏に「したたかな計算」

[香港 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領は中国の習近平国家主席と夕食会に臨む前に冗談口調で「これまでのところ何も食べていない(交渉の成果がない)。まったく何もだ」と語った。この言い回しは少し大げさであり、中国側が手ぶらで訪米したわけではない。だが差し出した「お土産」は中国にとってそれほど痛みを感じる譲歩ではなかった。

 4月10日、トランプ米大統領(左)は中国の習近平国家主席(右)と夕食会に臨む前に冗談口調で「これまでのところ何も食べていない(交渉の成果がない)」と語ったが、これは少し大げさであり、中国側が手ぶらで訪米したわけではない。米フロリダ州で7日撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

英紙フィナンシャル・タイムズによると、お土産の1つは米国産牛肉の輸入解禁だった。これは万が一のために取っておいた贈り物の典型的な例だ。一方、米国の金融機関向けの市場開放という提案に関しては、トランプ政権の圧力と無関係の理由で既に進められていた。

中国はもはや米金融大手が国内金融機関を押しつぶすと恐れてはいない。十分勝負になるモンスター(巨大企業)を育てたからだ。中国中信(CITIC)(0267.HK)と中国国際金融有限公司(CICC)(3908.HK)、国泰君安証券(601211.SS)は、トムソン・ロイターがまとめたアジア太平洋地域の今年これまでの投資銀行株式市場引き受けランキングで、第2位から第4位までを占める。債券や企業合併・買収(M&A)のランキングでも中国勢はトップ20に食い込んでいる。

国内の金融機関が競争していけるとの自信を深めたため、中国当局は着実に外国勢への規制を緩めている。シティグループ(C.N)は2月に債券決済業務の認可を取得。JPモルガン(JPM.N)もほぼ同時期に債券引き受け業務を承認された。昨年12月には規制当局が外国勢に信用格付け市場を開放する方針を打ち出し、今年1月は外資系資産運用会社のプライベート投資ファンド設立が認められた。中国から本国への利益還流も、書類手続き面では簡略化されている。

中国当局は外国金融機関の苦戦ぶりにも敏感になってきた。外資系運用会社や証券会社との合弁の多くは近年、解消されている。合弁相手の中国勢との戦略の違いや事業面のリスクが大きな要因だった。こうした合弁解消がさらに増えるようなら、まるで中国市場への不信任が突き付けられることになり、資金流出をなかなか止められない中国政府にとって頭痛の種になりかねない。

中国は今年、昨年の熱狂的ブームで膨らんだ借り入れを減らしたい考えだ。そこで債券発行や新規株式公開(IPO)に米金融機関を参加させれば、市場がリスクをより適正に評価する手助けになる。中国にしてみれば、米国勢のために厄介な規制を免除することなど、特にそれと引き換えに米国のお金が中国資産に流れ込んでくるのなら、大した代償ではない。

中国政府としては、トランプ氏のためにこれ見よがしに「市場開放」を乱発することほど手軽な対米政策は他にない。米金融業界にとっての朗報は、実は中国がもっと得をする仕組みになっている。

●背景となるニュース

*中国は米中首脳会談を踏まえ、米国に対して金融セクター投資と牛肉の市場アクセス改善を提案する。英紙フィナンシャル・タイムズが10日、両国当局筋の話として伝えた。

*米国金融機関の中国における事業展開はまだかなり制約が多く、一般的には地元の金融機関との合弁を設立することが義務付けられている。

*ゴールドマン・サックスやUBS、モルガン・スタンレー、ドイツ銀行、クレディ・スイスといった有力外銀のほとんどは、中国勢との合弁証券を保有している。

*中国は世界最大の対米貿易黒字国で、昨年の黒字額は3470億ドルだった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below