June 6, 2019 / 2:34 AM / 13 days ago

コラム:貿易戦争で情勢一変、米中ベンチャー資金先細りか

[サンフランシスコ 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米中貿易戦争の直撃を受けたのは、製造業のサプライチェーンだけではない。リサーチ会社ロディウムによると、米国のベンチャーキャピタリストは2018年、中国のスタートアップ企業に過去最高の190億ドル(約2兆円)をつぎ込んだ。この年、中国から米国のスタートアップ企業への投資も過去最高の36億ドルに達した。

6月4日、米中貿易戦争の直撃を受けたのは、製造業のサプライチェーンだけではない。写真は米中の国旗と紙幣。5月撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)

だが、外国からの投資に対する規制強化やナショナリズムの台頭が、こうした資本の流れを一変させることになりそうだ。

世界1、2位の経済大国である米中の関係は冷え込んでいる。

トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争と中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]への締め付けは、中国からの報復関税を招き、アップル(AAPL.O)など米製品のボイコット呼びかけにつながった。

中国国営メディアは先週、中国商務省が「信頼できない」とみなす外国企業のリストを作成すると報じた。

<投資資金は今も流入>

こうした応酬の連鎖にもかかわらず、両国の投資家はこれまでのところ、スタートアップ投資の財布のひもを緩めたままだ。

2018年、中国の新興企業に対する米国からの投資は前年比で倍増。同年12月までにスタートアップ企業が実施した資金調達の3分の1に、ベンチャーキャピタルが参加していたことが、ロディウムのデータから分かる。これにより、米ベンチャーキャピタリストによる中国投資は、初めて直接投資額を上回った。

金融とITを融合したフィンテックと、ビジネスを支援するITサービスが人気の投資先だった。

米投資会社ジェネラル・アトランティックは、2018年に中国のアント・フィナンシャルが行った140億ドルの資金調達に参加した企業の1つだ。アントフィナンシャルは同年、米国際送金大手マネーグラム・インターナショナルを買収しようとしたが、安全保障上の懸念から米当局に阻止されていた。

対する中国のファンドは2018年、米国のスタートアップ企業に前年比50%増の投資を行った。その一方で、中国企業による米企業の買収は80%以上落ち込んだ。投資件数では、ヘルスケアやバイオテクノロジー分野が最も人気を集めた。

<次の標的は>

米国における外国投資規制の強化は、こうした資本面の関係を減少させることになりそうだ。

対米外国投資委員会(CFIUS)は昨年秋以降、非公開の技術情報や取締役の派遣、または重要な決定が関わる事案も含め、外国企業による米企業への少数株主出資についても審査する権限を得た。新たに付与されたこの権限は、人工知能(AI)などの新たな技術分野で重点的に適用されている。

半導体やバイオテクノロジー、金融サービスなどは脆弱(ぜいじゃく)な分野だ。中国は米製品への依存を減らすためにも自前の半導体産業を築きたいと考えており、この分野の米スタートアップ企業はその恩恵を受けた。調査会社ピッチブックによると、中国から米半導体企業への投資は2018年に9件あり、総額は2億1900万ドル。同年の総投資件数の14%、総投資額の25%を占めた。

シリコンバレーには潤沢な資金が流れ込んでいるが、それでも中国資本は一部のニッチな業種においては欠かせないものだった。

例えば半導体分野は、一般消費者を相手にしたインターネットサービスや、ネットを通じてソフトウエアを提供する「SaaS(サーズ)」を手がける企業などを好む国内投資家からは人気がなかった。中国からの出資を受けたある半導体企業の創業者はBREAKINGVIEWSに対し、今年後半に予定している次回の資金調達で、十分な関心を集められない可能性を懸念していた。

またCFIUSは、すでに出資や買収が完了した案件についても、より積極的に調査するようになっている。2016年にマッチングアプリ「グラインダー」を買収した北京崑崙万維科技は、CFIUSが特に「コンプロマット(弱みとなる情報)」を巡る安全保障上の懸念を表明したことから、売却先を探している。

米財務省が管轄するCFIUSは、深センの碳雲智能(iCarbonX)社が2017年に買収した患者ネットワーク「ペイシェンツ・ライク・ミー」を売却させた。このネットワークは、患者が同じような健康問題に悩む人たちを検索することができる。機微なデータを保有する                                                                                                                                                                                                                                                                            企業について、CFIUSは懸念を深めているのだ。

他の投資案件も、次の標的になりかねない。

中国の真格基金は、DNA編集実験の簡素化を可能にするゲノム工学のスタートアップ企業Synthegoが2017年に行った4100万ドルの資金調達に参加している。中国人寿保険のヘルスケアファンドは昨年、米マサチューセッツ州のバイオ企業XtalPiの4600万ドルの資金調達を主導した。XtalPiは、量子物理学とAI、クラウドコンピューティングを融合して薬品開発に役立てる事業に取り組んでいる。

<中国国内の変化は>

米企業による中国スタートアップ企業への投資規制は見通しが難しいが、同じようなリスクはある。

米国からのテクノロジー分野への投資は、中国にとってそれほど歓迎できるものではないという認識が広がりつつあると、ファイナンシャルアドバイザー2人は言う。これは、GGVキャピタルのように長年中国で投資してきたファンドにすら影響を与えかねない。

ロイターは5月、セコイア・キャピタルの中国法人が、投資部門のスタッフ20%を削減する計画と報じた。同社側は報道を否定している。

中国企業と投資家は、米政治家からの圧力にも目を配る必要がある。

個人向けドローンメーカーとしては世界最大の大疆創新科技有限公司(DJI)は2014─15年にかけ、米ベンチャーキャピタリストのセコイアやアクセル・パートナーズなどの支援を受けた。同社製ドローンが集めた情報は、DJIのクラウドに集約されるが、これが例えばセンシティブな地域や施設などの映像であれば安全保障問題に直結しかねない。

DJIは昨年秋、アトランタの電力会社サザン・カンパニー(SO.N)による電力網調査に自社のドローンが使われると発表した。クリス・バンホーレン米上院議員はBREAKINGVIEWSに対し、ドローンを含めて中国が米国のデータにアクセスすることは、プライバシーや安全保障を脅かすものだとして、トランプ政権に行動を求めた。

中国のベンチャーキャピタリストにとっては、自国内の投資競争が和らぐことになるかもしれない。中国のある投資家はBREAKINGVIEWSに対し、貿易摩擦が激化し、海外投資家の姿勢が慎重になったことで、中国に拠点を置くテクノロジー企業の価値が最大40%下がっていると話した。

米中関係の変化が、資金を出す側の投資家と、資金を求める側の企業の双方で、新たな勝ち組と負け組を生んでいることを示す一例だ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below