March 8, 2019 / 4:46 AM / 9 months ago

焦点:ファーウェイを結ぶ点と線、米当局「潜航捜査」の舞台裏

[6日 ロイター] - 米国の要請を受けたカナダ当局による昨年12月の突然の逮捕で、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]の孟晩舟(メン・ワンツォウ)副会長は、2大経済大国がぶつかる貿易戦争の中心的存在となった。

3月6日、米国の要請を受けたカナダ当局による昨年12月の突然の逮捕で、ファーウェイの孟晩舟副会長は、2大経済大国がぶつかる貿易戦争の中心的存在となった。写真はファーウェイのロゴと星条旗。2019年1月撮影(2019年 ロイター/Dado Ruvic)

トランプ米大統領は当時、ロイターとのインタビューで、対中通商交渉の妥結に資するなら、この件に介入すると発言。2月にも同様の考えを示した。

ファーウェイの最高財務責任者(CFO)を兼務する孟副会長。彼女の弁護士は6日、カナダの裁判所に対し、トランプ氏のこの発言を根拠に、容疑には政治的な要素があるとの懸念を持っていると伝えた。

しかし、ファーウェイがイランに対する米制裁を回避した疑いに対する米当局の捜査は、トランプ氏の通商政策に起因するものではない。ロイターは10人にのぼる捜査関係者に話を聞き、関連書類を閲覧。米当局はトランプ氏が中国に激しい貿易戦争を仕掛けるはるか前から、ファーウェイの活動を詳細に調べていたことが明らかになった。

中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)(0763.HK)(000063.SZ)に対する数年がかりの捜査を経て、米当局は同業のファーウェイに注目するようになった。その捜査は、空港を通過するファーウェイ社員の電子機器から集めた情報によるところが大きかった。

転換点は、2017年8月だったと関係者2人は証言する。米大統領選へのロシア介入疑惑の捜査監督者として知られるローゼンスタイン司法副長官が、ファーウェイの銀行詐欺疑惑に対する捜査の指揮を、ブルックリンの連邦検察の手にゆだねたのだ。

15カ月後、これがカナダでの孟氏拘束につながることになった。

ファーウェイとZTEに対する捜査を加速させたのは、6年前のロイターのスクープ記事だった。記事は両社によるイラン制裁違反疑惑の詳細や、イランとの取引でフロント企業の役割を果たした疑いのあるスカイコム社とファーウェイの緊密な関係について報じた。

ファーウェイの広報担当者は今回、ロイターの問い合わせに対し、制裁違反の容疑を否定。それ以上はコメントしなかった。孟氏は無実を主張している。イランへ違法に機器を輸出したことを認めているZTEにもコメントを求めたが、同社は応じなかった。

米司法省の広報官は、「訴追にあたり、一切の政治的介入なく、証拠と法の支配に基づき」捜査をしているとコメントした。

<空港で入手した証拠>

孟氏は今月1日、逮捕前に取り調べを受けたのは権利の侵害に当たるとしてカナダ政府などを提訴。訴えによると、彼女は2018年12月1日、バンクーバーの空港で飛行機を降りたところを呼び止められた。国境警備の当局者がパスポートを確認した上で、孟氏を別室に移動させた。

そこで、携帯電話2台とタブレット端末「iPad(アイパッド)」、私用のコンピューターを提出。パスワードも教えるよう求められ、担当官が機器の中身を確認したという。

ロイターは、当局が孟氏の端末機器からどのような情報を得たか把握できていない。ただ、孟氏や他の中国の通信機器メーカー幹部が所持品を国境警備当局に提出したのは、これが初めてではなかった。

米当局はファーウェイ訴追の数年前から、国内の空港を通過する通信機器メーカー幹部から捜査に資する情報を差し押さえていたと、ファーウェイとZTEへの捜査や、孟氏の訴追に詳しい複数の関係者は明かす。

例えば2014年、孟氏がニューヨークのケネディ国際空港から米国に入国しようとしたときのこと。米側の訴追内容によると、当局は孟氏が所有していた端末の1つに、ファーウェイとスカイコムの関係について、「通常のビジネス協力である」などとする応答要領が残されているのを発見した。

この時も孟氏は別室で追加検査を受け、電子機器を提出させられたと、事情に詳しい関係者は語る。端末は数時間後に返却され、孟氏は解放されたという。

また、同年9月12日、米当局は入国しようとしたZTEの当時のCFOを検査。米国が長年疑念を抱いてきた制裁対象の国々とファーウェイの取引を裏付ける情報が発見されたと、関係者は言う。

このCFOは、アシスタントとともにロンドンからボストンのローガン空港に到着した際に足止めされたという。

アシスタントが運んでいたレノボのノートパソコンには、4人の経営陣がサインした2011年8月25日付の機密文書が保存されていた。制裁対象国でプロジェクトを行うのに必要な製品を、米国で調達するフロント企業設立の必要性を確認する内容だった。

米当局者によると、このときの取り調べがZTEを追及する重要な証拠になったという。

問題の書類には、「F7」という企業が、制裁対象国での契約獲得のため、フロント企業を活用している実態も記されていた。F7とはファーウェイを指すと、ZTEやファーウェイの捜査に詳しい関係者は話す。

この書類は2016年3月、ZTEが米国内のサプライヤーとの取引を禁じられた際に、米商務省がホームページに掲載したものだ。米紙ニューヨークタイムズはその直後、ZTEによるF7の説明はファーウェイに合致すると報じた。

ロイターが閲覧した裁判書類やファーウェイの捜査に詳しい関係者によると、その1カ月後、商務省はファーウェイの米国法人に対し、米国技術のイラン輸出に関する情報の提出を求める召喚状を出した。

<ZTEからファーウェイへ>

関係者によると、ZTEの捜査が終結に向かいつつあった2017年2月14日、財務省や商務省、国土安全保障省や司法省から十数人が参加し、ワシントンでファーウェイ追及の方策について話し合った。

このときブルックリンの連邦検察が、ファーウェイと英金融大手HSBCとの関係を議論したという。HSBCは米国の資金洗浄禁止法や制裁法違反で、2017年末まで米検察によるいかなる捜査にも協力することを義務付けられていた。

HSBCは2016年末にファーウェイに関する内部調査を始めていた。ロイターが閲覧した資料によると、米当局者はワシントンでの会合から数カ月間、同行から情報提供を受けながら、スカイコムとファーウェイを関連付ける証拠を集めた。

調査では、孟氏が2013年にHSBCの行員と面会したことが判明。孟氏はその後、この行員にパワーポイントの資料を渡した。そこにはファーウェイとスカイコムの関係が記載されていたが、米側の起訴内容は、その記述を不正確なものだとしている。

HSBCはロイターに対し、米司法省の要請に応じて情報を提供したと回答した。

ワシントンの検察当局はこれと並行し、ファーウェイに対するより伝統的な輸出管理の捜査を行った。この中には、ロイターが2012年に報じた、コンピューターを違法にイランに輸出しようとした疑いも含まれていた。

2017年4月、ファーウェイの米国法人に対して大陪審の召喚状が出され、この問題が刑事事件として訴追されることが初めて明確に示された。

これを察知したファーウェイは、イランとの取引を知る中国人従業員を米国から出国させたり、証拠を隠滅したと、検察側は指摘している。孟氏など幹部は、米国への渡航を見合わせるようになったという。

ファーウェイ捜査に詳しい関係者2人によると、ローゼンスタイン司法副長官は2017年夏、ブルックリンの連邦検察に訴追を任せることを決め、ワシントンの検察は手を引いた。ブルックリン検察は、すでに司法省の資金洗浄対応部署と連携しており、他の省庁の担当者も、ブルックリン検察のチームに合流した。

法律の専門家によると、違法にイランへ輸出された米製品の多くは米当局の捜査権限が及ばないため、銀行詐欺のルートの方が、訴追に早くたどり着ける可能性があったという。また、制裁違反や輸出違反より銀行詐欺の方が、他国政府に容疑者の逮捕と身柄の引き渡しを要請できる可能性が高く、時効も長かったという。

孟氏とファーウェイは、銀行をだまして不正送金した詐欺の罪で起訴されている。訴追書類によると、前出のパワーポイント資料の「数々の不正確」な記述が、孟氏の訴追内容の柱になっているという。

3月6日、カナダ、バンクーバーで裁判所から帰宅した、華為技術の孟晩舟副会長(2019年 ロイター/Ben Nelms)

事件の指揮を執るようになってから12カ月後、ブルックリン検察は秘密裡に孟氏の逮捕状を取得した。

その約4カ月後、孟氏が12月1日にメキシコに向かう途中でバンクーバーに立ち寄るとの情報が入り、カナダ当局に空港で拘束するよう要請した。

(翻訳:山口香子、編集:久保信博)

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