June 17, 2019 / 4:37 AM / a month ago

焦点:米国のさらなる対中関税、「超異次元」の衝撃生む恐れ

「東京 17日 ロイター」 - 米中貿易摩擦がエスカレートする動きを見せ、世界経済や国内の景気、企業に与える衝撃が予想以上に深刻化するとの声が、民間シンクタンクから出ている。

 6月17日、米中貿易摩擦がエスカレートする動きを見せ、世界経済や国内の景気、企業に与える衝撃が予想以上に深刻化するとの声が、民間シンクタンクから出ている。写真は江蘇省の港で10日撮影(2019年 ロイター/Stringer)

特に米国による第4弾(対象3250億ドル)の対中関税引き上げは「スーパー異次元」の打撃が生じるとの危惧もあり、日本政府には、景気悪化に対する「財政出動」を超える議論が求められる。

米国は5月10日、中国からの輸入品2000億ドル相当への関税率を10%から25%に引き上げた。新たに3250億ドル相当にも追加関税を発動する前提として、17日から公聴会手続きを開始する。すでに公表した華為技術(ファーウェイ)HWT.ULへの禁輸も含め、対中強硬姿勢を強めている。 

政府・日銀は当初、足元で減速している中国経済が、今年後半には回復すると見込んでいた。しかし、米中摩擦の激化を受けて、1)回復の角度が緩やかになる、2)回復時期が後ずれする、3)回復することなく落ち込むーーのうち、どのシナリオのがい然性が高いか分析を進めている。

現時点では「これまでみていたリスク、不確実性が高まったとしか言いようがない」(政府関係者)としており、経済への影響は読み切れていない。

<第4弾発動なら中国経済1.9%下押し>

「3250億ドルを対象とする弟4弾が発動されると、その影響はスーパー異次元」―――。ニッセイ基礎研究所研究理事・チーフエコノミストの矢嶋康次氏は、そのダメージの大きさをこう表現する。

みずほ総合研究所の試算によれば、米中間の貿易全てに25%の関税が課された場合、世界経済の成長率は約0.7%ポイント下押しされ、米国は約0.8%ポイント、中国は約1.9%ポイント、日本は約0.3%ポイントの下方屈折になる。

ただ、実際には、金融市場の反応や心理的な影響、グローバルサプライチェーンの遮断など、試算を超える影響がでてくる可能性があるとみられている。

第4弾では、スマートフォンの部品やパソコンのデバイスなども対象になる。ある財界幹部は「明らかに日本企業へ影響が広がる。しかもサプライチェーンに影響が出るだろう」と予測。生産拠点の変更などを含めて、企業にとってコストがかかる対応が必要になってくると指摘した。

日銀の黒田東彦総裁も5月27日の講演で、関税引き上げによって貿易コストが上昇することに加え「製造拠点やグローバル・サプライ・チェーンの見直しを余儀なくされることなどによって企業活動が抑制されるリスクは、引き続き高いと言わざるを得ない」と懸念を示している。

野村総合研究所・エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、中国勢と米国勢に世界が2分されることに懸念を示す。GDP世界第2位の中国に友好国が加わると、半分近くを占めるかもしれないとし「日本にとっては市場が狭められるし、世界市場としても効率が悪くなる。本来は適材適所でその国で強みになるものを作るのが国際分業だが、それを断ち切ってしまう」と、米中摩擦の副作用の強さに警戒感を示した。

日本総研上席主任研究員の三浦有史氏は、より警戒すべきは、第2波ともいえる周辺アジア諸国の経済減速にあると指摘する。世界各国が中国経由で輸出している品目の付加価値をGDP対比で試算すると、GDP規模の大きな日本は0.2%と小さい。しかし、アジア周辺国への影響などを踏まえると「日本にとっては、これらの国への付加価値輸出額は輸出全体の17.2%を占め、その規模はGDP比で2.1%と、米国と中国の2.9%に次ぐ規模」と、大きくなる。

<泥沼化のシナリオ>

報復合戦も泥沼化に進む懸念をはらんでいる。2000億ドル相当の対中関税の報復として、中国は米国からの600億ドル相当の輸入品に対する追加関税を最大25%に引き上げた。ただ、米国が3250億ドルに関税引き上げを拡大した場合、中国は、関税で対抗することができなくなる。

矢嶋氏は「関税ではない報復合戦の違う土台に行かなければならない。関税以外のことをやられれば、米国も関税以外でやり返し、泥沼化する」と懸念している。

すでに中国は、米国の関税引き上げへの対抗手段としてレアアースの輸出制限に踏み切るのではないかとの思惑がマーケットで浮上している。

人民元切り下げや、米国への渡航制限などに広がれば影響は一段と広がる。中国が景気減速に対抗するために、米国が問題視している「補助金」などを総動員して景気対策を行えば、米中対立を一段と激化させかねない。

中国が米国からの調達を日本に切り替えることで、日本が「漁夫の利」を得るとの楽観論も専門家の一部から出ているが、そうした短期的な対応の先に、日本にとって厳しい現実が待つとの予測もある。

トランプ米大統領は、今月28、29日の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせ、中国の習近平国家主席と通商合意に達しなかった場合、中国輸入品への追加の報復関税を発動する用意があると述べている。

政府内には、交渉の長期化は覚悟するものの、経済への打撃を最小限にする意味からも「G20での決裂は、避けたいシナリオ」との声が漏れてくる。

政府は、経済財政運営の指針(骨太方針)で、米中貿易摩擦を念頭に「通商問題が世界経済に与える影響や、中国経済の先行きに注視する必要がある」との景気認識を盛り込んだ。「リスクが顕在化すれば、日本経済の回復が腰折れしかねない」との認識も併せて示し、成長持続へあらゆる政策を総動員する姿勢を打ち出した。

しかし、この発想は「景気が悪化すれば財政出動」という従来型の対応の域を出ない。「新冷戦」とも言われる米中対立を起点とした景気への影響に対しては、単なる「景気対策」ではなく、日本の立ち位置を定めることが求められている。

 編集:田巻一彦

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below