July 5, 2018 / 12:50 AM / 9 days ago

焦点:米シリコンバレーに浸透する中国資本、起業家のリスクに

[サンフランシスコ 29日 ロイター] - ベンチャー投資を手掛けるダンファ・キャピタルは、ドローン、人工知能(AI)、サイバーセキュリティなどの分野において、米シリコンバレーで最も有望なスタートアップ数社に出資している。

 6月29日、中国資本が自国企業を買収することに対して強硬姿勢をさらに強めている米国だが、ベンチャー投資については黙認してきた。だがこの状況が変わるかもしれない。写真は2017年撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

米テクノロジー系起業の中心地となっているスタンフォード大学のすぐそばに本社を置くダンファだが、中国政府の支援を受けて設立され、同国から資金を受け入れている。

こうした状況はダンファに限った話ではない。シリコンバレーにある20社以上のベンチャーキャピタルが、中国の政府系ファンドや国営企業と密接な関係にあることが、ロイターの業界関係者への取材や公開資料によって明らかになった。

米国政府は、自国の上場企業を中国資本が買収することに対して強硬姿勢をさらに強めているが、新興企業向け投資については、たとえ中国政府の支援を受ける企業によるものであっても、ほぼ黙認してきた。

だがこの状況が変わるかもしれない。

自国企業に対する海外勢の投資を阻止できる米国政府の権限を大幅に拡大する法案を議会が成立させつつあるからだ。ベンチャーキャピタルによる投資も例外ではない。

この新法では、工業的に「重要な」技術を中心として、所定の基準を下回る投資は審査対象外としていた従来の規定を撤廃。それにより審査対象を決定する政府の対米外国投資委員会(CFIUS)に、幅広い裁量を与えるものだ。

「スタートアップ企業の世界において、米国の安全保障体制という点で懸念すべき技術流出が数多く生じている、という認識がある」と元CFIUSの委員で、現在は同委員会の審査対象となった企業の弁護士を務めるスティーブン・ハイフェッツ氏は語る。

最新の法案では、パッシブ運用を行う投資家は対象外としており、これにはベンチャーキャピタル企業を支援するリミテッド・パートナーの多くが含まれる。だが、投資先事業に対して何らかの支配権を持つようなリミテッド・パートナーや、マネージング・パートナーが「外国人」の企業については、厳しい審査の対象になる可能性がある。

伝統的にベンチャーキャピタル資金の大半を提供してきた大学の寄贈基金やファミリーオフィスは、通常、多くのリミテッド・パートナーの1つであり、仮に投資先のスタートアップの経営に関与する場合があるとしても、最低限の範囲にとどまっている。

中国資本が、大規模なベンチャーファンドに対してパッシブ投資を行っている場合もある。

だが業界関係者によれば、中国政府系ファンドが支援先である小規模ベンチャーキャピタルに対する出資比率を引き上げることで強い影響力を行使する例も多いという。それにより、中国政府系ファンドは、スタートアップの情報提供を求めたり、中国でのオフィス開設を支援できる立場を得ているが、こうなると、出資を受けたスタートアップはCFIUSの審査対象になる可能性がある。

規制による取り締まりを受ける可能性が出てきたことで、スタートアップ企業のあいだでは懸念が広がっている。ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツは、スタートアップ企業に対し、「中国に支援された投資家から資金を調達すれば、政府による厳しい審査対象になるリスクが生じる」と助言していると関係者は指摘。

「一部のスタートアップにとっては、中国から資金調達を受ける道が閉ざされつつあるのかもしれない」とAI開発企業スカイマインドの共同創業者クリス・ニコルソン氏は語る。同社は中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)(0700.HK)及び香港のファミリーオフィスから資金調達している。

<センシティブな分野>

最近まで、ベンチャーキャピタルがどこから原資を得ているかについて、シリコンバレーでは問題視されなかった。出資を受けた投資家の開示をベンチャーキャピタルは義務付けられておらず、起業家側がそれを尋ねることもめったにない。仲介業者からは、CFIUSがスタートアップ投資を把握することができるか疑問視する声も上がっている。

ダンファ・キャピタルは、北京市政府が資金を提供する国営企業、中関村発展集団の支援を受けており、最もセンシティブな技術セクターのいくつかの企業に出資している。

出資先の1つで、データ管理やセキュリティ業務を手掛けるCohesityの顧客には、米国のエネルギー省や空軍も含まれている。

ドローン開発のスタートアップであるフラーティは5月、米運輸省の審査を経て、米航空交通にドローンを安全に組み込むための同省プロジェクトに参加することになったが、フラーティもダンファの投資ポートフォリオに含まれている。

ダンファの創業者でスタンフォード大学の物理学教授を務めるショウチェン・ザン氏は、ロイターの詳細な質問に対して回答は控えたが、「われわれのリミテッド・パートナーの大半は、ニューヨーク証券取引所や香港証券取引所の上場企業だ。われわれはもちろん、あらゆる法令を完全に順守するつもりだ」とメールで説明した。

Cohesityはコメントしなかった。

フラーティの広報担当者は、ダンファによる投資は少数株主としてのもので、情報取得の権利や取締役ポストは伴わず、フラーティの経営に関与していないと述べた。「中国政府からの資金であると知りつつ投資を受けることはない。われわれはデラウェア州法人でシリコンバレーに本拠を置くベンチャーキャピタル企業からの投資を受けている」

「投資家が何らかの形で政府機関からの支援を受けている場合に、将来的に問題が生じないよう、その情報開示が新たに義務付けられるならば、当社はこれを支持するだろう」と付け加えた。

何層ものファンドを介して投資する「ファンド・オブ・ファンズ」と呼ばれる手法によって、資金の出所を知ることが、ほぼ不可能になってしまうリスクがある。

中国東部の杭州市政府から支援を受けたウェストレイク・ベンチャーズは、少なくとも10社のシリコンバレーに本拠を置くベンチャーキャピタルに投資しているが、その1つがパロアルトにあるアミノ・キャピタルだ。

アミノ・キャピタルの創業者でマネージング・パートナーを務めるラリー・リー氏は、2012年に同ファンドを立ち上げた際、ウェストレイクが申し出た出資を受け入れたという。当時、大手年金基金や大学の寄贈基金から資金を得るほどの知名度がないと感じていたという。

「ハーバード大学やイェール大学の寄贈基金に頼るつもりはなかった。ミッション・インポッシブルのように思えたからだ」とリー氏は言う。「起業には何かしら特別な資金源を見つける必要がある」

中国の支援を受けたファンドの1つが、蘇州市政府の投資部門に属するオリザ・ベンチャーズで、AIや自動運転関係のスタートアップを支援している。国営自動車会社である上海汽車(SAIC)のベンチャー投資部門SAICキャピタルは、シリコンバレーで自動運転、地図開発、人工知能関係のスタートアップに投資している。

起業支援で有名なベンチャーキャピタル「500スタートアップス」でさえ、主要ファンドの一部資金を杭州市政府から調達している。

500スタートアップスとオリザはコメントを拒否している。SAICにもコメントを求めたが回答は得られなかった。

2016年以降、資本規制によって中国資本の米国流入は減速している。だが関係者によれば、不動産などのセクターに比べて、ベンチャーキャピタル投資は回復力が高いという。その要因の1つは、中国政府が国内ハイテク産業の改善に力を入れていることにある。

<至高の宝石>

「中国系のベンチャー投資家が『米国のイノベーションにおける至高の宝石』に手を出しつつある」と警告する報告書を、国防総省が昨年発表。中国の真意に疑念を抱く米国の政治家を大いに刺激した。

上院に提出されたCFIUS改革法案を提案したジョン・コーニン共和党上院議員(テキサス州選出)は、国防総省のこの報告書を参考にしたと、事情に詳しい関係者は説明する。コーニン上院議員の広報担当者によれば、同議員は「中国国家に支援されたベンチャーキャピタル投資に対し、特に懸念を抱いている」という。

だが一方で、多くの民間セクターの専門家は、同報告書があまりにも単純で、恐怖感をあおっていると、批判している。

米テクノロジー企業に対する中国投資を広範囲で規制すると表明していたトランプ大統領だが、少なくとも今のところは、その職務はCFIUSに任せるとして、やや姿勢を後退させている。だが、もし議会での法案成立が遅れるようであれば、行政トップとしての権限を行使すると警告している。

(翻訳:エァクレーレン)

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