for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:岐路を迎えたドル高局面、ヘッジファンドは強気維持

[オーランド(米フロリダ州) 11日 ロイター] - この4カ月で5%上昇してきたドルが岐路に差し掛かっている。多くの投資家が、米連邦準備理事会(FRB)による債券買い入れ縮小(テーパリング)の規模と将来の利上げについてどの程度織り込めば良いのか、また米国債利回りがさらに上がるとして、その理由がドルにとってプラスかマイナスかに頭を悩ませているからだ。

 10月11日、この4カ月で5%上昇してきたドルが岐路に差し掛かっている。多くの投資家が、米連邦準備理事会(FRB)による債券買い入れ縮小(テーパリング)の規模と将来の利上げについてどの程度織り込めば良いのか、また米国債利回りがさらに上がるとして、その理由がドルにとってプラスかマイナスかに頭を悩ませているからだ。写真は米ドル紙幣、2017年6月撮影(2021年 ロイター/Thomas White/Illustration)

ところがヘッジファンドに迷いはなく、活発なドル買いを続けている。

2008年の金融危機後に主要中央銀行が打ち出した政策を「より低い金利をより長く(Lower for Longer)」と要約できるなら、今の投機筋のドル取引姿勢は「より買い持ちにしてより長く(Longer for Longer)」と言えそうだ。

米通貨先物市場のポジションに関する直近のデータによると、ヘッジファンドを含む投機筋は5日に終わった週まで12週間連続で、幅広い通貨に対してドルの買い持ちを大幅に拡大していることが分かる。足元のドル買い持ち規模は225億ドルと、2019年6月以降で最大を記録。前週からの72億ドルという増加幅は、過去3年余りで3番目の大きさだった。

投機筋のドル強気ムードはかつてないほど裾野が広がっている。ユーロが売り持ちに転じたのは昨年3月以来初めてで、ポンドも1カ月ぶりに売り持ちとなった。またブラジルレアルの買い持ちは解消され、メキシコペソの売り持ちはこの4年半で最大に膨らんだ。

ここで外為市場の全ての投機筋が見定める必要があるのは、名目、実質、相対価値というそれぞれの見地からの米国債利回り上昇であるのは間違いない。

先週、米10年国債利回りの上昇幅は15ベーシスポイント(bp)と2月以降で最も大幅になり、現在の水準は6月以来の1.60%超えだ。一方、主要6通貨に対するドル指数は5週間上昇を続け、1年ぶり高値に近づいている。

そして今、問題になるのは米国債利回りを押し上げている要因が一段のドル高を後押しするのか、そうでないかという点だ。

最近の米国債利回り上昇は、供給網を巡るショックやモノ不足、エネルギー価格高騰に伴う物価圧力の高まりが主導している。市場の予想物価の指標となるブレークイーブン・インフレ率(BEI)はイールドカーブ全体で高まり、5月に付けた今年のピークに迫りつつある。

この間、9月の非農業部門雇用者の伸びが期待外れに終わったことに象徴されるように、中期的な米経済成長見通しは悪化した。つまり「スタグフレーション」のシナリオが浮上したのだ。

ゴールドマン・サックスのアナリスト、ザック・パンデル氏と同氏のチームはこのスタグフレーション・シナリオについて、総じてドルにプラスとなる環境だと主張。物価高が今のように供給制約に起因している場合、ドルは堅調に推移する傾向があるが、成長見通し好転に基づくインフレ期待の高まりならドルは主要通貨に対して下落すると説明する。ゴールドマンは、今後数カ月のうちに新型コロナウイルスの感染者が減少して経済活動が全面的に再開すれば、想定される展開はまさに後者であるとして、年末にかけてはドルが「緩やかに弱含む」とみている。

これまでにドル買い持ちを積み上げた多くのトレーダーには、単純に利益確定売りに転じる動機があることも、少なくとも短期的にはドルの大幅な上昇を抑える可能性があるだろう。

ただMUFGのデレク・ハルペニー氏と同氏のチームは、投機筋の225億ドルという買い持ち規模は、パンデミック前のポジションと比較すればまだ行き過ぎではないと指摘する。その言い分には一理あり、19年5月に投機筋が保有していたドル買い持ちは350億ドル相当だった。

ハルペニー氏らは、9月雇用者数が予想を下回ってもFRBのテーパリング日程に変化はなく、11月には計画の概要が示されるはずだとも強調。モメンタムとファンダメンタルズの両面で、年末にかけてドルの強含みが示唆されるとの見方を示した。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up