February 16, 2019 / 11:22 PM / 3 months ago

アングル:米国企業、女性登用拡大の一方で根深い「白人偏重」

[ボストン/ニューヨーク 13日 ロイター] - 米国企業の取締役会は、多様性の確保という点でアンバランスな進捗を見せている。女性の進出が拡大している一方で、人種・民族的なマイノリティが取締役に就任する例は依然として珍しい。

2月13日、米国企業の取締役会は、多様性の確保という点でアンバランスな進捗を見せている。フランクフルトの銀行本店の幹部フロアのトイレで2012年2月撮影(2019年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

ロイターの委託を受けたISSアナリティクスの試算によれば、ラッセル3000指数の構成銘柄に含まれる企業では、新任の取締役に占める女性の割合が、2013─15年の21%に対して、2016─18年には27%まで拡大した。2018年単独では32%に上っている。

総人口における男女比がそのまま反映されているわけではないとはいえ、女性の増加率は、アフリカ系米国人やラテン系米国人のそれに比べるとかなり大きい。新任取締役に占めるアフリカ系・ラテン系の比率は、2016─18年には各々5%、2%に留まり、2013─15年に比べてほとんど変化していない。

長年にわたり、米国企業の取締役会は白人男性に支配されていた。偏見や閉鎖的な人脈といった理由により、女性やマイノリティの人材を必ずしも登用しなかったからである。企業幹部のなかには、多様なバックグラウンドから取締役にふさわしい人材を探すのは難しく、また候補者の人種・民族の見極めが難しい場合さえある、という声もある。

企業取締役や専門家らによれば、現在女性の取締役就任が増えているのは、1つには、影響力の強い投資会社や政治家からのプレッシャーに対応するためだという。多様性を示しやすすいという手軽さも理由の1つだ。女性の数は簡単に把握できるし、人材登用の母集団としても大きいからだ。

女性の取締役就任を推進する人々は、ジェンダー多様性によって、財務実績の向上や社会的イメージの改善がもたらされる可能性があり、国内人口の半分以上が女性であることを考えれば当然の流れであると主張している。

企業取締役会にアドバイスを提供している法律事務所グッドウィンの経営パートナーであるボストンのジョー・ジョンソン氏は、「企業の大株主はみなジェンダーに注意を払っている」と言う。そして、「次はマイノリティに関心が向かうだろう」と予測する。

11月に不動産投資信託会社アンワース・モーゲージ・アセット(ANH)の取締役に就任したドミニク・ミーレ氏は、企業が取締役会に女性を優先的に追加しようとしているのは、セクハラや性的暴行を訴える「#MeToo(ミートゥー)」運動のような要因を背景に、主要株主が取締役選任を支持しないことを恐れているからだという。

「取締役会の顔ぶれに主要株主が難色を示したら、大変なことになる」とミーレ氏は言う。

カリフォルニア州の新たな法律では、同州に本社を置く6人以上の取締役がいる上場企業に対し、2021年末までに少なくとも取締役の3人を女性とすることを義務付けている。全米州議会議員連盟によれば、ジェンダーに関して同様の措置を可決、あるいは検討中の州はカリフォルニアの他に少なくとも4つあるが、人種に関する措置は見られないという。

前述の法律の起草者であるカリフォルニア州議会のハンナベス・ジャクソン上院議員(民主党)は、「CEO執務室という男の城」に風穴を開けることを狙ったものだという。

<「女性不在」は警告サイン>

少なくともジェンダーに関する多様性に対する要求という点では、もっと明確な姿勢を示している国もある。

欧州では複数の国が女性枠を設けている。たとえばフランスでは最も規模の大きい上場企業については取締役の40%を女性とするよう義務付けているし、ドイツでは30%という要件を定めている。英国では、2020年末までに最大手の上場企業350社の取締役の3分の1を女性にするという目標が、政府支援のもとで定められている。

反差別運動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」や移民制度改革などの重要課題についても、多様性のある取締役会の方が適切に対応しやすくなると、米国で取締役会の多様性を支持する人々は主張している。

多様性は、全米首位のブラックロック(BLK.N)や同3位のステート・ストリート(STT.N)などの大手の資産運用会社にとって、一種のキャッチフレーズになっている。

例えばステート・ストリートは2017年に、ウォール街の近くに「恐れを知らぬ少女」像を設置し、ジェンダー多様性と、女性リーダー率いる企業で構成された上場投資信託(ETF)を宣伝した。一方、ブラックロックの議決権行使ガイドラインでは、少なくとも2人の女性取締役を置くよう企業に促している。だが、マイノリティの立場を代表するという点では目標数値が示されていない。

いくつかの調査において、ジェンダー多様性と財務実績の向上との相関が示されている。恐らくこれは、そうした企業では従業員のやる気が高まり、離職率が低下する可能性が高いからだろう。だが、女性取締役の多さが、良くも悪くも業績には何の関係もないことを示唆する調査もある。

コンサルタント会社プライスウォーターハウスクーパーズが10月に行った、企業取締役714人(うち5分の4が男性)を対象とするアンケート調査では、多様性によって取締役会のパフォーマンスが向上したという回答が84%に達した。だが、「取締役会の多様性向上はポリティカル・コレクトネスへの配慮によるものだ」には、「やや同意する」も含めて52%が同意している。

<求められる範囲の拡大>

一部の企業では、詳細に差はあるものの、株主総会招集通知のなかで多様性に関する情報を提供している。

昨年、消費者金融企業のリージョナル・マネジメント(RM.N)は、8人の取締役のうち、どの4人が「白人系」で、どの4人が「ヒスパニック/ラテン系」であるかを示す分布図を掲載した。

リージョナルの取締役を務めるロエル・カンポス氏は、同社の顧客の多くはラテン系であるため、投資家も恐らくこうした詳細な追加情報を求めている、と述べた。

「こうした点を明らかにしていくことで、投資家への情報提供が改善され、我が社の多様性が好業績につながるようなものになっているか投資家自身が判断できるようになると考えている」とカンポス氏は言う。

現状では、人口構成比から考えると、マイノリティが企業の取締役会に占める比率は低い。連邦国勢調査局による最近の推定では、全米の人口のうち、アフリカ系米国人の比率は13%、「ヒスパニック/ラテン系」は18%となっている。

ISSアナリティクスが分析した数値は、ラッセル3000の構成銘柄企業で毎年新たに就任する2000人ほどの取締役を中心としている。ISSアナリティクスの試算によれば、現職の取締役は約2万1000人であり、そのうち女性の比率は約18%、マイノリティの比率は10%で、そのうち黒人が3.2%、ラテン系1.7%となっている。

コンサルティング会社デロイトのデボラ・デハース、バイスチェアマンによれば、デロイトのデータからは、マイノリティの取締役は非マイノリティの取締役よりも多くの企業の取締役を掛け持ちする傾向が見られ、複数の企業が共通のマイノリティ人材に頼っていることがうかがわれる。

「人材を探す範囲を広げる必要がある」とデハース氏は言う。

シカゴに本拠を置く銀行ノーザン・トラスト(NTRS.O)では、14人の取締役のうち、3人がアフリカ系、1人がラテン系である。取締役会では常に有力候補者のリストを用意してあり、会合があるたびに、欠員の有無にかかわらず議題にしているという。

「いざ新しい取締役を追加するときでも、白紙の状態から始めなくて済む」とマイケル・オグラディCEOは言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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