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アングル:月着陸はボーイングか新興企業か、米新政権が握る命運

[ワシントン/シアトル 30日 ロイター] - 米国の次期大統領の座を争うトランプ氏とバイデン氏の政策の違いは、地球を飛び出し、宇宙の領域にまで及んでいる。

 10月30日、米国の次期大統領の座を争うトランプ氏とバイデン氏の政策の違いは、地球を飛び出し、宇宙の領域にまで及んでいる。写真は10月2日、カリフォルニア州パサデナで撮影した月(2020年 ロイター/Mario Anzuoni)

共和党候補であるトランプ大統領は世界の宇宙開発競争に勝つとして2024年の月面着陸を目指す「アルテミス計画」を打ち出す一方、国際的な共同ミッション「国際宇宙ステーション(ISS)」への米国の資金援助を25年で終わりにし、ISS運営は民間宇宙企業に移管させることを狙っている。

一方、民主党候補のバイデン前副大統領の宇宙政策に詳しい関係者によると、同氏はトランプ提案とは異なり、月面着陸計画の延期を求めるとともに、ISSへの援助については延長を提案する可能性が大きい。

月面着陸計画が延期されれば、ボーイングBA.Nが開発する大型ロケット「SLS」の長期的な運命に暗雲が垂れ込める可能性もある。今はちょうど、イーロン・マスク氏のスペースXや、ジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジンが早ければ来年にも、ボーイングと競合するロケットを商業化させようと奔走しているところだ。

ISSへの援助が10年延長されれば、これはボーイングにとって大きな浮揚効果になる。年間2億2500万ドル(約235億9000万円)のISSとの現在の契約は24年で失効するし、同社は新型コロナウイルスの感染拡大や737MAXの墜落事故後の運航停止で資金的な苦境にある。

ボーイングとスペースXは既に、オバマ前政権で始まった計画のもと、ISSに宇宙飛行士輸送の宇宙船を供給している。この計画はトランプ氏もバイデン氏も支持している。

月面着陸計画が遅延すれば、こうした企業が獲得を目指す着陸船や関連機器の契約は先送りなるだろう。しかし、その場合でもバイデン氏の政策は、ボーイングのような伝統的な宇宙防衛企業と、スペースXのような低価格で再使用可能なロケットシステムと宇宙船を約束する新興宇宙企業との間の幅広い競争を促すことになりそうだ。

<継続性の要請>

オバマ前政権の米航空宇宙局(NASA)幹部で、現在は米航空宇宙産業協会の副会長のマイク・フレンチ氏はロイターのインタビューで、商業宇宙産業にとっては「継続性が鍵になる」と語る。「構想を今ぐらつかせれば、面々と続いてきた歴史的な偉業や、NASAがこれまで目にしてきた強力で持続的な超党派の支援が危機にさらされる」という。

バイデン陣営の科学委員会ではNASAの元幹部や科学者など約20人がボランティア集団として集まり、新大統領の宇宙政策の構想立案を非公式に助けている。その多くはオバマ政権で働いた経験があり、政権移行チームか新政権で重要な役割を担うことになる。ロイターはこのうち3人に取材したほかロビイストや業界幹部、NASA元幹部ら10人超から話を聞いた。

ボランティア集団メンバーはNASA地球科学予算の増額や他国との提携に政権からの支援が高まるよう望んでいる。ただ、彼らは、こうしたバイデン氏の宇宙政策はまだ形を作る段階であり、同氏陣営にはコロナや失業といった、より優先すべき危急の問題がある、とも強調した。

<大型ロケット開発で意見割れる>

もっとも複数の筋によると、バイデン陣営の宇宙政策の集団はボーイングのSLSにどう対応していくかで意見が割れている。

この大型ロケットは開発遅延や費用の超過に苦しんできた。一方で、アラバマ州やカリフォルニア州の数万人の雇用を支える。支持派はNASA探査計画の柱とも位置付けているし、トランプ氏の設定した24年までにこの計画を達成するなら、SLSが唯一の道とも見なされている。

反対派に言わせれば、SLSの技術は古くなりつつあり、1回当たりの打ち上げ費用も10億ドル以上で、ホワイトハウスか議会から公式に計画見直しが持ち出されるのは必至。ことにスペースXやブルー・オリジンが新型ロケットを低費用で提供できれば、なおさらだという。

スペースXの「ファルコンヘビー」は1回当たり費用は最低9000万ドルだ。ただし、出力は依然劣る。ボーイング社系のユナイテデド・ローンチ・アライアンスによる「デルタVIヘビー」は約3億5000万ドルかかる。

2人の消息筋によると、バイデン氏の宇宙政策がSLS寄りになるか、あるいは新興宇宙企業の製品寄りになるかは、バイデン氏がNASA長官に誰を選ぶかに大きくかかってくる見通しで、バイデン陣営は女性長官の起用を考えているという。

NASAで有人飛行部門を率いた元幹部のダグ・ロベロ氏によると、NASAは短期的には、SLSが月への有人飛行の唯一の方法とみている。「でも、その方向が果たして長期的に続くだろうか」と疑問を投げ掛けた。

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