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アングル:行間読ませる「トランプ話法」の功罪
February 21, 2016 / 1:59 AM / 2 years ago

アングル:行間読ませる「トランプ話法」の功罪

Emily Flitter

 2月16日、ドナルド・トランプ氏は、彼が実際に口にしない部分で多くを物語っている。米大統領選の共和党候補指名を狙うトランプ氏は、演説のなかで自分の考えを最後まで言い切らないことが多い。写真は9日、ニューハンプシャー州予備選で勝利演説する同氏(2016年 ロイター/Jim Bourg)

[ニューヨーク 16日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏は、彼が実際に口にしない部分で多くを物語っている。米大統領選の共和党候補指名を狙うトランプ氏は、演説のなかで自分の考えを最後まで言い切らないことが多い。

突然言葉を切ったり、厳密な表現の代わりに曖昧な表現を使ったりする。中途半端な表現を使うのは、彼がいいかげんだからではない。

これは「エンテュメーマ(省略三段論法)」と呼ばれるもので、説得力のある会話スタイルの柱となるレトリック(修辞学)だ。その効果で、億万長者であるトランプ氏は、2016年11月の大統領選挙を前にした全国規模の世論調査で首位に躍り出た。

支持者にとって、トランプ氏の政治家としての話しぶりは他の誰にも似ていない。彼は遠慮なく自分の考えを語り、ためらいもなくライバルを中傷し、台本に頼っていないように見える。特に、自分の考えを語る途中で言葉を濁したり、演説のなかに曖昧な表現をちりばめたりする場合はなおさらだ。

例として、先日行われた共和党の公開討論会でのコメントを見てみよう。このなかで彼は、イスラム教徒を一時的に入国禁止とする自身の提案を擁護している。「私はイスラム教徒について話した」と彼は言う。「われわれは一時的に何か(something)しなければならない。なぜなら、何か(something)良からぬことが起きているからだ」

トランプ氏が何を言っているのか、その解釈は聴く者に委ねられている。修辞学を専門とする複数の教授によれば、これはつまり、支持者は実質的に彼の発言を自分自身の信念に合わせて解釈できるということだという。また、意識的か否かはともかく、これによってトランプ氏は、ライバルが彼を攻撃するための言質を取られることを避けられる。

厳密には、エンテュメーマとは、三段論法のうち少なくとも一つの前提を表明しないままにしておく推論方式である。このコンセプト自体は目新しいものではない。古代ギリシャの哲学者アリストテレスが解説しているし、過去の米国政治においても用いられてきた。

実際に、エンテュメーマはさまざまな形で現れる。ドラマチックな効果をもたらす間や、不完全な文、トランプ氏が用いる穴埋め式の「何か(something)」などがあると、米政治家などによる演説を研究している専門家は指摘する。いずれのケースでも、空白を埋めるのは聴く側だ。

トランプ氏は、フォックス・ニュースの番組司会者メギン・ケリー氏や、一時はライバルだったカーリー・フィオリーナ氏を攻撃するときも、この手法を使っていた。ニューヨーク市におけるモスク建設に反対するときも使った。移民問題から貿易紛争に至るまで、さまざまなテーマについて語るときに、この手法を日常的に駆使しているのだ。

ケリー氏を攻撃した例では、トランプ氏はテレビ放映された討論の際に両者のあいだで交わされた激しいやり取りについて語りつつ、彼女は「彼女の目から血が出ていた、他のどこかからも血が出ていた」と述べた。

この発言は多くの人々の憤激を招いた。トランプ氏は、ケリー氏が生理中でホルモンの影響を受けて合理性を欠いていたと言おうとした、というのが彼らの結論である。トランプ氏はそうした趣旨を否定し、支持者は、トランプ氏はそのような言葉を口にしていないと弁護した。

聴く側に解釈を委ねるトランプ氏の習癖は今に始まったことではない。大統領選出馬よりだいぶ前に行われたインタビューの記録を見ても明らかである。意識的にやっているのかどうかは分からない。

広報担当者のホープ・ヒックス氏によれば、これは競争的な精神の表われなのだという。「トランプ氏の演説は一局のチェスのようだと人は言います。偉大な才能が織りなす複雑な織物のようだと」と彼女は言う。

<レトリックの逆効果>

米ベイラー大学で修辞学を研究するマーティン・メドハースト教授によれば、エンテュメーマは聴く側に強い影響を及ぼしうるという。「心理的に相手を巻き込むことができ、相手が自分自身を説得するようにすることで、説得しやすくなる」と同教授は指摘する。

だが、こうしたレトリックにはリスクも伴う。特に、不完全な形で示した考えがあまりにも曖昧なせいで、聴く側が、肯定的もしくは否定的いずれかの言明で補ってしまう場合は危ない。

たとえば1月29日の演説で、トランプ氏は、中国が米国を搾取しているという見解を表明した。

「中国はわれわれの雇用を奪い、基地を奪い、金を奪ってきた。だが、私は中国が大好きだ。私は彼らとうまく付き合っている。私はああいう連中と、中国とビジネスをやっているし、彼らも私にも同意している。彼らは──できない(They can’t --)」と語った。

ロイターがこの演説の映像をニューヨーク市立大学ハンター校で公共政策を受講する学生グループに見せたところ、これに続くトランプ氏の次の言葉が何であったはずかという点で意見が割れた。

政治学と哲学を学ぶ学生は、未完で終わっているトランプ氏の見解を「彼らには、われわれがこれほど知的に劣っているとは信じられないだろう」であると推測。

やはり政治学を学ぶもう1人の学生は、「仕事上の取引があるのだから、中国人はトランプ氏に反対できるはずがない」と解釈した。

もっとも、こうしたレトリックを活用しているのはトランプ氏だけではない。

昨年9月に行われた「ローリングストーン」誌のインタビューで、トランプ氏はフィオリーナ氏の容貌をあざけってこう言った。「あの顔を見てみろ。誰が投票するだろうか。あれが次の大統領の顔だと想像できるか」

一部の読者には、「フィオリーナ氏は醜い」とトランプ氏は考えているということが伝わった。しかしトランプ氏は後にそのような趣旨ではないと否定した。

フィオリーナ氏の側でも、やはり彼女なりのレトリックで反撃した。「国中の女性がはっきり聞き取っている。トランプ氏が何を言おうとしたかを」と。

(Emiliy Flitter記者)(翻訳:エァクレーレン)

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