November 6, 2018 / 9:50 AM / 11 days ago

焦点:「トランプ主義」に審判、信者の結束試す米中間選挙

[スプリングフィールド(ミズーリ州) 2日 ロイター] - 6日の中間選挙に向けて各地の集会を次々と渡り歩くトランプ米大統領は、今回の選挙について、2年前の大統領選で自らの地滑り的な大勝に導いた草の根運動と「トランプ主義」に対する審判だと訴えた。

 11月2日、6日の中間選挙に向けて各地の集会を次々と渡り歩くトランプ米大統領は、今回の選挙について、2年前の大統領選で自らの地滑り的な大勝に導いた草の根運動と「トランプ主義」に対する審判だと訴えた。写真は9月、スプリングフィールドで大統領が参加した選挙集会(2018年 ロイター/Mike Segar)

「2018年、皆さんは私に投票することになる」──。共和党候補者を応援するためミズーリ州に駆けつけたトランプ大統領は先月下旬、赤い帽子をかぶり、沸き立つ聴衆に向かって語りかけた。「皆さんの1票は私への支持だ」

この訴えは、トランプ大統領と支持者が現在直面している困難を浮き彫りにしている。

中間選挙において、下院の過半数と主要な州知事ポストをライバルの民主党が奪還する可能性が高まる中で、トランプ政策が今後2年間で実現するかどうかは、自らの票を「トランプ」とは違う名前の候補者に集めることができるかどうかで決まる。

今回の選挙は、「Make America Great Again(米国を再び偉大に、MEGA)」というトランプ氏のスローガンの下に結集した人々が、まとまりのない個人崇拝的な支持から、大統領の支持基盤外の候補者まで後押しすることができる組織的な政治勢力へと、進化できるかを問う最初の現実的な試練となっている。

ロイターでは、共和党の選挙対策幹部18人の調査、世論調査で提携するイプソスからのデータ分析、さらに多数の選挙候補者やストラテジスト、トランプ支持者に行ったインタビューなどに基づいて、トランプ大統領が誇る「MAGA運動」がどの程度浸透して、影響力を持っているかについて調査した。

国境管理の厳格化、保護主義的な経済政策、一方的な外交などに代表されるトランプ大統領の「米国第一主義」下で結束したMAGA運動は、2016年の大統領選において、米国政治に置き去りにされていると感じており、その体制をひっくり返すというトランプ氏の誓いを歓迎する有権者を結集させた。

こうした動きは現在、「ティーパーティ」系の保守派、福音主義キリスト教徒、銃規制反対派、そしてトランプ大統領のアウトサイダー的なキャラクターに魅せられた労働者階級の支持を集めている。

トランプ大統領のポピュリスト的な支持基盤は、もっぱら大統領が高い人気を得ている米国南西部においてしっかりと確立されている。

MAGA支持者はこうした地域で大統領の推薦候補を応援するために大挙して現れ、世論調査での評価を押し上げ、選挙運動でボランティアに精を出している。一部では、州の党機構を牛耳り、トランプ氏の好みに合う候補のためにインフラと資金を管理している例もある。

だが、大統領の支持基盤を離れると、MAGA支持者の影響力は限定的だ。特にペンシルバニア州やオハイオ州といった「ラストベルト」州、そして中西部の北方ではそれが顕著だ。つまり、これらの地域では、特定の下院選挙区では忠実なトランプ派が局面を動かすこともできるが、州知事や連邦上院といった州レベルでの戦いでは、大統領の推薦候補を後押しする力はそれほどでもない。

熱心なMAGA支持者には中枢組織もなく、共和党内の組織構造にもほとんどつながりがないため、彼らはもっぱら、フェイスブックやレディットといったソーシャルメディアやインターネットのフォーラムで支持をあおり立てる。彼らが地元の選挙運動を支援しようとする意欲は、共和党に対する忠誠心というよりも、むしろトランプ氏を助けたいという動機から来ている場合が多いようだ。

「2018年の選挙では、トランプ氏にどれだけ人気があるか、彼の政策がどれだけ評価されているか、2020年に向けて組織がうまく働いているのか、それとももっと頑張って色々改善すべきかが問われるだろう」とバージニア州バージニアビーチのMAGA活動家スコット・プレスラーさんは言う。

複数の世論調査を集約する超党派ウェブサイト「リアルクリアポリティクス」及び「538.com」が集積したデータによれば、2016年の大統領選でトランプ氏が10ポイント以上の差をつけて勝利した州では、大統領が推薦する共和党の上院または州知事候補18人のうち、80%以上が世論調査で優位に立っている。

だが、トランプ氏が10ポイント未満の差で勝利した州では、彼が推薦する上院または州知事候補16人のうち、世論調査で優位に立っているのはわずか4人、つまり4分の1にすぎない。

<「のんびり構えていた」>

トランプ推薦候補にとって特に厳しい状況は、民主党が占めている州知事や上院の議席を奪還しようとするケースだ。

2016年にトランプ氏が2ケタのポイント差で勝利した州では、州知事や上院議員の民主党現職に対して、推薦候補5人のうち2人が世論調査でリードしており、2人は数ポイント差に迫っている。

だがトランプ氏のリードが10ポイント未満だった州では、推薦候補6人全員が最近の世論調査で劣勢に立たされており、そのうち5人は少なくとも10ポイント以上差をつけられている。

選挙期間中、多くの地域でトランプ支持者は勝利を過信しており、「のんびり構えていた」と、大統領の元首席補佐官で選挙対策における戦略責任者だったスティーブ・バノン氏は説明する。

ここ数週間、熱心なMAGA支持者は、民主党が下院の過半数を確保すればトランプ氏の政策課題が「暗礁に乗り上げる」ことを悟り、活発さを増しつつあるとバノン氏は指摘。「共和党主流派とトランプ氏の支持基盤である強硬な反主流派が手を結んでいる」と語った。

こうした支持基盤においては、トランプ人気は依然として非常に高い。ロイター/イプソスの世論調査によれば、共和党支持者のあいだではトランプ支持率は84%と高く、2016年にトランプ氏に投票した人の3分の2以上がMAGA理念に共感している、と回答した。

だが、「MAGA」が何を意味するのかという点では、見解が分かれている。半分以上は、経済強化や国境管理の厳格化とMAGAを同一視している一方で、MAGAとは「ドナルド・トランプ」という人物そのものだと答える人も4分の1を超えた。

こうなると、トランプ大統領が退任した場合、MAGAがどうなるのかという疑問も生じてくる。

<テネシー州が試金石に>

テネシー州で上院議席を狙うマーシャ・ブラックバーン下院議員を支持する集会で先月1日、トランプ大統領が1万人近い聴衆をあおり立てた。テネシー州は、2年前26ポイント差で勝利した場所だ。

「マーシャへの1票は、私への、そして、われわれが掲げるすべてへの1票だ」とトランプ大統領は聴衆に語った。

その後まもなくして行われた世論調査では、州知事を2期務めた民主党のフィル・ブレッドセン候補に対し、ブラックバーン下院議員が優位に立った。

「テネシー州東部では、トランプ氏が強力な応援になることが分かっている」と、共和党の広報担当者ギャレン・シプリー氏はロイターに語った。

ブレッドセン候補陣営は、世論調査の結果を気にしていない。「ただ1つ重要な世論調査は、投票そのものだ」と広報担当のアリッサ・ハンセン氏は言った。

トランプ大統領は先月10日、約800キロ離れた場所で別の集会に参加し、ペンシルバニア州で上院議席をめざすルー・バーレッタ下院議員のために同じようなメッセージを語った。ここは2016年にトランプ氏が1ポイント差で辛うじて勝利を収めた州だ。

「皆さんの力が必要だ」と大統領は聴衆に語った。「ルーに投票してほしい」

8月以降で大統領が同候補のために集会に出向くのはこれが2回目だ。だが、やはりバーレッタ候補は、民主党の現職ボブ・キャセイ氏に後れをとっており、世論調査では依然として10ポイント以上の差をつけられている。

ブラックバーン候補とバーレッタ候補の情勢の差は、大統領がMAGA賛同者を巧みに動かすことに対する困難さを物語っている。

2016年のトランプ勝利を受けて、テネシー州の共和党主流派は同氏の政策目標を受け入れ、トランプ支持者を歓迎した。現在、ブラックバーン候補を含めた大統領の推薦候補のために、多くのトランプ支持者がボランティアに参加。電話による有権者への投票依頼や戸別訪問、その他の投票推進運動を手伝っている。

トランプ氏を当初支持していなかった州の共和党幹部も、「大統領を助けなければならないと悟った」と、テネシー州ジョンソンシティの党本部を率いて、州共和党執行委員会にも名を連ねるトッド・ファウラー氏は言う。「テネシー州は彼のやり方を気に入っている」

大統領選でトランプ氏が薄氷の勝利を収めたペンシルバニア州では、支持者はもっぱら地方の労働者階級が暮らす地域に集中している。世論調査によれば、トランプ氏が知事候補に選んだスコット・ワグナー氏は、民主党の現職トム・ウルフ氏に大きく後れをとっている。

ペンシルバニア州で、トランプ大統領は連邦議会の選挙運動に人を集めているが、そこに集まった人々はまだ態度を決めかねている、とペンシルバニア州エリーで地元の共和党委員会に名を連ねるユージーン・ソレンティノさん(76)は指摘する。

電力会社を定年退職した元エンジニアのソレンティノさんは先日、カウンティフェア(郡主催の祭事イベント)において共和党の接待用テントに詰めていたが、そこで耳にしたのは「トランプ氏関連のグッズを欲しがる声だけだった」と語る。連邦議会選挙は「話題にも上っていなかった」と言う。

<突出した「トランプ効果」>

トランプ大統領が自身の支持基盤において候補者を支援する力は、単に世論調査での支持率を跳ね上げるだけにとどまらない。

ロイターの取材によれば、大統領が推薦した候補の陣営はほぼすべて、トランプ氏による支持表明を受けた直後、ボランティア活動への申し出が急増したと語り、これを「トランプ効果」と呼んだ。

ペンシルバニア州選出のマイク・ケリー下院議員によれば、トランプ氏が非常に高い人気を誇る同州西部における選挙運動は、MAGAを支持するボランティアに大きく依存しているという。無党派グループ「PlanScore.org」によれば、今回再編されたケリー議員の選挙区には、2016年の大統領選挙でトランプ氏が実に20ポイントもの差をつけた郡が複数含まれている。

ケリー氏は10月10日のエリーでの集会に大統領とともに参加する準備を進める中で、「(トランプ氏は)時々、必要なアドレナリン注射を打ってくれる」とロイターに語った。

トランプ氏が強さを発揮する地域で支持者動員の主力となっているのは、使える選挙資金の額に制約を受けない特別政治活動委員会(スーパーPAC)である「アメリカ・ファースト・アクション」だ。

同グループは、上院の激戦州であるアリゾナ、モンタナ、インディアナ、ミズーリ、ノースダコタの5州、さらにはテキサス、ミネソタ、メーン、ミシガン、ウェストバージニア、ニューヨーク、ペンシルバニア、ネバダ、ノースカロライナ各州における11の下院選挙区で、電話での投票依頼とメディア広告に2600万ドル(約29億円)以上を投じた。

また、同グループは忠実なトランプ支持者によって運営され、共和党の熱心な支持者であるカジノ産業の大物シェルドン・アデルソン氏やスティーブ・ウィン氏、鉱山エンジニアで経営者のロバート・マレー氏などからの巨額献金に頼っている。

ホワイトハウスの政務局長、ビル・ステピアン氏は先月1日付の下院議員候補陣営に宛てた通達で、MAGA支持者のサポートを得る最善の方法は、トランプ氏に「緊密かつ明確、大胆に」同調することだ、とアドバイスした。「(トランプ大統領には)自分が支持し、自分を支持してくれる候補者のために、自身の陣営の能力と人手を投じる用意と意志、能力がある」と同氏は記している。

全国レベルで共和党幹部は、トランプ大統領に同調し賛同する態勢をとっており、中間選挙に向けた大統領のナショナリスト的な主張を日々繰り返している。だが、大統領が有権者をつかみ切れていない地域では、大統領支持がもたらす結果はまちまちだ。

2016年の選挙でトランプ氏が1ポイント差で勝ったフロリダ州の州知事選では、トランプ氏は党内予備選の前から忠実なトランプ支持者であるロン・デサンティス前下院議員の支持を表明していた。

だが今や、フロリダ州では過去20年、民主党が州知事選で勝てていないにもかかわらず、デサンティス候補は本選挙に向けた世論調査で、民主党の州知事候補でタラハシー市長のアンドリュー・ギラム氏に対してやや劣勢となっている。

先月ロイターが行った分析では、穏健派の有権者がトランプ氏に醒めた目を向けている地域では、複数の共和党候補が大統領から距離を取っていることが明らかになった。

<党に浸透するMAGA支持者>

MAGA支持者は、トランプ大統領が支持を固めている南西部以外のいくつかの州を含め、多くの州の共和党事務所において有力な勢力となっている。

2016年にトランプ氏が8ポイント差で勝った激戦区オハイオ州では、大統領選後、州共和党本部がトランプ氏の友人で忠実な支持者であるジェーン・ティムケン氏を新たな党委員長に選んだ。

大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補が勝ったネバダ州では、州共和党が大統領支持者を引きつけるため、「MAGAマンデー」や「トランプ・チューズデー」といったイベントを毎週行っている。

ネバダ州リノに住むMAGA活動家のロシェル・スワンソンさんは、ソーシャルメディアに大統領を支持する記事や地元の共和党候補者とのインタビューを投稿するようになった。スワンソンさんは7月、党幹部から有権者への働きかけを手伝ってくれという依頼を受けた。

現在は党のメッセージに沿った形での投稿や戸別訪問を行っており、「いい連携が生まれている」とスワンソンさんは語る。

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だが、MAGA支持者が共和党の組織に取り込まれていったとはいえ、多くの人々が認めるように、いざトランプ氏が大統領の座を離れた場合、彼らとの連携を維持し、米国政治に対する影響力を維持することは難題だろう。今月行われたロイター/イプソスによる世論調査では、トランプ氏に投票した人の4分の1以上は、トランプ氏が政界を離れた場合、そのビジョンを誰が受け継くか分からないと回答している。

「誰かがトランプ氏の後継者になるとは思えない」とニューヨーク州北部に住むMAGA活動家で政治広告専門のメディア企業を経営するジェレミー・メッシーナさんは語る。「そういう状況は考えられない」

(Peter Eisler記者, Ned Parker記者、Julia Harte記者、翻訳:エァクレーレン)

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