August 30, 2019 / 11:36 PM / 15 days ago

焦点:大国化するUAE、立ち遅れる米国の諜報活動

[26日 ロイター] - アラブ首長国連邦(UAE)は、国連代表に承認されたリビアの現政権を倒そうとしている武装勢力の指導者に、資金を供給している。カタールに対しては、米国が紛争解決を呼びかけているにもかかわらず、経済封鎖を敷く諸国連合の旗振り役となっている。

 8月26日、アラブ首長国連邦(UAE)が中東・アフリカ地域への関与を強めており、米国と利害が衝突しやすくなっている。写真は内戦が続くイエメンで、UAEの支援を受ける南部分離主義グループの新兵。7月23日、アデンで撮影(2019年 ロイター/Fawaz Salman)

さらに今年になり、米国家安全保障局(NSA)の元スタッフをハッカーとして雇い入れ、米国民を監視対象に含むスパイ計画に参加させていることが、ロイターの調査で判明した。

ところが、きわめて異例なことに、米中央情報局(CIA)はUAE政府へのスパイ活動を行っていないと、この問題に詳しい元CIA当局者3人がロイターに証言した。米国の情報活動に危険な盲点が生じているとの批判も出ているという。

CIA側の姿勢は新しいものではない。変わったのは、小規模だが強い影響力を持つこの石油輸出国機構(OPEC)加盟国が、中東やアフリカに介入する際の性質だ。前出の情報提供者や外交政策の専門家によれば、実際の戦闘参加や秘密作戦の遂行、資金力を活かした域内政策の誘導などを行うようになり、米国の国益と対立する場合が多くなっている、というのだ。

3人とは別の元CIA当局者は、UAEが軍事的・政治的な野心を強める状況にCIAが適応していないのは「職務放棄」に等しいと語る。

米国の情報機関がUAEを完全に無視しているわけではない。NSAの内情をよく知る2人の情報提供者によれば、NSAは、リスクは低いが成果も少ない電子的な監視をUAE内部に対して行っているという。

また、CIAはUAEの情報機関と協力関係にあり、イランや国際武装組織アルカイダなど、共通の敵に関する情報共有などを進めている。

だが、前出の元CIA当局者3人によれば、CIAはUAE内部で人間を介した情報収集活動(ヒューミント)を行っていない。つまり、独裁的なUAE政府についての最も貴重で入手困難な情報を、UAE国内の協力者から集めることをしていない。

ロイターはUAEに対する米国の情報活動について、CIA、NSA、ホワイトハウスにコメントを求めたが、いずれも拒否した。UAE外務省と在アブダビ米大使館からも回答は得られなかった。

こうしたCIAの「不干渉」は、これまでメディアで報道されることはなかった。元情報機関当局者によれば、CIAが似たようなアプローチを取っている国は他に数えるほどしかないという。例えば、情報共有の協定を結ぶ「ファイブ・アイズ」のオーストラリア、ニュージーランド、英国、カナダだ。

4人の元CIA当局者によれば、米国は、主要な同盟国数カ国を含め、米国の国益にとって重要な国のほとんどすべてにおいて、ヒューミントで情報を集めている。

UAEと対照的なのが、やはり中東における米国の重要な同盟国で産油国、そして米国から兵器を購入しているサウジアラビアだ。

2人の元CIA当局者とある湾岸諸国の元情報機関当局者によれば、サウジではUAEと異なり、CIAの活動が盛んだ。政府関係者を情報提供者としてスカウトしようとした複数のCIA工作員を、サウジの情報機関が拘束したことがあるという。

サウジの情報機関は、表だってCIAのスパイ活動に異議を申し立ててはいない。しかし、リヤド駐在の現地の責任者と面会し、この件に関係したCIA工作員を密かに国外退去させるよう求めたという。

CIAの元工作員で著述家のロバート・ベア氏は、UAEにおけるヒューミントの欠如は「失敗」だと指摘する。米国は中東の君主制諸国における国内政治や同族間の内紛について、できる限り情報を収集する必要があるという。

「世界一流の情報機関という自負があるならば、これは失敗だ」とベア氏。「王族に関する情報は必要不可欠だ」

<UAEは「ならず者国家」か>

トランプ政権の元当局者は、UAEで情報収集活動が不足している現状を懸念する。砂漠のなかにあるこの君主制国家は最近、リビアやカタール、さらにはアフリカまで、戦略的に重要な国々で「ならず者国家」として振る舞っているからだ。

スーダンでは長期政権を築いたバシール大統領を支えるため、長年にわたって巨額の資金を投じてきたが、その後バシール大統領を見限り、今年4月に政権を奪取した軍指導者を支援した。新政権の治安部隊は6月、文民統治と選挙を求める抗議活動の参加者数十人を殺害した。

エリトリアや国際的に未承認のソマリランドにも軍事基地を建設している。

「いわゆる『アフリカの角』で、その辺の岩をひっくり返せば、そこにはUAEの足跡がある」と、この元政権当局者は言う。

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチで中東・北アフリカ部門エグゼクティブ・ディレクターを務めるサラ・リー・ウィットソン氏によれば、UAEは「直接の隣接地域をはるかに超えた」地域における金融・軍事大国を自認しているという。

「ソマリアやエリトリア、あるいはジブチであれイエメンであれ、UAEは誰はばかることなく行動している」とウィットソン氏は言う。

イエメンでは、UAEはサウジアラビアとともに諸国連合の先頭に立ち、イランが支援するイスラム教シーア派系武装組織のフーシ派と戦っている。だが、数千名の民間人死者を生んだ空爆と数百万人を飢餓寸前に追い込んだ人道上の危機に対して国際的な批判を浴び、このところUAEは撤退を開始している。

米連邦議会は先日、サウジアラビアとUAEへの武器売却を停止する決議を可決したが、トランプ大統領は拒否権を行使した。

米政治資金監視団体センター・フォー・レスポンシブ・ポリティクス(CRP)によれば、UAE政府が2017年以降に米国でのロビー活動に投じた資金は4680万ドル(約50億円)だった。

UAEにおけるCIAの活動に詳しい3人の元CIA当局者の1人は、UAE政府に関する情報収集活動が必要とされているのは、中東・アフリカ地域に対するUAEの干渉だけが理由ではないと話す。

UAEはロシア・中国との関係も強化しつつあり、昨年にはロシアと安全保障、貿易、石油市場に関する協力を定めた広範な戦略的パートナーシップに調印した。まや先月には、UAEの事実上の支配者であるアブダビ首長国のムハンマド皇太子が、UAE中国経済フォーラムのため、3日間中国を訪れている。

一方で、米国とUAEの国益の間には十分な相関関係があり、スパイ活動を行わない理由になっているという見方を変えていない国家安全保障専門家もいる。

元CIA職員のノーマン・ルール氏は、イランとアルカイダを念頭に、「彼らの敵は我々の敵だ」と言う。「UAE政府の行動は引き続きテロとの戦い、特にイエメンにおけるアルカイダとの戦いに貢献するものだ」

<民主化運動やイスラム政治運動への警戒>

砂漠のなかの首長国連邦であるUAEの外交は、アブダビ首長国皇太子が少数の顧問とともに仕切っている。彼は国家安全保障顧問に、米国で教育を受けた兄弟を任命した。さまざまな武道の熱心な愛好家であり、アラブ種の競走馬の厩舎を保有する人物だ。息子であるハリド・ビン・ムハンマド氏は、国内に広がる監視ネットワークの運営に当たっている。

UAEによる中東や北アフリカ地域への干渉は、2011年以降拡大してきた。元空軍情報将校で、現在はカーネギー国際平和財団で働くジョディ・ビットーリ氏によれば、「アラブの春」と呼ばれた民主化を求める民衆の抗議行動を見て、UAEの宮廷エリートらは権力維持に不安を募らせたという。

湾岸諸国の多くの王族と同様、UAE首脳は、民衆のデモを域内における君主制支配に対する脅威と見なした。それ以来、彼らはイスラム政治運動や、2011年の抗議行動によってムバラク大統領が失脚したエジプトで、短期間だが権力を握ったイスラム組織のムスリム同胞団の台頭と戦ってきた。

UAEは2012年にムスリム同胞団のムハンマド・モルシ氏が大統領に選出されるとエジプトへの資金援助を打ち切り、1年後に軍部がモルシ大統領を失脚させると、数十億ドルの支援を再開した。

 8月26日、地域への干渉を強めるなどUAEの対外政策に変化がみられるにも関わらず、米国はCIAなどによる情報活動に力を入れていない。写真はポンペオ米国務長官(左)とアブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド皇太子。7月24日、アブダビで撮影(2019年 ロイター/代表撮影)

カーネギー財団のビットーリ氏は、米国とUAE両国政府のあいだに引き続き共通の目標があることを認めつつ、君主制のUAEが権力維持に集中するようになれば、両国の国益は乖離(かいり)すると述べてた。

「いかなる犠牲を出しても体制を維持することが目標になれば、米国の国益と整合するものではなくなる」と、同氏は指摘した。

(翻訳:エァクレーレン)

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