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コラム:次期FRB議長、「面の皮の厚さ」必要か
2017年10月19日 / 01:33 / 1ヶ月後

コラム:次期FRB議長、「面の皮の厚さ」必要か

[ニューヨーク 16日 ロイターBreakingviews] - 米連邦準備理事会(FRB)の次期議長には、覚悟しておくべきことが2つある。リセッション、そして衆目の中で受ける批判だ。

 10月16日、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長には、覚悟しておくべきことが2つある。リセッション、そして衆目の中で受ける批判だ。ワシントンで6月撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

前者は、あくまでも統計的な可能性にすぎない。しかし後者は、ほぼ鉄板の可能性といえる。トランプ大統領について予測可能なことがあるとすれば、独立した権威を備えた機関を積極的にいじめるという点だ。そして、米国の中央銀行であるFRBの効率性を支えているのは、その独立性なのだ。

誰がなるにせよ、来年早々に任期満了を迎えるイエレンFRB議長の後任が直面する課題は、ホワイトハウスの寝室から早朝に発信される乱暴なツイートを我慢することだけにはとどまらない。

金融危機以来、日本や欧州などの各国中銀と同様、FRBは財政担当者が動かない場面でも、思い切った手を打ってきた。次期議長もやはり、行動を起こす責任を議会に押し戻す必要があるかもしれない。

トランプ大統領にとって無難な落とし所となる選択肢は、依然としてイエレン議長の続投かもしれないが、その他にもパウエルFRB理事、ウォーシュ元FRB理事、ジョン・テイラー元財務次官なども検討対象となっている。

──情報BOX:次期FRB議長は誰か、候補5人の強みと弱み

少なくともこれまでのところ、候補者をめぐる議論の大半は、彼らがタカ派かハト派か、つまりFRB的な文脈で言えば、金利の引き上げに積極的か、あるいは金利を抑えてマネーを潤沢に供給するかという狭い範囲に集中している。イエレン議長率いるFRBは、前任のバーナンキ議長時代と同様にハト派寄りだった。

金融政策は重要だ。急激な利上げは経済成長を窒息させてしまう。金融システムに注入するマネーが多すぎれば、広い範囲で不適切な資本配分が生じるリスクがある。

FRB議長が成長を台無しにする、あるいはバブルを膨らませる可能性があることから、このポストに最もふさわしいのは、熟慮に基づく判断を下すような、高い知性を備えたリスク回避志向の人物だ。

候補者は全員が名門大学出身で、プリンストンやスタンフォードといった大学で優等の成績を収めた人々であり、こうした要件を満たしている。

議長人事に多大な関心を注ぐ投資家にとって、金利の推移や4兆ドルものFRB資産を縮小していくペースをめぐる各候補者の見解は、たとえわずかな違いであっても、非常に重要だ。とはいえ、一般市民にとっては、そうした点は専門的な屁理屈にすぎない。有権者がもっと気にするのは、FRBが日々の政治に振り回されないようにすることだ。

 10月16日、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長には、覚悟しておくべきことが2つある。リセッション、そして衆目の中で受ける批判だ。写真はイエレンFRB議長。9月ワシントンで撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

FRBが理念として、また多少程度は落ちるとしても現実においても、その独立性を保つことは、ワシントンのマリナ―・エクルズビルで働く中銀当局者の役割に必要不可欠であることは明らかだ。

1979年から1987年にかけてFRBと政界の双方に大きな影響力を振るったボルカー元FRB議長は、かつてこう表現している。「FRBの信頼性、つまりFRBが価格安定の維持を約束し、党派的な政治圧力に対する抵抗力を持つことは、致命的に重要だ。独立性は、単なるスローガンではない」

中銀トップとして、政治家の希望を無視してインフレ克服のために金利を引上げたボルカー氏は、さらにこう続けた。「適度に限定された能力で合理的に対応できないような責任を果たすよう、(FRBに)過度な要求をするべきではない」

この言葉は、FRBが使える手段は限定的であり、連邦議員が単に金融政策に頼るだけでなく、自らの権限を活用して税制や財政政策を変更する必要性があることを肯定するものだ。だが、何年も前に当時のバーナンキFRB議長が促していたにもかかわらず、金融危機以来、連邦議会はまだこの方面で大した仕事をしていない。

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着実な経済成長と雇用の拡大が、こうした連邦議会の怠慢を隠ぺいしている。だが状況は変わるかもしれない。「大恐慌」以降、1つのリセッションの終わりから次のリセッションの始まりまでの平均期間は5年以下である。

2009年6月に前回の景気下降局面が終了して以来、8年以上が経過した。景気後退が始まれば、トランプ大統領や議員らが、そのスケープゴートとして、そして潜在的な救済者として、FRBに狙いを定めるのは確実だ。新FRB議長には、攻守双方の能力と、打たれ強さが求められる。

イエレン議長についてはよく知られているものとするが、パウエル氏については、2012年以来上司として仰ぐイエレン議長との距離はさほど遠くない。だがパウエル氏は6月の講演で、米下院がFRBの監査を試みたことは、「金融政策の意思決定に連邦議会が直接介入するリスクを招き、数十年にわたって、FRBを政治的な圧力から隔離しようとする連邦議会の慎重な努力を逆転させるものだ」と批判した。

テイラー氏もこれに賛同するようだ。2016年に行った講演で「中央銀行が法律上独立しているだけでは、優れた金融政策を生み出すには十分ではない」と述べている。彼には哲学的な傾向があり、金利決定に関してルールベースのシステムを推進してきた。テイラー氏の主張によれば、そのメリットは、FRBの自由度を限定することにより、政治的な影響や批判をさらに受けにくくなるという点だという。

スタンフォード大学フーバー研究所でテイラー氏の同僚でもあるウォーシュ氏は、さらに一歩踏み込んでいる。彼は昨年開催された「ロイター・ニュースメーカー」イベントで、「リセッションに陥ると、われわれは自力でそれに対応しようとする。そして、中央銀行と財政担当者がリセッションに対応する必要があるという信頼も、それと同じ流れのなかで打撃を受ける」と語った。

この発言は昨年11月の米大統領選以前のものだが、明らかに、FRB議長に就任した場合に、トランプ氏から浴びせられると予想されるツイートに対する周到な予防線として、ふさわしく思われる。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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