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焦点:インフレファイターFRB、完全雇用目標は放棄するのか

[14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は間もなく、インフレと闘う姿勢を押し出す見通しで、一見すると、包括的な完全雇用という目標を1年余りで投げ出さざるを得なくなったように映るかもしれない。

1月14日、米連邦準備理事会(FRB)は間もなく、インフレと闘う姿勢を押し出す見通しで、一見すると、包括的な完全雇用という目標を1年余りで投げ出さざるを得なくなったように映るかもしれない。写真はケンタッキー州ルイビルの店先に出された求人の張り紙。6月撮影(2021年 ロイター/Amira Karaoud)

しかし、現実はもっと陰影に富んでいる。やっかいなほど高まったインフレを利上げによって抑えるか、それとも金利をゼロ近辺に据え置いて完全雇用の復活を待つかといった単純な二者択一ではない。

急伸左派の間でさえ、FRBは数カ月後にインフレ退治の方向に舵を切った方が良いとの声が聞かれる。一部の指標は、完全雇用の達成が近いことを示しているからだ。左派組織エンプロイ・アメリカの執行ディレクター、スカンダ・アマーナス氏は、完全雇用への接近は一般に考えられているよりずっと確かな証拠に裏付けられており「もう少しで完全雇用だ」とみている。

15日に終わる連邦公開市場委員会(FOMC)が、FRBが軸足を変える最初の一歩になりそうだ。この日は債券購入プログラムのテーパリング(縮小)加速を発表するとみられており、より困難な判断となる来年の利上げに道が開かれる。

インフレ率が急上昇する中、FRBは速やかに金融緩和を解除してブレーキを踏み始めるべきだと訴える専門家もいる。急速な値上げの動きが経済活動と雇用創出の両方を台無しにしてしまう前に動く必要があるという。

FRBが早期に利上げした場合は、完全雇用に戻るまでフェデラルファンド(FF)金利をゼロ近辺に据え置くという昨年9月の約束を破ることになる。ただ、インフレ抑制のために完全雇用を諦めることは、パウエルFRB議長が避けて通れないトレードオフだというのが早期利上げ派の主張だ。

パウエル氏はそうした可能性を肯定しているように見える。先月には議会で、インフレ目標と完全雇用目標が「目下のように引っ張り合っている時には」、FRBは両者を天秤にかける必要があると述べている。

もっとも、労働市場が改善を続ければ、FRBは「苦渋の選択」をするまでもなくなるかもしれないと一部のアナリストは感じている。

エンプロイ・アメリカのアマーナス氏は、25―54歳の雇用や賃金上昇率といった重要な指標に基づけば、4―6月には完全雇用に戻ると予想。その時点でインフレ率が高止まりしていれば、FRBが利上げしても「完全雇用の約束を放棄したことにはならないだろう」と指摘した。

<免責条項>

そもそもこうした議論が起こるのは、FRBが完全雇用の評価方法を定義していないからだ。

現在、賃金は急スピードで上昇し、求人数は過去最高に近づいている。しかし、コロナ禍前に比べると就業者数は360万人減っている。しかも、一部の層で就職が非常に難しい状況のままで、包括的な労働市場回復と言えるかは疑問だ。黒人の失業率は11月時点で6.7%で、大幅に低下したとはいえ全国平均の4.2%に比べるとはるかに高い。

ビザの米首席エコノミスト、マイケル・ブラウン氏は、FRBが直近の利上げサイクルの中にあった2017年よりも、労働市場指標の全体像は良好だと指摘。FRBは6月に完全雇用目標の達成を宣言し、利上げを始めると予想した。

FRBが完全雇用目標を犠牲にするのは、インフレによって雇用状況が後々さらに悪くなるのを避けるためには必要な代償だとの声もある。ADPの首席エコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は「インフレは税金のようなもの。高過ぎるインフレは労働市場の改善にも悪影響を及ぼしかねない」と語った。

オックスフォード・エコノミクスの首席米金融エコノミスト、キャシー・ボスジャンチク氏の見方では、来年には供給網の制約が緩和してインフレ率は自律的に急減速するため、FRBは9月まで利上げを待つことができそうだ。ただ、しばらくの間インフレがあまりに懸念される状況であれば、FRBは「必ずしも完全雇用の達成に縛られず」、利上げを行うと予想している。

そうなった場合、FRBは一種の「免責条項」を発動すると、ボスジャンチク氏は考えている。これは昨年8月に採用した金融政策の新戦略に盛り込まれたもので、2つの目標が綱引き状態にある時には、どちらがより目標達成に近いかに基づいて動く裁量をFRBに与えている。つまり、インフレ率の目標からのオーバーシュート度合いが完全雇用の未達度合いよりもずっと大きければ、利上げを行うことは可能になる。

もっとも、ジェフリーズのエコノミスト、アネタ・マーコウスカ氏は、この免責条項によって完全雇用達成前の利上げを正当化すれば、FRBは次にインフレ率が低すぎる状況に直面した際に信頼を得られないと指摘する。

マーコウスカ氏は、FRBは9月まで利上げを待つとみている。その頃には失業率が3.5%を下回り、黒人の失業率はコロナ禍前の低水準に近づき、労働参加率は回復して完全雇用のチェック項目が満たされていると見込む。ただ、その時点からの利上げは金融市場が現在予想しているよりも急ピッチになると予想。「新戦略の本質は景気の過熱を容認することで、最終的には積極的な利上げを行わざるを得なくなるということだ」との見方を示した。

(Ann Saphir記者)

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