[ワシントン 21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が2日間の日程で開く連邦公開市場委員会(FOMC)が21日始まった。一部の中銀ウオッチャーは、最近の銀行危機を踏まえて追加利上げを一時停止する可能性、さらには見通しが非常に不透明だとして新しい経済予測の公表を先送りする可能性さえあるとみている。
FRBは投資家に経済の現状と異なる想定をさせないように努めている。
だが、ISIエバーコアの副会長で元ニューヨーク連銀幹部であるクリシュナ・グハ氏は、利上げ確実と見込まれていた2週間前から一転し、現在は推測の泥沼に陥ったと指摘する。
ここ2週間で米地銀の破綻が相次ぎ、スイス金融大手クレディ・スイスの救済買収があった。
フェデラルファンド金利連動証券の投資家は引き続き0.25%ポイント利上げの確率を約70%織り込んでいるが、市場の観測は過去10日で劇的に変化した。
今月10日の米シリコンバレー銀行の破綻で見通しが混乱した後、状況は落ち着いたものの、FRBが中堅銀行を窮地に追い込むことなく、インフレ抑制策をいかに維持するかという難題に直面することを巡り不透明感が強まった。
専門家は、最近の銀行危機を受けて今後起こる信用収縮について、最大で1.5%ポイントの追加利上げに相当し、利上げの意味がなくなる可能性があると述べた。
EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「FRBは金融引き締め継続が可能で、0.25%ポイント利上げの公算が大きいが、そうすべきではない。最適なアプローチは利上げの一時停止だ」とし、銀行ストレスが問題になるかならないかを見極めるべきとの見解を示した。
KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏はさらに踏み込んで、FRBは追加利上げを見送るだけでなく、FOMC終了後に発表予定の経済見通しも「明確さより混沌を生み出す」ため保留すべきだと指摘。インフレ対策として利上げを継続するのか、金融の安定を考慮してハト派的な政策を取るのか、どのような予測も誤解される可能性があることから「FRBの個々の高官が利上げと経済見通しについて指針を提供することは逆効果のようだ」とした。
FRBが2012年に四半期ごとの経済見通しを発表し始めて以来、唯一発表できなかったのは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生で経済が崩壊寸前まで追い込まれた20年3月だけ。FRBとしては当時と現在の状況を比較されたくないだろう。
バンク・オブ・アメリカのアナリストは、今回のFOMCで0.25%の利上げは行われるが、声明文とパウエル議長の記者会見で過去2週間の出来事を評価すると予想している。
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